プラモデルは、どこまでお手軽なホビーにできるのか? くまモンから軍艦島まで幅広く手がけるフジミ模型さんに聞いてみた!【ホビー業界インサイド第37回】

2018年07月28日 12:00

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プラモデルの聖地・静岡県で創業し、いまや70年近くの歴史を持つ模型メーカー、フジミ模型。かつては老舗らしく保守的なイメージを守っていたフジミ模型がここ2~3年、ソフト路線のプラモデルを連発している。熊本県のマスコットキャラクター「くまモン」を工具不要・接着剤不要のお手軽キットとしてプラモデル化。この夏は、「自由研究」シリーズとしてカブトムシやきょうりゅうを発売してライト層を振り向かせるいっぽう、1/3000スケールでマニア向けに展開してきた「集める軍艦」シリーズに突如として「軍艦島」をラインアップ。接着も塗装も不要な「艦NEXT」シリーズ、「車NEXT」シリーズも好調で、ありとあらゆる方位に向けて爆走しているのだ。
果たして、フジミ模型はどこを目指しているのだろうか? なぜこんなに元気なのだろう? 常務取締役の井上聡さんにお話をうかがった。

軍艦島のプラモデルが成立した、あまりにも複雑な経緯


── フジミ模型は最近、硬軟おりまぜたプラモデルを多数発売していますね。

井上 いわゆる昔ながらのスケールモデルと、東急ハンズやロフト、ヴィレッジヴァンガードに置いてあってもおかしくないライト層向けの「くまモン」や「ちびゴジラ」などのキャラクターモデル、主に2つの系統で展開しています。話題になった1/3000スケールの「軍艦島」は、その半々が混じったようなプラモデルです。ジオラマ作家さん、日刊鉄鋼新聞さんなどの業界紙、地元の長崎市さんからも反響がありました。


── 井上さんご自身、廃墟マニアとうかがったのですが?

井上 私は廃墟も好きですし吊り橋やダムも好きですし、ミリタリーなら陸海空なんでも好きなんです。軍艦島の企画についてお話させていただくと、最近、「大人の社会科見学」ツアーなどで工場などのインフラが注目されていますよね。「ダムのプラモデルはどうだろう?」という話をずっと社内にしてきまして、廃墟マニアの間で有名な厚木恵心病院や摩耶観光ホテルのプラモデルも提案してみました。しかし、社内のスタッフには、いまひとつ話が通じない(笑)。廃墟好きからすると軍艦島は王道すぎて、艦船でいうと戦艦大和みたいな存在です。ですが、世間一般の認知度は高いし、世界遺産にも登録されたので、「やってみようか」という話の流れになりました。

── なぜ、1/3000スケールになったのでしょう?

井上 実物の軍艦島の長さは400~500メートルぐらいなんです。模型としてちょうどいい大きさを検討してみて、「これぐらいの大きさが手頃じゃない?」と定まったのが、たまたま1/3000スケールだったんです。「1/3000 集める軍艦シリーズ」とぴったりです。もうひとつ、弊社には「建物シリーズ」というラインがあります。最近では「登呂遺跡」や「大浦天主堂」を出しています。ですから、建物シリーズに軍艦島をラインアップしてもよかったんです。しかし、こういう場合に問題になったのが「シリーズ」という概念なんです。軍艦島のために新しいシリーズを立ち上げるのか? だけど、こんな投機性の高いアイテムを新シリーズ第1弾にして、売れなかったら第2弾はどうしよう? かつてなら、真面目に「廃墟シリーズNo.1」にしたと思います。だけど今回は、スケールも同じだし「集める軍艦シリーズ」に入れてしまおうと決めました。だけど、No.99とナンバリングして、あくまでも洒落ということでボヤかしてあるんです。Twitterでのリアクションを見る限り、「軍艦じゃないけど“軍艦島”だから軍艦シリーズなのか、笑った」とユーザーさんにも受け入れていただけたようです。フジミ模型は、ユーザーさんに対しては常にフレンドリーですので(笑)。

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