編集者・柿沼秀樹氏が振り返る、ガンプラ大ヒットへ至るキャラクターモデル勃興の昭和史【ホビー業界インサイド第58回】

2020年04月25日 12:000

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今年は、ガンプラ(「機動戦士ガンダム」のプラモデル商品)が初めて発売されてから、ちょうど40周年となる。かつて模型誌「ホビージャパン」の編集者としてガンプラの大ブレイクに立会い、別冊「How to build GUNDAM」を編集した柿沼秀樹さん(「機甲創世記モスピーダ」「メガゾーン23」のメカデザイナーとしても有名)に、1980年のガンプラ発売へ至る昭和のプラモデル史を、独自の視点から振り返っていただいた。

ガンプラの遠い祖先、それは「鉄人28号」だった!?


── 柿沼さんと故・加藤智さん(バンダイ模型)との共著「バンダイ キャラクタープラモ年代記」学研/刊によると、日本最初のキャラクタープラモデルは今井科学(イマイ)の「電動・鉄人28号」(1960年発売)だそうですね。

柿沼 当時は実物を縮小したスケールモデルが主流で、キャラクターの商品化権を得てプラモデル化した商品としては、イマイのモーター駆動の「鉄人28号」が最初と言われています。1960年は実写ドラマ「鉄人28号」が放送されていたので、プラモデルは実写版の着ぐるみと原作にあたる漫画版が混じったような形で、決して出来はよくありませんでした。けれど出来のよし悪しではなくて、「雑誌やテレビに出ている人気の鉄人を自分の手で組み立てられる」ことが重要だったんです。僕も幼稚園のとき、イマイの「鉄人」を買ってもらって、本当に感動しました。1963年にテレビアニメが放映されると、爆発的な人気となりプラモデルが売れて、累計で500万個売れた、とも言われています。アニメ化されてからは、椅子からサンダルから、子ども向けのグッズに「鉄人28号」と刷られていれば、何でも売れていた時代です。イマイのプラモデルはそれらのキャラクターグッズに先んじて発売されていたわけですから、イマイは凄く進んだ模型メーカーでした。
スケールモデルで世界的に有名になった田宮模型(タミヤ)も、最初は木製模型を作っていて、プラモデルは欧米から舶来品としてやって来たんです。当時、子どもたちの間で流行っていたベーゴマやメンコなどに比べると、プラモデルという商品は“知的”だと言えるかもしれません。飛行機のプラモデルを買って、説明図を見て初めて「ラダー」「スピンナー」など、各部位の名称を覚えていくわけです。何なら飛ぶ原理も学ぶ。また、タミヤが1961年にパンサータンクのプラモデルを発売したとき、そのパッケージを小松崎茂さんが描きました。雑誌のカラー口絵などで大人気の本格的画家がパッケージを担当したのは初めてといわれていて、そういう意味でも文化レベルが高いですよね。海外の特撮番組「サンダーバード」(1966年放送)をイマイがプラモデル化したときも、やはり小松崎さんがパッケージを描きました。子ども文化の中では、トップレベルの文化水準ですよ。最初のプラモデルには、サンダーバード2号の原子炉の配置がわかる図解なども付属していました。ただ、大和や零戦などのスケールモデルが主流の業界では、「鉄腕アトム」「エイトマン」や「0戦はやと」など、漫画やアニメのプラモデルばかり販売しているイマイは「マンガ模型のイマイ」と呼ばれて、駄菓子屋のような扱いでした。


── イマイが、定価50円のマスコットシリーズなどを展開していた60年代ですね。

柿沼 そうです。50円とはいえ正規に版権をとった製品で、しかも漫画雑誌の裏表紙にカラーで広告まで掲載されていました。「漫画を読む、裏表紙の広告を見る、プラモデルを買いに行く」までの流れが完璧にできていたわけですから、イマイは子どもたちにとってはブランドですね。
漫画雑誌のプレゼントを企画して、顧客である子どもたちからアンケートはがきを集めるんです。さらに広告主でしたから、新連載の情報もすべて事前に入手できる、なんてほかの模型メーカー思いつきもしませんよ。しかし、戦車や戦艦などのスケールモデルを出していた老舗の模型メーカーからすれば、キャラクターモデルはスキマ商法です。それでも、漫画のクレジットを借りたうえに、漫画雑誌の広告主だったんですから、60年代のキャラクターモデルは、ほとんどイマイの独占商法でした。

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