【懐かしアニメ回顧録第7回】小学1年生の感じた背徳と困惑! 元祖サイボーグ美少女アニメ「キューティーハニー」に漂う昭和のドキドキ!!

2015年06月13日 10:000

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ベテランライター・廣田恵介氏が、日本アニメの黄金期や衰退期を気ままに語る「懐かしアニメ回顧録」。当時を知る旧世代、まったく知らない新世代ともに、過ぎ去った時代の空気を仲良く味わおう。さて、6月20日から「攻殻機動隊 新劇場版」が公開される。「少佐」こと草薙素子は、全身義体のサイボーグ・ヒロインだ。セクシーな元祖サイボーグ・ヒロインといえば、もちろん「キューティーハニー」(1973年)! 後に女児向けの「キューティーハニーF」(1997年)や、アニメマニア向けの「Re:キューティーハニー」(2004年)、OVAや実写映画・ドラマも制作されたが、もっとも常識破りだった1973年版をクローズアップ!



最初に話しておくと、僕は一時期、ゲーム会社に所属していたことがあって、仕事ととして「キューティーハニー」のパチンコ制作に関わっていた。1973年版から「F」、すべてのバージョンを見直して、パチンコの液晶画面に映える演出を考えた。自分なりのこだわりは、「男性キャラを出さずに耽美的な世界に徹すること」。男の戦闘員は出さず、シスター・ジルとのバトルを主にした。「美女vs美女」の構図で、全体から色気が漂う演出にしたわけだ。でも、パチンコ発売のころには僕はリストラされていたので、結局は男の戦闘員も追加されてしまったようだ。それではイカンのだ。ハニーをスケベ目線で見ている団兵衛や順平、オープニングでボインに触っていた青児さんの存在は、僕の中ではじゃまだった。ハニーによこしまな気持ちを抱くのは、“僕たち自身”。劇中での男女の関係性は不要と感じており、その手前勝手な信念は、本放送時の小学1年生のころも、パチンコ企画に関わった30代のころも変わらなかった。

「ハニーへのスケベ心は、自分の中にもっとも強くある」という信念(雑念)は、たとえば、親戚の叔父さんの家に泊まり、いっしょに「ハニー」を見ているときに胸に沸きおこった。ヒョウの檻に閉じ込められたハニーが、後ろから噛みつかれて、お尻が丸見えになってしまうシーン。「エッチなアニメだね、こりゃ!」と、叔父さんが笑う。僕も内心ではうれしかったんだけど、「俺のスケベ心は俺だけのもの、叔父さんと共有すべきではない」と、リアクションを返さなかった。毎週毎週、ハニーが全裸になる変身シーンに興奮しているくせに、「大人に気づかれては水の泡」という気持ちがあった。今にして思うと、罪悪感だったのかも知れない。同時期、「ドロロンえん魔くん」(1973年)の放送がスタートし、雪子姫というヒロインの入浴シーンが、たまにあった。そのシーンがあると、「よし、今週はアタリだ!」と親指を立てたくなるんだけど、それが親にバレたら、次週から見せてもらえなくなる気がしていた。小学1年生は、その程度にはスケベだし、背徳感もあったし、狡猾でもあった。同じ1973年に「ドラえもん」が初アニメ化された(ドラえもんの声は、富田耕生さん)。そのバージョンでは、しずかちゃんの入浴シーンはなかったと記憶する。やっぱり、入浴のためよりも、「変身するために仕方なく」「しかし堂々と」「ためらうことなく積極的に」ヌードになるところが、ハニーならではの魅力だった。胸の谷間の見えるセクシーなコスチューム(ピンクと黒の配色が、またイカす)で、勇ましく剣で戦うクールさ、あえて無防備な姿を敵にさらす倒錯美も、小1ながらに理解していた。人生で初めて出会った「大人の女」だった。

少女向けの「キューティーハニーF」には百合要素がからみ、OVAの「新キューティーハニー」「Re:キューティーハニー」は、エッチさを噛んで含めてわかっている大人から大人へ、目くばせするようなアニメだった。その「意図が透けて見える気恥ずかしさ」は、実写映画やドラマ版も同様で、「君ならわかるでしょ?」「これでいいんだよね?」と、同級生から肩を叩かれたような気分になってしまう。無論、僕が歳をとったせいもある。小学1年生で「オッパイが見えるか見えないか?」という即物的なドキドキにプラスして、オープニングではドレス姿のハニーが、ネックレスを引きちぎられる……という暗喩的なエロスまで見せてもらったので、その時点で、「アニメから受けるエッチさ」のボトルが満タンになってしまったのだ。後から何か見せられるたび、ボトルの容量を増やして「あ、これも悪くないですね」と、無理に受け入れているような状態。

 

だから、エッチな要素にかぎらず、自分の受け入れられるボトルの容量を「あれも、これも」と広げているのは、それだけ、歳をとった証拠なんだろう。「まだまだ足りない」「まったく満たされない」という飢餓状態が、好ましいように思う。何に対しても。

  

(文/廣田恵介)

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キューティーハニー

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放送日: 1973年10月13日~1974年3月30日   制作会社: 東映アニメーション
キャスト: 増山江威子、富田耕生、森功至、沢田和猫、吉田理保子、つかせのりこ、渡辺典子、北浜晴子、津田延代、山本圭子、中西妙子
(C) ダイナミック企画・東映アニメーション

Re:キューティーハニー 1

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発売日: 2004年9月21日   制作会社: 東映アニメーション
キャスト: 堀江由衣、野田順子、石川英郎、伊倉一恵、上村典子、金月真美、冬馬由美、清川元夢、島田敏、小松由佳、金田朋子、杉山佳寿子、田中和実、中尾良平
(C) LATERNA・東映ビデオ・ガイナックス・トワーニ 原作: (C) 永井豪/ダイナミック企画

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