アニメ業界ウォッチング第11回:「ガンダムではなく、ガンダムに乗るパイロットの食事をデザインする」アニメ現場の縁の下の力持ち、ベテラン・メカデザイナーの大河広行に学べ!

2015年07月26日 10:000
大河広行さん

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メカデザイナーの仕事は、派手なロボットや巨大な戦艦などをデザインする仕事……と思われがちだ。だが、80年代にアニメ会社に就職し、玩具企画会社を経て、現在もアニメ業界で活躍する大河広行さんは「メカデザイナー」を名乗りながらも、アクション・シーンの構成や演出に近い仕事までこなす「何でも屋さん」ともういうべき多彩な職能で、アニメ業界を渡り歩いている。関わった作品は、それこそ数え切れない。

「絵を描くのが大好き」と語る大河さんは、食わず嫌いしない、貪欲な仕事歴を原動力にしている。その豊かでパワフルな生き方から、きっと元気をもらえるはず!


――動画マン出身とのことですが、もともとアニメーター志望だったのですか?

大河 いえ、漠然と「絵を描いてメシ食っていけないかな……」と思っていた程度です。高校生の頃、学校の外にマンガやアニメ好きのサークルがあって、地元の書店の社長さんがビルの最上階を開放してくれていたんですよ。ただの素人サークルが、のびのびと漫画を描けるように(笑)。そのサークルにはプロ志向の人もいて、たとえばアニメ監督になった紅優さん。そういう人もいたので、いい加減なことに「頑張れば、アニメで食えるんじゃないか」と東京に出てきました。飛び込みでスタジオを回ってみたら、シャフトが動画マンとして採用してくれたんですよ。ちょうど、「機動戦士Zガンダム」の始まった頃(1985年)でした。

――すると、シャフトで動画を担当していたわけですね。

大河 ええ。だけど、割と早い時期にぎゃろっぷに移籍したんです。ぎゃろっぷにいるとき、漫画家の知り合いが、「B-CLUB」誌に掲載されていたレイアップ(玩具企画会社)の求人広告を見て、レイアップに入社しました。僕はその頃、「メカデザイナーになりたい」と考えるようになっていて、だけど、どうすればメカデザインができるのかわからず、悩んでいました。そんなとき、今、監督になっている千明孝一さんが「ヴイナス戦記」で演出として参加していて、「大変だから手伝ってくれ」と電話をかけてきたんです。僕の中では、大河原邦男さんと安彦良和さんは神様のような人だったので、安彦さんの現場を手伝えただけで、夢がかなった気になってしまった。「これで悔いなく、アニメをやめられる」って(笑)。それでレイアップに入社し、SDガンダムを中心にした玩具デザイン、バンダイさんの女玩企画のスケッチなど、何でもやりました。12~13年ぐらい在籍していましたね。

――だけど、気持ちとしては、メカデザイナーになりたかったわけですよね?

大河 メカが主に好きでしたけど、キャラやモンスターを描くのも大好きでした。当時、バンダイのゲーム企画をレイアップで担当していて、僕はメカデザインとして関わったんです。それがモンスターもやることになって、キャラデザインも任されて、一部、マップや美術設定もやることになりました。たぶん、人手が足りなかったんでしょうね。そのあげく、「Vジャンプ」誌の鳥嶋和彦編集長に、「毎月、このゲームのカラーイラストを1枚ずつ描いてほしい」と言われて……。

――それだけ広範囲に仕事をされて、誰か師匠のような人はいなかったのですか?

大河 いえ、ほとんど独学ですね。たとえば……(と、分厚いファイルを取り出す)、この大昔のカラーイラストは、初めてMacで塗ったんです。だけど、その時はペンタブレットなんて知らなかったから、マウスで塗りました。これは、パンプレストさんの出していたガンダム・ゲーム用の下絵なんです。まだ3Dではなく、ドット絵にして動かしていた時代のものですね。モビルスーツのディテールなんかも、自分なりに考えたりして。

――これは「カードキャプターさくら」ではありませんか?

大河 20年前の古い絵なのでお恥ずかしいのですが、プライズ向けのポスターか何かの下絵でしょう。男の子向け、女の子向け……レイアップにいた頃は、ジャンルを問わずに描きましたね。僕の描いた絵がバンプレストさんでOKになると、サンライズさんや東映さんなどの版権元に渡り、現場のアニメーターが描くわけです。だから、商品用に「SLAM DUNK」の下絵なんかも描きました。


――(ファイルを見ながら)モビルスーツから美少女まで、何でもありますね。


大河 これは、プライズ向けフィギュアのポーズ参考図ですね。カプセル自体を「ガンダム」のジオラマにしちゃおうとか、たくさん企画を出すんです。ガンダム関連の僕の経歴では、「機動戦士ガンダムSEED」(2002年)のコクピットデザインが最初だと思われていますが、初めて関わったのは「機動新世紀ガンダムX」(1996年)なんです。担当者から「今度のガンダムは、コントローラーがないと動かない」「コントローラーを商品にしたい」と言われて、デザインしました。


――すると、ガンダムXのコントローラーを玩具用にデザインしたわけですね?

大河 そうです。僕の描いた三面図を元に、線を減らしたものがアニメ用設定として描かれたんだと思います。だけど、メカだけに特化していたわけではなく、レイアップ時代は知育玩具もデザインしたし、絵本も企画しましたよ。

――知育玩具なんて、何を参考にデザインするんですか?

大河 本屋で子ども向けの本を見るのはもちろん、オモチャ屋さんにも行ってみたし、育児の講習会にも行きましたね。

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