ホビー業界インサイド第15回:株式会社アイジェットに聞く、3Dプリントサービスとの“賢いつきあい方”

2016年09月24日 12:000

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個人製作のフィギュアでも、デジタルツールによる3Dモデリングがめずらしくなくなってきた。だが、エンドユーザーが手にする立体物は、あいかわらずPVC製の完成品やレジン製キットなどが大半だ。3Dプリンターによる出力品は、そのまま商品として販売できないのだろうか?

企業向けの3Dスキャン、3Dプリントサービスを主な業務とする株式会社アイジェットは、フルカラー樹脂によるキャラクターフィギュアの制作にも意欲的だ。アイジェット代表の久米原勝さんに“個人と3Dプリントとのつきあい方”を聞いてみた。


3Dプリント可能なデータは、世の中に少ない


──3Dプリントを業務にしたのは、いつ頃なのでしょう?

久米原 2009年に3Dプリンターを1台購入し、「3Dデータを送っていただければ、出力してお届けします」というシンプルなサービスから始めました。ところが、世の中には立体にして出力することのできる3Dデータが、とても少ないと気がつきました。3Dデータそのままでは、出力できないわけです。そこで3Dスキャナーを作ったり、データ制作のサービスを始めました。アウトプットだけではなく、インプットも同時にやらないとビジネスにならないからです。現在は、イラストでもポンチ絵でも持ってきていただければ、出力可能なデータを制作することができます。

──ということは、社内に3Dモデラーがいるわけですね?

久米原 はい、モデラーは9名います。それと、3Dスキャナーは高価なので、社内で開発しました。人物用で、50秒でスキャンが完了します。

──アイジェットさんの場合、キャラクター物のフィギュアも3Dプリントしていますよね。そういった物は、社内でモデリングしているのですか?


久米原 社内でも出力データをつくりますし、お客様が、版権キャラクター、たとえばゲームキャラのデータを持ち込まれる場合もあります。しかし、ゲームのデータはモニターで見るためのものですから、出力に最適化させるため、データ修正が必要です。 また、プリンターによって薄く出力できたり、薄く出力できるけど折れてしまうなど、それぞれ特性があります。弊社は、プリンターごとに3Dデータを調整するノウハウにはたけています。

──企業から出力を頼まれるフィギュアなどは、販売用なのですか?

久米原 そのまま販売するのではなく、試作品であったり、量産・販売するための原型用だったりします。

──このせともののようなネコも、3Dプリント出力品なのですか?

久米原 これはプリントしたあとに、表面をコーティングしています。たとえ1億円の3Dプリンターを使ったとしても、完成品がそのまま出てくるわけではなく、最後は手で磨いて段差をなくしたり、アナログ的な工程が必要になります。もちろん、鑑賞目的ではない治具などを出力する場合は、仕上げの工程はいりません。


──この立体地図は、販売用なのですか?

久米原 はい、売っています。「3D Print Maps」という商品で、カーナビ用の地図データをゼンリンさんから提供してもらい、出力用に加工後、フルカラープリンターでプリントしています。価格帯はサイズによって9,800円から14万円ですので、個人で買われる方もいらっしゃいます。今、この「3D Print Maps」の東京全域を100分割して、好きなところだけ買えるプロジェクトを「Kickstarter」(キックスターター)で開始しようと準備中です。どちらかというと、海外ユーザー向けの企画ですね。


──3Dスキャンやプリントについて、個人からの依頼は来ますか?

久米原 個人のお客様は少ないです。もし来られる場合でも、3Dデータを自力で作れるプロ原型師さんですね。

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