J9シリーズ、アクロバンチ……国際映画社のロボットアニメを支えつづけた四辻たかお氏が、破天荒な制作舞台裏を今こそ明かします!【アニメ業界ウォッチング第71回】

2020年11月07日 12:000
J9シリーズ、アクロバンチ……国際映画社のロボットアニメを支えつづけた四辻たかお氏が、破天荒な制作舞台裏を今こそ明かします!【アニメ業界ウォッチング第71回】

国際映画社の制作したロボットアニメ「魔境伝説アクロバンチ」(1982年)が、今年2020年9月にはじめてDVD-BOX化された。総監督の“夏木よしのり”とは、「銀河旋風ブライガー」(1981年)に始まるJ9シリーズでチーフディレクター、オーディオディレクターとして腕をふるった四辻たかおさんのペンネームである。J9シリーズの洒脱な音楽センス、軽妙なセリフまわしは四辻さんの手腕によるところが大きい。
現在では考えられないほど自由でクリエイティブだったJ9シリーズの制作現場の雰囲気を、四辻さんにうかがった。

「ブライガー」は、“メカの出ないロボット物”としてスタートした!


── 四辻さんは、「科学冒険隊タンサー5」(1979年)が初監督作品なんですね。「ろぼっ子ビートン」(1976年)でも演出なさったり、何本かサンライズ(旧・創映社)の作品に参加されていますが……。

四辻 僕は、虫プロダクション出身なんです。だけど、虫プロに入ったのはアニメ作品をつくるためではありません。虫プロがアニメ・実写を問わずコマーシャルを作るため、人材を探していたからです。虫プロに入ってからの僕のボスは、岸本(吉功・後にサンライズ初代社長)さん。「アクロバンチ」でペンネームを“夏木よしのり”としたのは、岸本さんのお名前を勝手に拝借したんです。
最初に岸本さんに指示された仕事は「虫プロが『巨泉×前武 ゲバゲバ90分!』(1969年)という番組に参加するから、日本テレビへ行ってギャグを書いてこい」というものでした。マッド天野さんといった偉い人たちの中で、ずっとギャグを書いていました。だけど、アニメよりは実写をやりたかったので、虫プロを飛び出したんです。その後、実写の仕事をやっているとき、サンライズの社長になった岸本さんから「お前、明日から『勇者ライディーン』(1975年)の仕事をしろ」と、電話がかかってきました。僕はアニメは見ませんから、「ライディーンなんて聞いたこともなければ食べたこともないんだけど……」ととまどいながら出かけて行ったところ、長浜忠夫監督を紹介されました。長浜監督のもとで、「ライディーン」の文芸担当をやることになったんです。

── 長浜監督ということは、後期の「ライディーン」ですね? 前期は富野由悠季(当時は喜幸)監督ですからね。

四辻 そうです。富野さんが監督のころの文芸担当が、山本優さん(後にJ9シリーズの原案・シナリオを担当)だったんです。そのときに仲よくなって、「いずれ2人で何かやりましょうよ」と意気投合しました。とりあえず、僕はシナリオを書くことにして、「ろぼっ子ビートン」(1976年)のシナリオを書いていました。ところが、演出がひとり病気で倒れてしまったので、岸本さんに「お前が代わりに演出をやれ」と言われました。「ビートン」の作画監督は、“100年に1人の天才”と呼ばれる安彦良和さんです。安彦さんに「演出って、どうやるんですか?」と聞いて、「四辻さんなら演出できるよ」と言ってもらって、ちょっと調子にのってしまったんですね。それ以降、サンライズで演出した作品は、基本的にロボット物です。長浜監督にも「ロボット物の演出やらない?」と声をかけてもらって何本か演出しましたが(「超電磁マシーン ボルテスⅤ」・1977年)、どうもロボット物は自分に合わないので、他社の仕事に逃げていました。

── 「科学冒険隊タンサー5」は1979年ですから、「ボルテスⅤ」終了の翌年ですね。

四辻 そう、またもや岸本さんから「『タンサー5』のCD(チーフディレクター)やれ」と電話がかかってきて。「CDならやりたいな」と喜んでいたら、「スタッフはお前ひとりだ。上井草に場所だけは用意してあるから」という話でした。そこで、僕ひとりでスタッフを探すところから始めた作品が「タンサー5」。まずはシナリオライターを集めようと思って、仲のよかった星山博之さん、渡辺由自さんたちを呼んできました。

── ライター陣は、かなり豪華なんですよね。

四辻 そう、あの当時でも豪華でしたね。だけど、僕自身は初監督作なので張り切りすぎてしまって、思ったような作品にならなかったんです。ですから、「タンサー5」の放送が終わったときにはガッカリしていました。打ち上げに遅れて行ったら、岸本さんに怒られました。「お前な、こういうときこそスタッフの前に立って“一生懸命に頑張りました”と言うのが監督だろう?」 確かに、そうなんです。

── 「タンサー5」は玩具がとても売れて、大成功だと聞いています。

四辻 ええ、何年か前のサンライズフェスティバルで「タンサー5」を、映画館で上映してもらいました。「ほかのアニメは見ちゃ駄目だけど、『タンサー5』だけは見ていいぞ」とお父さんに言われていた……なんて話してくれるお客さんがいて、ホロリときました。そんなに大勢の人が見てくれていたのか、と思ったら、平均視聴率が20%を超えていたそうですね。だから、ちゃんとヒットしたんだなあ……と、後から気づかされました。


── 「タンサー5」がヒットしたのだから、次もメカ物の依頼が来たのではありませんか?

四辻 いえ、当時は勝手に失敗したと思っていたので、またアニメから遠ざかっていたんです。知り合いのツテで「スーキャット」(1980年)に誘われて、「監督がいなくなっちゃったから、やってくれない?」と頼まれました。シナリオは先輩の伊東恒久さんですし、「スーキャット」を監督することにしました。ですから、別にメカ物が得意なわけでも何でもなくて、メカの出ないアニメに逃げていたんです。

── しかし、「スーキャット」の翌年が「銀河旋風ブライガー」(1981年)ですよ。

四辻 確か、山本優さんに「新しい会社をつくるから、お前、ロボット物の監督やらないか?」と誘われたんです。「だから俺、メカは苦手なんだって」「メカが出なくてもいいよ」「よし、メカの出ないロボット物だな? 音楽はやっぱり、ロックだよな」と、洋楽を思い描いて「ブライガー」の企画がスタートしました。

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(C) 国際映画社・つぼたしげお

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