アニメ「ゲッターロボ アーク」はあえて泥臭いキャラで! ベテランアニメーター本橋秀之が、ロボット物の熱い息吹を令和の今に伝える【アニメ業界ウォッチング第81回】

2021年09月05日 12:000

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その場のノリよりも、子弟と仲間の「タテとヨコ」の結束が重んじられた時代


── 「六神合体ゴッドマーズ」のころには、もうスタジオZ5を設立していましたよね?

本橋 その前に、4年間お世話になった荒木プロダクションを退社し、スタジオZというスタジオに入りました。ところが、入って1か月後にスタジオZは潰れてしまいます。亀垣一くん、平山智くんと「これからどうしようか?」と相談して、新しく設立した会社がスタジオZ5です。なぜZ5なのかというと、僕らの入った代でスタジオZは4代目で、その跡を継ぐ5代目という意味なんです。ところが驚いたことに、スタジオZの初代代表が荒木伸吾さんだったんです。それまで、まったく知りませんでした。荒木プロを辞めてから1か月ぐらいなのに、すぐまた荒木さんのところに出向いて、「5代目を継がせてください」とお願いに行くことになりました。

── 気の合ったアニメーターたちが、ノリノリでつくったわけではなかったんですね?

本橋 当時はノリなんかよりも、タテとヨコの師弟関係がとても強い時代でした。それで、荒木さんに「5代目を継がせてください」と土下座してお願いしました。

── 怒られましたか?

本橋 いいえ、怒られはしませんでした。「恥ずかしいものはつくるな」とだけ言われました。のちに、それまでのスタジオZの同窓会がありました。総勢60名ぐらいの大先輩の方々に集まっていただいて、そうそうたる顔ぶれの会になりました。あらためて、すごく伝統のあるスタジオなんだと実感しました。大塚康生さん、安彦良和さんもいらして、そうそうたる顔ぶれの会になりました。僕は当時40代でしたけど、「お疲れ様です!」と、先輩たちに大声で挨拶する世界でした(笑)。「こんなにタテヨコで結束したスタジオは、Z5が最後じゃないかな」と言われていましたね。何しろ、夜中の3時に「本橋、今から来い!」と電話で呼び出されるのが当たり前でしたから。スタジオZ5は26年ほど続きました。現在は僕もいい歳になっていて、もう怒ってくれる先輩たちもいなくなってしまいましたね。


── しかし、本橋さんは2003年にXEBEC M2というスタジオに、プロデューサーとして招かれますよね。

本橋 「プロデューサーをやってみないか」と誘われ、自分としても新しい仕事をやってみたい時期だったので、その申し出を受けることにしました。何事も、やってみないとわかりませんから。

── XEBEC本社からすれば、M2はどういう存在だったんですか?

本橋 支店のような感じですね。それまでの僕はアニメーターとしてずっとやってきていて、ようするに作画しかアニメの工程を知らなかったわけです。M2では、動画・仕上げ・演出・絵コンテなど、作画以外のセクションも知っておきたいという気持ちがありました。当時のアニメ業界は、原画・動画や作監の仕事は国内、仕上げを海外に頼っていました。XEBEC M2は、やはり作画にこだわったスタジオにしたい。ですから、背景と撮影のみ外注で、それ以外はなるべく社内でまかなうように努めました。

── 新人スタッフを育成する意味もあったのでしょうか?

本橋 スタッフを育てて、会社全体で進めていく体制をつくるつもりでした。だけど、プロデューサーとして招かれた身としては「これは大変なところに来てしまったな……」と思いました。まさか、企画の段階からすべて自分で関わることになるとは、さすがに予想していませんでしたから。

── たとえば、XEBEC M2の制作した「ひとひら」(2007年)で、本橋さんはアニメーションプロデューサーと総作画監督を兼任していますね。

本橋 そうです。プロデューサーと総作監を兼ねるのは、とても都合のいいことなんです。作画的に間に合わないところは自分が引き受ける、という態勢でしたね。リテイクや修正も、すべて自分のところで処理していました。XEBEC M2のころは、それこそ寝る時間を削って作監作業をしていました。だけど、M2が解散してからは、少し自分の考えが変わりました。作画監督やキャラクターデザインの仕事はなるべく断って、少しでも多く原画を描くようにしました。50歳をすぎていましたが、アニメーターとして再出発です。

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