アニメ業界ウォッチング 第3回:アニメの未来を切り拓け! 「アニメミライ」プロジェクトマネージャー・桶田大介に聞く

アキバ総研 | 2014年03月18日 18:15
アニメ業界ウォッチング 第3回:アニメの未来を切り拓け! 「アニメミライ」プロジェクトマネージャー・桶田大介に聞く

アニメ業界ウォッチング」連載第3回は、ひそかにアニメファンの間で注目度を高めている文化庁の事業「アニメミライ」に迫ってきました。「アニメミライ」とは、文化庁より委託を受けた一般社団法人日本アニメーター・演出協会(以下、JAniCA)が、2010年より実施している若手アニメーターの人材育成事業です。

初年度は「PROJECT A」、2011年以降は「アニメミライ」の名で知られています。本業が弁護士という経歴を持つ桶田プロジェクトマネージャーに、これまでの実績を振り返りながら、現状の達成事項や今後の展望を語っていただきました!

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プロジェクトの成り立ち


―――まずは事業の成り立ちからお聞かせ願えますか?

「アニメミライ」は、文化庁の委託事業である「若手アニメーター等人材育成事業」を中核として実施されているプロジェクト全体を表す名称です。若手アニメーター等人材育成事業については、事業主体である文化庁がその実行を委託する先として、これまで4年続けて、JAniCAが受託させていただいています。

私は、「アニメミライ」のプロジェクトマネージャーを務めています。このプロジェクトの発端となったのは、2009年に麻生太郎総理大臣の時の「国営マンガ喫茶」、いわゆる「国立メディア芸術総合センター」です。あの時、「箱はあるけど、中身がないじゃん」という議論が起きる中、センターの具体的な中身を検討する文化庁の委員会(設立準備委員会)が開かれました。この委員会に、有識者として松本零士先生と樋口真嗣監督、それにJAniCAの立場で私が呼ばれました。そこで、私たちJAniCAは「アニメやマンガが注目されるのはありがたいことです。そこで、具体的なプランを提案します」と“中身”を持っていったわけです。その“中身”とは、たとえば撮影現場を見られるNHK放送センターに近いことができないかと。

アニメ作品であれば、年間52話で1年分となります。何か育成に合った作品を常にここで作り続けられる環境を作るために、「国立メディア芸術総合センター」の中にトレーニングセンターのようなスタジオを作って、若手アニメーター育成の機能を持たせたらどうかと。アニメ業界の研修所のようなものができないかと考えたんです。人材育成を主たる目的とした年間52話の作品をセンター内で制作し、合わせてアニメ制作現場の見学、作品上映、原画などの資料も展示する、という話をプレゼンしました(※)

※資料
http://www.bunka.go.jp/bunkashingikai/kondankaitou/media_art/02/gijisidai.html


同年8月に政権が民主党に変わり、「我々は“箱”ではなく“コンクリートから人へ”“ソフト&ヒューマン”でいくので、アニメーションはむしろ重視している。ソフトで何かをやりたい」と連絡が来ました。文化庁からは人材育成という観点でやりたいと相談があり、意見交換する中で、今の「アニメミライ」の原案ができ、翌年2010年3月に事業化されました。

そもそも、何故2009年の委員会に私が呼ばれたのか、さらにその前の話をしましょう。そもそも、JAniCAはアニメ業界を何とかしたいと芦田豊雄さん(※)や神村幸子さん(※)たちが集まり、2007年10月に発足しました。私はそれをYahoo!ニュースで見ていました。その後、12月頃に思い出して公式サイトを見ると、「アニメーターの機会損失を減らし収入を上げるため、人材派遣や職業紹介をしたらよいのでは」というようなことが書いてあったんです。よいアイデアだと思ったのですが、職業安定法というものがあるから、無償でも手続が必要なことを知らないだろうなと、老婆心ながらメールを送ったんですね。それを機に法律相談などを受けるようになりました。当時私は大阪にいて、2008年1月に東京出張の時にお会いして、手伝ってくれと言われたのがJAniCA参加のなれそめです。

※芦田豊雄さん。アニメーター、アニメ監督。代表作「魔法のプリンセス ミンキーモモ」「魔神英雄伝ワタル」など
※神村幸子さん。アニメーター。代表作「ルパン三世 PartIII 」「機動戦士ガンダムΖΖ 」「ブラック・ジャック」など


―――そもそも桶田さんがアニメに興味をもったきっかけというのは?

高校生から大学1年生くらいまで、いわゆる純粋なオタクだったんですよ。今はそうじゃないというわけではなく(笑)。当時はパソコン通信全盛期で、ニフティサーブでボードリーダー(特定の電子会議室における司会進行役)をやっていたり、コミックマーケットのサークル参加も6~7回くらいしているし、アニメは私の青春時代の大きな部分を占めていました。その後、司法試験を受けるに際し時間もなくなり、アニメから遠ざかっていたけれど、ふと先ほどのニュースを見た時に「アニメーションにはお世話になったな」と懐かしく思い出したわけです。


プロジェクトの成果と課題


―――4年間のプロジェクト、そこから生み出された計16作品を振り返って、人材育成の手応えは実感されていますか?

大きく手応えを感じたのは3年目ですね。1~2年目は実行するので精一杯でしたが、3年になって、参加者のその後を追跡調査しました。結果、2年目までの若手原画の参加者55人について、3人程度しか離脱していなかったんです。しかも結構な割合の人たちが、劇場アニメやテレビアニメの作画監督をされるなどキャリアアップしていました。

離職率について物差しとなるようなデータはありませんが、2008~2009年にかけて、700人以上のアニメーターを対象にした実態調査では、どうやら3~5年で8割以上が離職してしまうようだとの現実がありました。このプロジェクトで育成の対象としている「若手原画アニメーター」は「アニメーター歴3年未満」くらいとしていたので、それと比較して9割以上が業界に残っているのは、手応えを感じましたね。


―――公募で選ばれたアニメ制作会社が、それぞれ与えられた制作費をマネージメントするのですか?

半々ですね。1作品あたり3,800万円の予算が割り当てられていますが、そのうちの一定額は用途を限定しているんです。たとえば、監督には月収40万、動画は1枚400円、原画1カット平均2万円、この基準単価を割り込まないでという規定を作っています。あと作画監督には30万円、そこに指導料として30万円プラスするなどの制限をつけています。人材育成事業として、宮崎駿監督や高畑勲監督が育ったという“東映動画時代”を再現しようというのがキーコンセプトなんです。

“東映動画時代”について、いろいろと論文を調べた結果、当時の監督から動画までチームが一堂に集まって、ケンカしたりしながら喧々諤々(けんけんがくがく)とやっていたことに意味があったようだと。30分という短い作品だけど、制作の4か月間はこれと同じ環境を強制再現しようということになったんです。監督や作画監督などのリーダーには、作品を作ることだけ意識するのではなく、教え方のスキームも提示をする、これに準拠してくださいと。今は作品の掛け持ちも多いので、若手アニメーターの手元には、へたすると修正やリテイクも戻ってこない。となると、彼らは自分の仕事について何が悪かったのか見ないまま、分からないままに終わってしまう。ダメ出しがないと育成にはならないですよね。そこで、教える側には“教える”ことについて別報酬をお渡しし、意識を変えていこうと思ったんです。アニメーター育成以外のことに関しては、市場に過度に介入することになるので、なるべく各社のご判断にお任せするようにしています。


―――このプロジェクトの規定値は、現状のアニメ業界では実現できていない数値ですよね。

そうですね。このプロジェクトでは動画1枚400円という単価ですが、現在のテレビシリーズでは1枚180~200円くらいじゃないでしょうか。1カットは2万円ですが、テレビだと4,000~4,500円くらいかなと。動画は、ひと月500枚くらい描けると1人前と言われているけれど、1枚200円だとすると10万円。ほとんどが社員雇用されていない請負いなので、作業場などの管理手数料を引かれて、手取りが7~8万円。原画にしても、難しいカットや、やさしいカットがあり、かかる時間もさまざまなのに均一単価ということに問題もあるのですが。カットは月に25~30上げられると1人前だけど、それでも十数万。有能な原画さんには、カット単価とは別に拘束料などの名目で支払いがあるケースもあります。


―――若手アニメーターの離職の理由は、労働環境・賃金の問題がやはり大きいですよね。

大きいと思います。実家から通えるか、親から仕送りがもらえるかなど、この業界の就職面接では聞かれることもあるそうです。


―――このプロジェクトを経た制作会社は、その後の自社の労働環境を改善する方向に動いているのでしょうか?

そういったモニタリング作業や評価もできたら理想的だと思いますが、実際には作品ごとの予算やスケジュールがあるので、たとえ各社にその様なお考えがあっても、直ちに全てを再現するのは難しいでしょうね。こちらとしてできることは、制作モデルを提示して、プロジェクトの中で強制体験してもらうこと。体験したスタッフがこれでよかったなと思えれば、条件が許す限り、プロジェクトの経験も踏まえて工夫いただけるであろうと期待しています。5~10年くらいのスパンで見ていかないといけないですね。


―――制作会社だけの問題でなく、業界構造全体の問題ですよね。たとえば、広告会社の“中抜き”なども大きな問題なのでしょうか?

それは今や“都市伝説”だと思います。スポンサーモデルだった時代は、スポンサーがあり、広告代理店やテレビ局があって、仕事を受ける制作会社があった。でも現在は、この“従来方式”で制作されているテレビ作品は少ないと言われています。今だと「サザエさん」「ちびまる子ちゃん」「クレヨンしんちゃん」など、昔だと「ハウス世界名作劇場」みたいなケースがこれに該当するとされているようです。今制作され、深夜帯に放送されている多くの作品は、逆に製作委員会が放送局に“波料”(番組を放送するための料金)を払うんです。番組の枠を買い、コンテンツであるアニメを放送する。アニメで得た人気でDVDなどアニメ作品に関する商品を売って収益を得る構造なので、“波料”が高いという議論はあるかもしれないけれど、そうなると話は大きく、アニメだけに限らない話になります。


―――応募された企画の選定についてですが、やはり1回のプロジェクトで選ばれる4本の作品がジャンル的に偏らないような構成にしているのでしょうか?

私は選定判断に関わる立場ではないですが、アニメーターの育成が大前提だと思います。その上でお話しすれば、選定・評価委員の方々は、4本のバランス感も検討の要素には入れておられるようです。

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