「機動戦士ZガンダムII 恋人たち」、モビルスーツの身体表現とコクピットの使い方【懐かしアニメ回顧録第81回】

2021年08月15日 11:000

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前回の当コラムでは、富野由悠季氏が総監督を務めた劇場アニメ「機動戦士Zガンダム 星を継ぐ者」(2005年)の休憩室のシーンに着眼した。今回は、「機動戦士Zガンダム」の劇場版第2作である「機動戦士ZガンダムII 恋人たち」(2005年)に触れてみよう。
「恋人たち」は、主人公カミーユ・ビダンやシャア・アズナブル(本作ではクワトロ・バジーナ)の所属するエゥーゴと敵対組織ティターンズの紛争に、旧ジオン公国の残党である第三勢力・アクシズが介入するところで幕となる。ラスト近く、アクシズを統べるハマーン・カーンの初登場シーンが、テレビ版から大きく描きなおされている。詳細を見てみよう。

モビルスーツ内のパイロットを描くには、3通りの方法がある


映画の終盤、シャアはモビルスーツ・百式でティターンズの戦艦ドゴス・ギアを撃沈しようと試みるが、作戦はうまく行かない。そんな中、Zガンダムに乗ったカミーユは、強敵ヤザン・ゲーブルに襲われる。あわやというタイミングで、アクシズのモビルスーツ・ガザCの大部隊が戦場に現われて、ティターンズ側のモビルスーツを撃退する。
ドゴス・ギアが後退した後、白いパーソナルカラーに塗られたガザCに乗り、ハマーン・カーンはエゥーゴのパイロットたちと会話する(以下の「カットイン」とは、モビルスーツの絵にコクピット内の画面を三角形のフレームで重ねて、どのキャラクターが乗っているかを示す演出のこと)。

(1)ガザCの胸のカメラが動き、顔面のカメラへPANする。顔面カメラが緑色に光る。
(2)エゥーゴのモビルスーツ、リック・ディアスにガザCが近づく。
ハマーン(マイクを通した声)「そして、これがリック・ディアスか」
アポリー(カットインで顔が入る)「そ、そうだ。アポリー・ベイが操縦している」
ガザC、画面左へ移動する。カットイン画面の中のアポリーは、それを目で追う。
(3)ガザC、Zガンダムの前に来て、その胸をこぶしで軽く叩く。
ハマーン「機体がよく持ったな、ガンダム」
カミーユ(カットインで顔が入る)「Zガンダムと言います」
ハマーン「若いな、少年」
(4)Zガンダムのコクピットが開いて、カミーユが出てくる。
カミーユ「カミーユ・ビダンと言います」
ハマーン(画面外から)「正規兵ではないのだろう?」
カミーユ「はい」
(5)カミーユの後頭部ごしのガザC、ゆっくりと画面右へ移動する。
(6)百式へ近づくガザC。
ハマーン「それが百式か」
台詞にあわせて、ガザCの頭部カメラが緑色に点滅する。
シャア「そうだ」
百式の目の部分が、台詞にあわせて赤く光る。
ハマーン「ようやく迎えに来ることができた。同道していただく」
(7)ガザCのコクピット内のハマーン。
ハマーン「……シャア」
ハマーン、右手を頭のあたりに上げる。
(8)ガザC、銃をもった右手を掲げて、ゆっくりと画面奥へ向かう。

胸と頭部、2つのカメラアイを持つガザCが威圧感をかもし、さらに(7)~(8)にかけてハマーンとガザCの右手のアクションが連動することで、モビルスーツの身体性が強調される。
このシーンでのハマーンの台詞は、ガザCの発するマイクを通じた音声がほとんどである。唯一、(7)ではコクピット内のハマーンを映しているため、生の声だ。モビルスーツとパイロットを同時にシーンに入れたい場合、3通りの方法が使われていることがわかる。まず、(2)や(3)のようなカットイン。次に、(7)のようにカットそのものを切り替えて、コクピット内のパイロットを生で映す。そして、(4)のように「コクピットハッチが開いてパイロットが出てくる」描写。
実は本作の前半では、モビルスーツのハッチを開いてパイロットの出てくる描写に、かなりの重点が置かれている。それは、カミーユがティターンズの女性パイロット、フォウ・ムラサメと心を通わせるシーンだ。

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(C) 創通・サンライズ

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