「作って終わり」ではなく、「学べる教材」としてプラモデルの可能性を掘り起こす——BANDAI SPIRITSが、マンモスをプラモ化する理由【ホビー業界インサイド第77回】

2022年01月29日 11:000
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普段なかなか見られない、「ロマン」のある動物をプラモデル化していきたい


── ところで、「エクスプローリングラボネイチャー」というシリーズ名には、どんな意図が込められているのですか?

染谷 2010年代初期、「Exploring Lab.(エクスプローリングラボ)」というシリーズがありました。「1/700 地球深部探査船ちきゅう」、「1/600 しんかい6500」、「1/10 ISS船外活動用宇宙服」など、弊社の得意なメカ物を高額のプラモデルとして発売していました。その「Exploring Lab.」の動物版という意味もあるのですが、今回は値段も低く抑えていますし、マニアックなラインアップにはしていません。コアなファンではなくファミリー向けで、何か1要素、プラモデルならではのひねりを入れているのが「エクスプローリングラボネイチャー」シリーズです。今回のマンモスなら、色の変わる毛皮パーツ。第2弾の「エクスプローリングラボネイチャー ホホジロザメ」では、サメの口の開き方を再現した可動ギミックや、ゴム素材でピンク色の歯茎の部分を再現しています。穴の開いた歯茎のパーツを歯のパーツに被せていく、「バンダイここまでやるかっ!」みたいな組み立て工程があります(笑)。
また、いろいろな成形材料を使おうと思っていて、海水のパーツはクリア成形、目の黒いパーツは金型を磨きこんでツヤを出しています。逆に、外皮は“サメ肌”とまでは言いませんが、マットな感じになるよう、金型を工夫しています。プラモメーカーらしい「多彩なプラスチック」での表現で、誰でも「触ってみたい」「手にとってみたい」と思わせる魅力的な質感に仕上がっています。今後のシリーズでも多様な成形色や成形材で、その生物の特性をピックアップしていきたいと考えています。

── 今はガシャポンでも虫や動物が大人気ですし、プラモデルの世界でも他社さんが昆虫や甲殻類のプラモデルを発売しています。これらの生物に、“旬”はあるんでしょうか?

染谷 日本の場合、夏は恐竜の博覧会が多いのですが、動物に旬はないような気がしています。ホホジロザメは6月発売予定なので、なんとなく夏に合わせていますが、その程度です。弊社の商品は版権キャラクター物が多いのですが、誰でも知っている動物たちの商品はノンキャラクター物だからこそ、流行りであるかどうかに関係なく継続して販売していけると考えています。普遍的なモチーフとして、流行り・廃りなく横ばいで継続的に売れていく……。この「エクスプローリングラボネイチャー」は、そういうシリーズを目指しています。

── 気になるのは、今後のラインアップです。

染谷 1つひとつの生物に対して、プラモデルならではの素材やギミックを合わせて考えなくてはならないので、企画はなかなか難しいんです(笑)。いまのところは、以前の「Exploring Lab.」シリーズのように、マニアックな科学メカをラインアップすることはないと思います。それと、自分の心の中のキーワードは「ロマン」です。普段なかなか見られない動物、すでに滅んでしまった動物を、模型として身近に置いておきたい。絶対に手に入らないものを近くに置きたい感覚、そして、その動物をもっと知りたいという感覚は、大事にしていきたいと思っています。



(取材・文/廣田恵介)
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