アニメ業界ウォッチング第18回:「オープニング・アニメの鬼才」としての苦心とよろこびとは? 梅津泰臣監督インタビュー!

2016年02月13日 11:000

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1980年代半ばに「メガゾーン23/PartII 秘密く・だ・さ・い 」で、これまでの常識を覆すスタイリッシュなキャラクターデザインを発表、「A KITE」「MEZZO FORTE」などの18禁OVAの秀作で海外でも注目され、最近では「ガリレイドンナ」「ウィザード・バリスターズ 弁魔士セシル」などのオリジナル監督作で知られるアニメーター兼アニメ監督の梅津泰臣氏。

その梅津監督が、テレビアニメーション作品のオープニング、エンディングに数多く関わっていることはご存知だろうか。ここ数年、“オープニング・ディレクター”として精力的に仕事をこなす梅津監督に、視聴者を引き込むテクニックをうかがってみた。


自分のカラーを出しすぎてはいけない


──オープニング(以下、OP)については、作画のみの参加も数えると「機動戦士Zガンダム」(1985年)の頃から始まっていますね。

梅津 「Zガンダム」のOPでは、僕は作画監督として参加しました。「Zガンダム」は本編の作画には関わらず、OPのみに参加した最初の作品です。

自分の監督作「ガリレイドンナ」(2013年)はOPも絵コンテ・演出を担当しましたが、「ウィザード・バリスターズ 弁魔士セシル」(2014年)は、あまりに監督としての仕事が多すぎてOPに専念できず、苦肉の策でパイロットフィルムをアレンジしてOPを作るしかなかった。それを考えると、OPだけ別のディレクターに発注したい気持ちは、よくわかります。

──OP1本の制作期間は、どれくらいかかるのでしょう?

梅津 2~3か月です。OPは平均して40~50カットですが、制作期間としては十分です。「Dimension W」(2016年)のOPは70カット近くありますから、ちょっと異例ですね。

──本編とは関係なく、OPのためだけにスタッフを集めるのですか?

梅津 アニメーターに限るなら、そうなります。僕の場合、キャリアがあるので、力量のあるなじみのアニメーターが集まってくれますね。だけど、OPアニメで担当できるのは、1人のアニメーターにつき2~3カットぐらい。それでは僕の集めたスタッフだけではまかない切れないので、制作スタジオからも、アニメーターを投入します。

──どんなOPにするか、本編の監督からオーダーはあるのですか?

梅津 ケース・バイ・ケースです。完全におまかせしてくれる監督もいれば、細かく指示を出してくる監督もいます。その条件の中で、監督の要望、原作のテイスト、僕のカラーを折衷して作るんです。OPは作品の顔なので、あまり僕のカラーが出すぎて、作品の方向性から外れてはいけない。そこが何より難しい。エンディング(以下、ED)は遊んでもいいんだけど、OPはそうはいきませんから、原作を読んで設定や世界観を把握して、脚本ができていれば目を通して……その膨大な準備期間がいちばん大変です。だいたい3週間ぐらいかけて資料を読みこんで、主題歌も100回ぐらい聴いて、イメージができたら、ようやく絵コンテに入ります。いま、2本のOP・EDをかけ持ちしていますけど、キツいですね(笑)。

──準備後の作業としては、絵コンテと演出ですね。

梅津 たまに、作監と原画を兼ねることもあります。だけど、それでは僕の絵のテイストに偏ってしまうので、「終わりのセラフ」(2015年)のOPでは本編のキャラクターデザインの門脇聡くんに、作監として入ってもらっています。「BLOOD-C」(2011年)も、キャラクターデザインの黄瀬和哉くんがOPの作監をやっています。僕は、コンテと演出のみですね。

──言われてみれば、「BLOOD-C」のOPの皮膚がはがれる演出は「攻殻機動隊」っぽいですね。

梅津 よくそう言われるんですけど、あのシーンはオマージュではなく、進化の象徴なんです。はがれた皮膚がカラスに変化して、飛び去っていくところが肝なんですね。「BLOOD-C」ではスタッフクレジットの文字の一部が、血のようにジワッとにじむでしょ? あの演出も、こだわりのひとつでした。

──なるほど。ほかに、梅津さんのOPといえばダンスが入りますよね。

梅津 いや、ダンスはそんなに多くはないですよ。「Dimension W」ぐらいでしょ?

──「それでも町は廻っている」(2010年)は、ずっと踊りっぱなしでしたよ。

梅津 ああ、それは新房昭之監督から「ミュージカルにしてほしい」という要望があったからです。あの踊りは、制作スタジオの制作さんにお願いして、踊ってもらいました。

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発売日: 1986年5月30日
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