金型を管理し、売れ筋アイテムを読む……童友社が、40年前の「太陽の牙ダグラム」のプラモデルを完全復刻するまでの苦労とは!?【ホビー業界インサイド第72回】

2021年07月17日 11:001

※本コンテンツはアキバ総研が制作した独自コンテンツです。また本コンテンツでは掲載するECサイト等から購入実績などに基づいて手数料をいただくことがあります。

お城や神輿などのプラモデルで知られる東京下町の老舗模型メーカー、童友社だが、この夏、放送40周年を迎えるロボットアニメ「太陽の牙ダグラム」(1981年)から、10種類のキットを詰め合わせた「40周年記念コレクターズボックス」を発売するという。
そう、童友社のもうひとつの顔は「キャラクタープラモデルを復刻する会社」である。今回発売のコレクターズボックスに収められるのは、かつて日東科学(現在は廃業)から発売された低価格プラモデルだ。40年前の他社のプラモデルを復刻する意図、その裏に隠された苦労を童友社・代表取締役社長の内田宗宏さんに、うかがってみた。

3度目の再販、その理由は「ゆっくり時間をかけて市場からなくなる」ため?


── 今回発売される「太陽の牙ダグラム 40周年記念コレクターズボックス」ですが、過去にも同様の製品を販売したことがあるそうですが?

内田 はい、このボックスセットを販売するのは3度目です。最初は、「ダグラム」放送30周年のときです。なかなかサンライズさんから許可が下りず、どういうことだろうと思っていたら、「どうせ発売するなら30周年に合わせてほしい」という意図だったんです。2度目はそれから3~4年たった頃で、ちょうど30周年記念ボックスが市場からなくなった時期です。


── 2度目の復刻は、特に何周年というタイミングではなかったわけですね。「また売ってほしい」という要望が、周囲から来るんでしょうか?

内田 小売店や問屋を回っていると、「また日東科学のダグラムを復刻してみたらどう?」と声をかけられるんです。だけど、それがひとりだけだったら、担当者がたまたま「ダグラム」の熱狂的ファンというだけかも知れない(笑)。A商店の誰さん、B商店の誰さん……と、ジャンルも地域も店の雰囲気も違う複数の担当者に言われてから、あらためて売り場を見てみると、確かに店頭に置いていない。それでようやく、「また日東さんのダグラムを再販するタイミングが来たのかな」と思えるんです。

── 逆をいうと、何年間かは売り場に残っているわけですね。

内田 童友社のプラモデルは、時間をかけてゆっくり売れる傾向にあります。大手のフィギュアメーカーなどは雑誌やネットで派手に宣伝して、一気に初回生産分を売り切りますよね。弊社の場合、宣伝にお金をかけておらず、告知が行き届かないので、売り場に来て初めて再販されていたことを知るお客さんもいるようです。毎週のように量販店の模型売り場に通う人だけでなく、半年に一度ぐらいしか足を運ばない人もいます。そういう一般のお客さんにも届く、半年後でも買える商品なんです。

── それはやはり、「ダグラム」というコンテンツの息の長い人気ゆえというか……。

内田 人気ももちろんですが、安心感があるんでしょうね。「童友社の製品なら、すぐにはなくならないだろう」「まだ少し持ってるんじゃない?」と思ってもらえているみたいです。

── ボックスセットの中身は、ずっと変わっていないのですか?

内田 はい、毎回同じです。箱や説明書は日東科学時代のものをスキャンして、なるべくそのまま復刻しています。そのせいで、今は販売していない「ダグラムカラー」で塗装する指示が残っていたりしますが、それらは外箱に注意書きを入れています。


── 中の箱は「日東科学」のままだけど、外箱は「童友社」なのが不思議な感じです。

内田 このボックスセットは、童友社の製品です。だけど、お客さんが求めているのは、飽くまでも日東科学さんの製品なんです。「童友社? どうせまたどっかの型を使って復刻するんでしょ?」「元のメーカーから出ていたころの箱、まだ持ってるよ」とか、そういうマニアックな話は、お客さん同士でしたほうが楽しいじゃないですか。「どうせ童友社だから」と言ってもらえるので、立場はわきまえているつもりです(笑)。

画像一覧

関連作品

太陽の牙ダグラム

太陽の牙ダグラム

放送日: 1981年10月23日~1983年3月25日   制作会社: サンライズ
キャスト: 井上和彦、田中亮一、銀河万丈、山田栄子、梨羽侑里、緒方賢一、鈴木清信、千葉繁、小宮山清、宮内幸平、仁内達之、蟹江栄司、屋良有作、高島雅羅、川浪葉子、山内雅人
(C) サンライズ

鎧伝サムライトルーパー

鎧伝サムライトルーパー

放送日: 1988年4月30日~1989年3月4日   制作会社: サンライズ
キャスト: 草尾毅、竹村拓、中村大樹、佐々木望、西村朋紘、渡辺久美子、日下部かおり、笹岡繁蔵、梁田清之、二又一成、松本保典、小杉十郎太
(C) SUNRISE

獣神ライガー

獣神ライガー

放送日: 1989年3月11日~1990年1月27日   制作会社: サンライズ
キャスト: 田中真弓、沢りつお、松井菜桜子、伊藤美紀、塩屋浩三、藤井佳代子、神代知衣、有馬端香、梁田清之、勝生真沙子、島田敏、戸谷公次、中村秀利、速水奨、堀内賢雄、こおろぎさとみ、池田勝
(C) 1989 永井豪/ダイナミック企画・サンライズ

太陽の勇者ファイバード

太陽の勇者ファイバード

放送日: 1991年2月2日~1992年2月1日   制作会社: サンライズ
キャスト: 松本保典、伊倉一恵、岩坪理江、永井一郎、勝生真沙子、笹岡繁蔵、神代知衣、坂東尚樹、巻島直樹、辻谷耕史、戸谷公次、塩屋浩三、滝口順平、郷里大輔、島香裕、梁田清之
(C) サンライズ

ログイン/会員登録をしてこのニュースにコメントしよう!

コメント(1)
ソウキソウキ2021/07/18 14:30

素敵ですね。 バンダイなどの手軽に作れる創意工夫も正直人類の叡智として尊敬していますが、模型は素材・叩き台ですからね。本腰入れて作りたい作品なら切った貼ったで原型を留めないかも知れません。 それにバリがいっぱい出るということは、メーカーさんは余計にスチロール樹脂を使っているということで、それだけ損しちゃってるとも言えるわけで。

※記事中に記載の税込価格については記事掲載時のものとなります。税率の変更にともない、変更される場合がありますのでご注意ください。

関連記事