アニメ業界ウォッチング第12回:「萌え」「美少女」……海外から見た日本アニメ文化の醍醐味と“ヤバさ”とは? 日本アニメ研究家、レナト・リベラ・ルスカ、インタビュー

2015年08月02日 10:000
レナト・リベラ・ルスカ講師

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「クールジャパン」のレッテルをつけて日本のアニメや漫画を語ると、口うるさいマニアからは煙たがられてしまう昨今。日本に住む外国研究家から、アニメ文化、日本独自のキャラクター文化はどう見られているのだろう? ペルーで生まれ、イギリスに育ち、現在は明治大学・国際日本学部で留学生に漫画・アニメ文化を教える、レナト・リベラ・ルスカ講師に語ってもらった。


ガイナックスのルーツ、「DAICONフィルム」が教材


――今日の講義では「艦これ」「響け!ユーフォニアム」から「DAICON III」まで、さまざまな話題が英語で飛び交いましたが、どんなことを留学生たちに教えていたのですか?

レナト これまでの講義では、アニメ業界が日本社会へ与えた影響について、年代ごとに要約してきました。今日は前期最後の講義だったので、今までのまとめですね。80年代中盤まで、アニメはスポンサーが自社製品を売るための宣伝番組でしたよね。その後、アニメ自体が商品になり、ディスクの売り上げが直接、製作委員会の収益になっていきました。ところが今は、肝心のディスクが売れなくなってしまった。ディスクが売れなくなった現在、「海外向け作品をつくる」「ネット配信をマネタイズする」「クラウド・ファンディングで資金を集める」など、いくつか新しい道筋が生まれています。そのいっぽう、深夜アニメのクオリティがとても上がっている……という現状を、学生に理解してもらいたかったんです。

――学生は、ほとんどが外国人のようでしたね。

レナト 1/4~1/5が日本人、あとは韓国 、ドイツ、オーストラリアなどからの留学生です。各国の学生に身近な人、3人に「アニメという言葉から何を連想する?」とインタビューする宿題を出したんです。カートゥーンではなく、日本のアニメのイメージを自分と同世代、親の世代、おじいちゃん・おばあちゃんの世代に聞いてもらいました。その結果、国籍だけではなく、日本国内でも世代によってアニメに対するイメージがバラバラであることが分かりました。たとえば、50代のアメリカ人男性だと、「Speed Racer」(「マッハGoGoGo」)を連想する人が多い。



――他に、どんな国の人にインタビューしたのでしょう?

レナト アメリカ以外ではシンガポール、中国、ミャンマー、カナダ、ポーランド、メキシコの人たちです。どこの国でも、若い世代はネット配信で日本のアニメを見ているせいか、あまり認識に差がありません。彼らは「この作品は日本でつくられている」とわかったうえで見ているため、「この翻訳はおかしい」「知らない単語が出てきた」と思ったとき、すぐネットで調べるんです。その結果、海外の若者がDAICONフィルムの存在を知ったりするわけです。この教室でも、みんなで「DAICON III」を見ましたよ(笑)。

日本人は「絵」で表現する技術が、素晴らしい


――レナトさんは、7月にロサンゼルスで開催された“Anime Expo 2015”でも、パネラーとして話したそうですが?

レナト ええ。ちょっと背景を説明すると、昨年から今年にかけて、2冊ほど英語でアニメの本が出ました。イアン・コンドリーさんの「アニメの魂: 協働する創造の現場」、マーク・スタインバーグさんの「なぜ日本は〈メディアミックスする国〉なのか」、どちらも邦訳が出ています。その2冊を読んで私が気になったのは、アニメ番組のメディアミックスが80年代からうまくいかなくなってきて、スポンサーの売りたいオモチャとスタジオのつくりたい作品が一致しなくなっていった……。その事実に、ほとんど言及がないこと 。アニメ制作者たちがスポンサーに束縛されるのを嫌がり、「俺たちのつくりたい作品はコレだ!」と主張しはじめた。その実例として、Anime Expoで取り上げた作品は「魔法のプリンセス ミンキーモモ」と「超時空要塞マクロス」。どちらの作品も制作者たちが企画段階で「こういう終わり方がいいよね」と決めたのに、スポンサーが「もっと番組を続けてくれ」とワガママを言い出して振り回された作品ですよね。よく言えば、アニメ・ブームだったから、そういうカオスな状況が生まれたわけです。
 ところが、1985年に従来のアニメ雑誌が一気に減って、代わりにグラビア誌のような「月刊ニュータイプ」が創刊されます。私にとっては、1985年は文化の転換期であり、革命的な年でした。だから、Anime Expoでは、そのことを発表しました。


――リアクションはどうでしたか?

レナト 質疑応答の時間はとれなかったんですけど、「聞いたことのない話ばかりで、刺激的だった」と言ってもらえて、よかったです。

――そもそも、レナトさんは、どうして日本のアニメに興味を持ったのですか?

レナト 私は7歳までペルーに住んでいて、テレビっ子だったので、アニメは何でも見ていました。当時のペルーでは「ミンキーモモ」「太陽の使者 鉄人28号も放映されていて、物心ついたころから「これは外国のアニメだ」と、気がついていました。なぜなら、テレビ局にお金がないせいか、日本語クレジットを漢字のまま、放映していたからです。その後、イギリスに移住したのですが、イギリスでは日本のアニメが放映されていませんでした。同い年ぐらいの子どもたちは、くだらないカートゥーンを見ていて、「サッカーはどこのチームが好き?」と聞いてくるんです。私はサッカーなんて興味なくて、アニメの話がしたいのに(笑)。
 しかし、90年代に入ると、「AKIRA」「プロジェクトA子」のようなマニアックなアニメが、イギリスにも入ってきました。「絵でこんな複雑なストーリーを展開できるなんて、やっぱり、日本のアニメは面白い!」と、あらためて思いました。当時の私は、印象派やジャポニスムに興味をもっていました。ゴッホやモネが何に熱中していたかというと、浮世絵なんですよね。浮世絵にしてもアニメや漫画にしても、日本人は、シンボリックな絵で表現するのが素晴らしく上手い。それで、大学の四年間を使って日本文化を研究しようと決めたのです。

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