ホビー業界インサイド第23回:美少女フィギュアか伝統工芸か? 永島信也が彫る“美少女根付”は、どこへ向かう?

2017年05月21日 12:000

※本コンテンツはアキバ総研が制作した独自コンテンツです。また本コンテンツでは掲載するECサイト等から購入実績などに基づいて手数料をいただくことがあります。

「根付」といえば、江戸時代に庶民に愛された木製や象牙製のアクセサリーで、現代でも国内外に熱心なコレクターがいる。そのモチーフは動物や七福神など、江戸文化に根ざした古典的なものが多い。ところが、根付作家の永島信也さんの作品は、アニメやゲームに出てきそうな美少女キャラクターが多い。むっちりしたボディラインや、凛とした顔つきはフィギュアとしても通用しそうなクオリティだ。
現在は根付作家として経済的に自立し、仕事の合間にゲームやマンガで休息をとっているという永島さん。一体、どのような経緯で美少女キャラの根付を彫って生活するようになったのだろう? 年に1度、個展を開いている「Gallery 花影抄」(東京・根津)にて、お話をうかがった。


木彫りフィギュアの制作過程を、ニコ動で配信!


── 京都造形大学の彫刻科を卒業してらっしゃるんですね。

永島 ええ、小さいころから、絵よりも粘土などで立体を作ることのほうが好きでした。大学の授業では普通の彫刻を学んでいましたが、休み時間には自分のデザインしたアクセサリーのようなものを勝手に作っていました。その当時から、今と変わらず、木を彫っていました。

── なぜ、木を素材に選んだのですか?

永島 中学時代、ルアー作りを始めたことがキッカケです。釣りが趣味で、ルアーを自分で作れると知って、ハウツー本を手にしたのが最初でした。道具をそろえて木を彫ってみると、すぐに自分にピッタリだとわかりました。それ以来、ずっと木を彫っています。


── 根付とは、どういう出会い方をしたのでしょう?

永島 大学のとき、何となく根付というジャンルがあることは知ってはいました。ぼんやりと、就職はアクセサリー系かジュエリー系だろうと考えていました。京都に、清宗根付館という根付の美術館がありまして、その美術館がここ(Gallery花影抄)と取引していたんです。花影抄の方が京都へ来たときに、自分の作っていた木彫りのストラップを見せて、少しずつギャラリーで販売してもらうようになりました。そこそこ売れたので、「本格的に根付を作ってみましょうか」という話に発展したわけです。

── 大学のときに作っていたアクセサリーも、美少女モノだったのですか?

永島 美少女というか、女の子がモチーフでした。女の子の形のフィギュアというか、木製のオブジェのような物ですね。


── 美少女フィギュアには、もともと興味があったのですか?

永島 いえ、人体にはそれほど興味はありませんでした。大学で塑像の授業があって、自分で人体を作ってみたら、意外に面白い。だけどリアル系よりも、自分の理想とするかわいさが入ったほうがなじみやすい。特に、顔ですね。自分の好みの顔を造形する面白さに、目覚めました。それと当時、ニコニコ動画で、造形過程を配信していたんです。「作ってみた」風に。そういった文化もひっくるめて、形を作ったり、作ったものを公にするのが面白くなっていきました。フィギュアも面白いし、二次創作も面白いし……。

── すると、ニコ動を見てくれるファンの人の視線も意識して、美少女的なモチーフに落ち着いたのでしょうか?

永島 そうですね。最初は「東方Project」のキャラクターを作ったんです。ほかの材料で作っている人がすでにいたので、自分の得意な木彫りでやってみたら、まあまあ受けて、自分も楽しかったんです。それ以降はオリジナルのキャラクターを作ってきましたが、根付の世界には人物を彫っている人があまりいないことに気がつきました。需要はあるんだけど、作っている人が少ない。それなら、自分でも食い込めんじゃないかと思いました。もちろん、女の子のキャラクターを彫るのは好きだったし、いろいろな要素が噛み合って、現在に至ります。

画像一覧

ログイン/会員登録をしてこのニュースにコメントしよう!

関連リンク

※記事中に記載の税込価格については記事掲載時のものとなります。税率の変更にともない、変更される場合がありますのでご注意ください。

関連記事