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自分の手で描いて学び、アウトプットの能力を身につける
小島 まずチップチューン社内で、アプリゲームのイラストやアニメの貼り込み素材をつくるコンテンツ部というセクションで、講習会を催すことになりました。入社してくるイラストレーター志望の新人たちに、絵を描く基礎的なことを教えてあげてほしいと言われたのが最初でした。ソフトを使った実務的なことは、コンテンツ部の先輩イラストレーターたちから学んでもらうとして、私は絵の下支えとなるデッサンや構図など基礎的なこと教えることから講習会がスタートしました。それが2018年ぐらいのことです。それから、アニメの動画のほうも教えていこうという流れになりました。
── どういうカリキュラムなのでしょう? 教材をきっちり作りこんでいるのですか? 小島 いいえ、カリキュラムを作りこみすぎると時代の変化に対応できなくなってしまいます。あくまで大枠のみ定めておき、細部はそのときそのときの流行りや理論をチェックして固めています。現在のカリキュラムの中心となっているのはクロッキー、フィルムスタディ、パース課題の3つです。まず、クロッキーは観察の仕方を学ぶ課題です。様々な観察法を学びながら、専用の動画をつかってクロッキーをしてもらいます。観察によって正確性や躍動感や印象など、捉えられる要素が変わるので、それぞれを実践の中で理解してもらえるようにしています。
その次が、フィルムスタディです。もともとは構図の意図や印象を観察して、描きとめて理解を深めるための勉強です。講習会では広角・標準・望遠それぞれの画角がどう違うのかを理解するため、画像を上から直接なぞってパースの違いを覚えてもらったり、人物も背景もなるべくシンプルに描いて、配置や大きさの変化の加減や奥行きの圧縮感の違いを知るために利用しています。また、画像の印象を言葉で書いてもらって解説することもあります。具体的な実例や理由とともにインプットしておけば、一から絵を描く際に、同じような画面効果の構図イメージを思い出しやすくなります。実際にカメラを構えて撮影することが難しいので、フィルムスタディはあくまでその代用として紹介しています。
クロッキーやフィルムスタディでインプットしたものを、次はパース課題でアウトプットしてもらいます。基本構図の活用や、その構図を使う意図、自分の想定した画角での描写などを自分でアウトプットしながら覚えてもらい、活用できるようにしていきます。 その他、コンテンツ部の新人向けには、発注書に基づいて版権イラストを描く、実務に近いかたちの課題も用意しています。「視線誘導をどのように使って各要素を配置するか」や「メインとサブのキャラクターの差のつけ方」や「動的な画面にしたい場合の注意点」など、構図によってどういう効果が出るのかをかなり実践的な解説を交えて覚えてもらいます。
── コンテンツ部と動画マンとでは、学ぶ内容は違うのですか? 小島 基本的には、同じ内容です。動画の人たちはアナログ、コンテンツ部はデジタルでの作業となりますが、課題内容は変わりません。後半にいくにつれてそれぞれの部署の実務に近い課題になってはいきますが、それでも教えている基礎的な部分は同じです。