アニメ業界の新人たちに必要なこととは――? アニメーター・コーチ、小島昌之さんに聞いてみた【アニメ業界ウォッチング第88回】

2022年04月16日 11:000

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4月になり、この春も多数のアニメ番組がスタートした。当然、それに応じた数の新人アニメーターが業界に就職していると期待されるが、人材育成については各スタジオが独自のカリキュラムで取り組んでいるようだ。
都内の制作会社「チップチューン」に所属する小島昌之さんは、約20年前にアニメーターとして業界に入り、異業種でキャリアを重ねて再びアニメ業界に戻り、現在はアニメーター・コーチとして独自のカリキュラムで新人育成にあたっている。小島さんご本人に、詳しいお話をうかがった。

アニメ業界の外で、コーチングの理論を学んだ7年半


── 最初にアニメ業界に入ったときのことを聞かせてください。

小島 2001年、動画マンとしてマッドハウスに入社しました。次に動画全体を見る動画チェック、原画マンへと進みました。ただ、当時は「今日から君は原画だからがんばって」といった感じで、あとはせいぜい監督や演出が誰かとか作監は誰でレイアウトを描いたのは誰か……程度の説明しかなく、原画の描き方をちゃんと教えてもらえるようなことはありませんでした。それでも、なんとか自分で色々と試行錯誤しながら2006年まで原画を描いていて、「ブラック・ラグーン」という作品を最後にマッドハウスを退社しました。
その後も少しだけフリーとして原画をやったりもしましたが、体調を崩したり、そのほかにもさまざまな要因が重なって、2007年にアニメ業界から他業種へ転職しました。その頃から、「アニメーターには人材育成のシステムが必要ではないか」と考えていたものの、当時の自分には知識も経験もなく、転職にあたって何かアテがあったわけではありませんでした。

── どういう業種に転職したのですか?

小島 もっとも長く従事したのは、パチンコ業界です。アニメ業界は遊技機業界と縁がありますが、私が働いていたのはホール業務と呼ばれる接客の仕事です。私の入った会社は全国規模で店舗を展開しており、接客、プレゼン、地域貢献などについて非常に質の高い教育をしていました。アルバイトに対しても、やる気や能力がある人には機会を与えてくれる会社でしたので、私も2泊3日のワークショップに参加して、人材育成やコーチングの理論を学ぶ機会に恵まれました。
ワークショップには教える側も教わる側も、モチベーションの高い人たちが集まってきていたことも大きな刺激になりました。店舗へ戻ってからも、実践を通して今まで思い込みや自分の都合で判断していた部分を責任者や同じコーチ仲間からフィードバックしてもらい、知識や理屈でとどまっていたものを実用的なスキルとして習得することができました。転職時に必要性を感じつつも、身に付けるためのアテがなかったこうした知識と経験を手にできたことは本当に幸運でした。そして、このときの手応えが今の活動に繋がっています。有意義すぎて少し長居をしてしまい、気づけば転職してから7年半が経っていましたが(笑)。


── その間、アニメのほうは?

小島 7年半の間、自分で進んで絵を描くことはほとんどしませんでした。アニメ業界を離れることになった当時、絵を描くのが嫌になりかけていたので、無理して描くのだけはやめようと決めていました。転職した先で絵を仕事にしていたことを知られて、「似顔絵を描いてよ」と頼まれたりすることがあった程度です。ですが、いざアニメ業界に戻ってみると、いつも悩んでいた7年半前よりも、いま自分が何につまづいているのかが客観的に理解できるようになっており、それほど困ることはありませんでした。マッドハウス時代にテクニカルなカット、さまざまな表現のカット、複雑なセル構成やカメラワークのカットを多くまかされていたこともよかったのだと思います。

── すると、アニメ業界への復帰もスムーズだったのですか?

小島 マッドハウス時代の知り合いに連絡したり、業界の交流会に出たりして、連絡先を交換した相手から仕事をもらっていました。それから1年もしないころ、チップチューンから「うちの仕事を手伝ってほしい」と連絡が来ました。ただ、最初はあくまでひとりのアニメーターとして声をかけられました。チップチューンに入社して日の経たないうちに、「実はパチンコ業界でコーチングについて学んできた」「人材育成をやりたい」と相談しました。

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BLACK LAGOON

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放送日: 2006年4月8日~2006年6月24日   制作会社: マッドハウス
キャスト: 豊口めぐみ、浪川大輔、磯部勉、平田広明、小山茉美、森川智之、南央美、金田朋子
(C) 広江礼威・小学館/BLACK LAGOON製作委員会

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