「作って終わり」ではなく、「学べる教材」としてプラモデルの可能性を掘り起こす——BANDAI SPIRITSが、マンモスをプラモ化する理由【ホビー業界インサイド第77回】

2022年01月29日 11:000
(C) BANDAI SPIRITS

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アニメ作品などの人気キャラクターのプラモデルだけでなく、たとえばカップヌードル(https://akiba-souken.com/article/46670/)のような意外性の高いモチーフもプラモデル化するBANDAI SPIRITS。この2022年2月に発売される「エクスプローリングラボネイチャー マンモス」は、誰もが知っている古代生物・マンモスのプラモデルだ。ただのプラモデルではなく、骨格の上から被せる毛皮のパーツは、普段は乳白色に近いが、冷蔵庫・冷凍庫で10℃以下に冷やすと、生き返るかのように茶色い色が浮かび上がるという。
それだけならアイデア商品の域を出ないが、このプラモデルは(株)学研プラスとのコラボによって、子どもたちが楽しく学べる教材として、真摯にコンセプトが練られていた。企画担当の染谷潤さんに、詳しいお話をうかがった。

静岡ホビーセンターからの新素材の提案、それをふくらます企画チームの発想


── 今回のマンモスは、温度によって色が変わる新素材がキーですね。素材から企画を考え付いたのですか?

染谷 静岡のホビーセンターから「温度変化で色の浮き出てくる素材があるんだけど、何かに使えないかな?」と相談がありました。もともとは、温かい飲み物をカップに注ぐと文字が浮き出してくるなど、印刷の分野で使われていた素材のようです。

── 美少女キャラの肌を成形技術のみで表現した「Figure-rise LABO」も、ホビーセンターからの提案で始まった企画だと聞いています。

染谷 Figure-rise LABOはキャラクター性だけでなく、「工場でこんな加工ができるけど、使い道はない?」と相談されて、プラモデルの進化と素材感を重視して企画を考えていました。「エクスプローリングラボネイチャー」の場合、冷やして浮き出てくる色の調整が難しく、今回であれば茶色ですね。この樹脂は、版権モノのキャラクタープラモには向かないと思いました。また、市場には動物や恐竜の完成品フィギュアは数多く出ていますが、何かひとつプラモデルならではの表現があれば、既存製品と差別化できるのではないかと考えました。そこで、氷河期に入ったマンモスが骨格から復活するというコンセプトにたどり着きました。


── 完成品ではなく「組み立てる」過程が、プラモデルの強みですね。

染谷 私自身、プラモデルが趣味で、組み立てていると勉強になると感じていました。ガンプラにしても、自分の手と指で組み立てるからこそ、1つひとつのパーツに着目し、組み立てている時間にさまざまな気づきや学びがあります。そこから、プラモデルを組み立てる行為は教育的なジャンルに繋がるのではないか……と考えました。お子さんがひとりで買うのではなく、お母さんが子どもに図鑑を買い与えるような、教育的な方向へ比重を置いたプラモデルがあってもいいのではないか。それも、企画の発端です。完成品のように買って終わりではなく、組み立てる時間そのものに価値を見出してもらえれば、プラモデルに教育的な価値を持たせられると思ったわけです。

── 昨年、LIMEXという素材を使った「恐竜骨格プラモデル」シリーズが発売されましたね。

染谷 LIMEXは石灰岩を混ぜて、今までにない手触りのプラモデルになりました。化石だから石で作りました、というアイデア商品ですが、「次はどんな素材を試すんだろう?」と、新しい素材に興味を持ってくれるコアなプラモデル好きな方たちの存在も意識しています。

── 今回の「エクスプローリングラボネイチャー マンモス」は税込1,650円ですが、子どもでも買いやすい値段ではないでしょうか?

染谷 むしろ、親御さんがお子さんの教育によさそうだな、と買ってあげられる値段ですね。新素材を使っていますので、1,650円はチャレンジングな価格設定です。

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