アニメ業界ウォッチング 第2回:クールジャパンでアニメを稼げる産業へ!「経済産業省」

2014年01月27日 11:300

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連載特集「アニメ業界ウォッチング」第2回は、霞ヶ関でお話を伺いました。堅苦しくない内容ですので空いているお時間にでも気負わずお読みください!



皆さんは、「クールジャパン」という言葉をご存知でしょうか? 時折ニュースなどで耳にするフレーズかと思いますが、「実際のところ、クールジャパンっていったい何!?」と思われている方も多いのではないかと思います。
「クールジャパン」という言葉は、2002年に米国人ジャーナリストが発表した論文(バブル崩壊後、日本がポップカルチャーによる文化的勢力によって回復したことを論じたもの)に端を発するとされています。そして「クールジャパン戦略」とは、クールと評される日本製品やコンテンツを世界に提供し、近年急速な経済 発展や市場拡大が予想されるアジア等の新興国の需要を取り込むことで、日本経済の成長や雇用創出につなげようという国をあげての試みのことです。とは言っても、やはり堅い字面では分かりにくいですよね。
「クールジャパン戦略」をリードする経済産業省の商務情報政策局・文化情報関連産業課 (メディア・コンテンツ課)の仲舎菜子さんと、アニメ・マンガ担当の横倉幹人さんにクールジャパン戦略のアニメについて、現況の分析から具体的な施策、今後の展開などを詳しく聞いてきました!
(取材・文・写真/山崎佐保子)



日本製アニメは海外でも確立されたコンテンツ=“ブランド価値の向上”を戦略的に進めていく


―――ずばり、日本のアニメ・コンテンツは「クールジャパン戦略」においてどのような位置付けなのでしょうか?


横倉幹人さん 横倉さん:最近だと地域の町おこしでアニメを使ったり、今までのビジネスではリーチできなかった層にリーチするためにアニメが使われていたり。そういった点でも、かなりアニメが使われる頻度が高くなっています。もちろん作品にもよりますが、アニメ産業が国民的にもメインストリームになってきているように感じますね。


仲さん:アニメのファンって、日本に限らず世界中にたくさんいらっしゃいますよね。日本は車産業をはじめ、“ものづくり”を最大の産業としてきましたが、今ではアニメのような“コンテンツ”の魅力も、そういった“ものづくり”の技術に並ぶ日本の強みとなっているように感じます。そこで日本元来の“ものづくり”の分野などともうまく相乗させて、「世界に日本のファンを広げていこう」というのが大まかにクールジャパン戦略ですね。

横倉さん:国際交流基金などのデータ(※)で見てみても、「日本のアニメをきっかけに日本語を学びました」といった事例も多く見られます。“日本文化への導入”という意味において、アニメはかなり強い波及力をもっているんです。

※出典:国際交流基金「2012年度 日本語教育機関調査 結果概要(抜粋)」


―――昔から「マジンガーZ」や「聖闘士星矢」など、海外でも日本のアニメは数多く放送されてきました。そういった下地があってこそですよね。

横倉さん:そうですね。たとえば「NARUTO -ナルト-」という作品でいうと、主人公のうずまきナルトがラーメン好きという設定で、それを見た海外の視聴者は「ラーメンって何だろう? 食べてみたいな」と思ってくれます。そこで日本のラーメン店が海外で展開すると、ファンは「ラーメンを食べに行ってみよう!」となる。さらに、「日本に行って本場のラーメンを食べたい!」と思ってくれる人も出てくるかもしれない。そうやって各分野が連携してコンテンツを核にしながら、ビジネスの最大化を図ろうという戦略です。もちろんコンテンツだけの力で勝負できる方々もいらっしゃいますが、中小企業の多いコンテンツ業界が製造業のスポンサーを得ながら相乗して事業展開していくというのは、大きい成果が期待できるのではと思います。

―――日本だと自発的に同人誌や二次創作など、色々な波及がありますよね。海外だとキャラクターになりきるコスプレが発達したとしても、大元のコンテンツが売れるかはまた別問題ですよね。

横倉さん:日本と各国を比べてみると明確ですよね。特にインドは自国でアニメ産業を育てたいと思っているけれど、その下地がもともとない。そこでまずは製造の拠点を作るという話になる。私たちの政策では、現在コンテンツの制作支援は行っていないんです。コンテンツの成功とは、なかばギャンブルの世界なので、そこに税金を投入するのがいいのかという問題もあり、なおかつ日本はアニメコンテンツの下地がしっかりできており、それを海外に売れる状況にあります。政策は国や地域によって異なりますが、日本はブランド価値の向上=広報といった面を、まずは戦略として考えています。


アニメを“稼げる産業”へ。横断的なプロジェクトを担えるプロデューサーが必要


―――施策の1つである「プロデューサー人材育成」とはどのように行っているのですか?

横倉さん:今は映画に限っているのですが、海外のフィルムスクールで法務や会計などを学び、現地とのコネクションを作って日本に持って帰ってきてもらい、業界に還元してもらう、といった感じです。アニメをぬいぐるみなどのグッズにするといった商売は普通に考えつきますが、たとえばアニメに出てきた家具などを現地の伝統職人さんに作ってもらい、付加価値を付けて国内外で売るなど、そういった想定外のアイデアで面白い商品を作ることのできるプロデューサーがなかなかいないのが現状です。ハリウッドに比べ、日本ではクリエイターの「こういうものを作りたい!」という意思が強いんです。それは作品にとってもちろん必要なことではあるのですが、ビジネスベースでなるべくヒット作を出し続けると考えた時、より優秀なプロデューサーが必要です。そういった力をもった人材の育成ですね。



仲さん:
現状、クリエイターの皆さんは業界ごとに個々に活躍されています。「クールジャパン戦略」には個々で発信していくのではなく、「これとこれを組み合わせたらもっと面白いものができる」といった、より横断的なプロジェクトを担えるプロデューサーが必要です。全体を俯瞰(ふかん)して、日本の魅力をより高めてくれる人材が不可欠だと考えています。




―――確かにハリウッドはうまいですよね。“作家性”というよりも、“世界に通用するか”という視点で作品が作られていますよね。


横倉さん:そうですね。たとえば映画「トランスフォーマー」も、日本で実現してもおかしくなかった企画ですよね。そういったヒット作を製作できるようなプロデューサーの育成は、とても重要だと考えています。

―――現在日本で主流となっている製作委員会形式だと、資金を集めやすいというメリットもあるけれど、商業主義に走りやすく尖った作品が作りづらいというデメリットもあります。また全般として作り手である制作会社にお金が回りにくい(※)ので、クリエイターも育たない。ジレンマですよね。

※出典:公正取引委員会「アニメーション産業に関する実態調査報告書(平成21年1月)」


横倉さん:それは政府としても危惧している点ではあります。そもそも絶頂期であった2005年から比べるとアニメ産業の景気が下がってきていることもあり、全体のパイを広げないことにはクリエイターへの還元もままならない。まずはアニメを“稼げる産業”にするということを、経産省のミッションにしています。

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