脚本家・小中千昭の体験した90年代後半のアニメ制作現場、そして「serial experiments lain」で試みたこと【アニメ業界ウォッチング第51回】

2018年12月29日 12:000
脚本家・小中千昭の体験した90年代後半のアニメ制作現場、そして「serial experiments lain」で試みたこと【アニメ業界ウォッチング第51回】

1995年に夕方から放映されていた「新世紀エヴァンゲリオン」が大ブレイクして、アニメ業界はにわかに活気づいた。アニメだけではなく「ガメラ」や「ウルトラマン」、「仮面ライダー」が復活し、日本の映像文化は新しいビジュアルセンスを貪欲に吸収していった。
小中千昭さんがシリーズ構成と全話の脚本を担当した「serial experiments lain」は、アニメ業界が活気に沸いていた1998年、深夜枠でひっそりと放映された異色のサイコサスペンスアニメだ。その「lain」が20周年を迎えて関連イベントが開催された今年、小中さんの胸には、どんな想いが去来したのだろう? 師走の西新宿で、お話をうかがった。

自分のためだけにつくりはじめた「lain」は、贅沢な作品だった


── 2018年7月に「serial experiments lain」(1998年)の20周年記念イベント“クラブサイベリア”が渋谷Circus Tokyoで開かれ、12月頭にはゲーム版「lain」の記念イベントも大阪で開催されたそうですね。

小中 ええ、ゲーム版の発売が11月末だったので、大阪で開催した“クラブサイベリア”は、ゲームに寄ったイベントになりました。イベントを企画してくれたファンたちもそうなんですが、なぜか今「lain」を推してくれる人たちは若い人が多いんです。放送当時、生まれていなかった年齢の人がファンアートを描いて、Twitterにアップしてくれたりする。僕自身は、映像作品はその時代に消費されるものであって、20年後にコンテンツとして生き残らせようなんて考えていなかったし、「lain」を特別な作品だと思っていたわけでもありません。その時代ごとの流行りを描いていれば、いずれは陳腐化するだろうし、実際に「lain」で描いたネットワークの世界は陳腐化していると思います。逆の見方をすれば、リアルとネットの対比構造や関係性は、この20年、そう大きく変化していないとも言えます。20年の間に視聴環境が変化して、ネット配信で初めて「lain」を初めて見た人が増えているんです。

── 1998年当時は深夜からの放送でしたし、「こんなアニメを見ているのは俺だけだろう」と思っていました。

小中 そう、Twitterで感想を読んでいても「lain」なんて誰も見てないよね……という前提のツイートが多いんです。一定の割合で「lain」をオススメしてくれる人もいるのですが、「きっと誰にもわかってもらえないだろう」と、ちょっとペシミスティックな薦め方をしている。だけど、“クラブサイベリア”を企画してくれたファンたちはもっと若い世代で、作品の難解さやアングラな部分を「キャラクターがかわいい」ことに収斂させて、今なおエンジョイするというか消費しつづけている。僕からすると、びっくりするような新しい楽しみ方をしているんです。

── 地上波放送のアニメ企画として、「lain」は誰に向けてつくっていたのでしょう?

小中 プレイステーション用ゲームを出すことが決まっていましたから、「アニメはゲームを売るためのプロモーション」という建前がありました。そうは言っても、コアなゲームユーザーがどんなアニメを好むかまで考えていたわけではないので、結局は野放しで自分たちの好きなアニメをつくっていました。シリーズ作品はどれもそうなんですけど、作品にとりかかるときのモチベーションと最終回に向けてまとめていくときの心境は、結構シフトしているんです。「lain」の初期は、とにかく自分のためだけにつくっていました。第5話で主人公・玲音のお姉ちゃんが精神的に壊れてしまうんだけど、そこまでをまずやりたかったんです。ゲーム版はエグいサイコホラーだったので、アニメもそうなるのかなと思っていたら、中村隆太郎監督は、しっかりとドラマを見せる方向へシフトしていったんです。 「lain」の制作現場は、ギリギリまでシナリオを待ってもらえたので、前半のアフレコの演技を見てから、その印象を終盤のシナリオにフィードバックすることができました。大林隆之介(現:大林隆介)さんの演じたお父さんが、意外と説得力のあることをしゃべっていることに気づかされたりしました。キャラクターデザインの岸田隆宏さんは現場にベタで付いていてくださったし、プロデューサーの上田耕行とは喧嘩もしたし、それぐらい真剣につくっていたんです。予算はなかったけど、贅沢な作品でしたね。

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serial experiments lain

serial experiments lain

放送日: 1998年7月6日~1998年9月28日   制作会社: トライアングルスタッフ
キャスト: 清水香里、大林隆介、五十嵐麗、川澄綾子、浅田葉子、手塚ちはる、水野愛日、武藤寿美、滝本啓人、山本有紀、藤間宇宙、中田譲治、山崎たくみ、速水奨
(C) 1998 Triangle Staff/Universal Studios

THE ビッグオー

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放送日: 1999年10月13日~2000年1月19日   制作会社: サンライズ
キャスト: 宮本充、矢島晶子、清川元夢、玄田哲章、篠原恵美、辻親八、石塚運昇、堀勝之祐、納谷悟朗、大塚芳忠
(C) サンライズ

ふしぎ魔法ファンファンファーマシィー

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放送日: 1998年2月14日~1999年2月6日   制作会社: 東映アニメーション
キャスト: 小西寛子、松島みのり、矢島晶子、三石琴乃
(C) 荒木慎司・おのえりこ・柏葉幸子・笹木竹丸・フジオプロ・小学館・テレ ビ朝日・東映アニメーション

ガサラキ

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放送日: 1998年10月4日~1999年3月28日   制作会社: サンライズ
キャスト: 檜山修之、高田裕司、速水奨、千葉一伸、小山武宏、こおろぎさとみ、藤生聖子、秋元羊介、安井邦彦、中田和宏、日高奈留美、菅原淳一、高山みなみ、岩永哲哉、丹下桜、神奈延年、拡森信吾、岸野幸正、宮崎一成、徳弘夏生、金月真美
(C) サンライズ

ゲゲゲの鬼太郎(第4期)

ゲゲゲの鬼太郎(第4期)

放送日: 1996年1月7日~1998年3月29日   制作会社: 東映アニメーション
キャスト: 松岡洋子、田の中勇、千葉繁、西村ちなみ、山本圭子、塩屋浩三、龍田直樹、前田このみ、沼田祐介、摩味、西村知道、郷里大輔
(C) 水木プロ・東映アニメーション

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