自分のイラストが海外でフィギュア製品化? イラストレーター“あらごん”さんが体験している、ささやかで大きな奇跡【ホビー業界インサイド第68回】

2021年02月14日 12:000

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「フツーにカワイイ」と名づけられたフィギュアシリーズがある。原作は、あらごんさんという個人作家によるもので、フィギュア製品は海外のイベントかご本人の通販サイトでしか買うことができない。かぎられた流通ルートで生産数も少ないが、製品は全世界のコレクターに好評で、いつでも即完売という状態だ。いまや、中国のファッション雑誌とのコラボ製品まで発売されるほどの人気製品となっている。
この「フツーにカワイイ」シリーズ、2年前に手作りしてイベントで即売したのが最初だというから、メーカーで製品化されて世界で販売されていることは奇跡と言っていい。果たして、この奇跡は、どのようにして起きたのだろう? 原作者のあらごんさんに、お話をうかがった。

奥さんが、粘土をこねてフィギュアを造形しはじめたのが最初


── あらごんさんは現在、グラフィックというかデザイン関係のお仕事をされているそうですね。

あらごん はい、かつてはアニメーションの背景を描いていて、妻も同じ会社でした。今は自宅を仕事場にして、妻と一緒にデザイン関係の仕事をしています。

── 立体とかフィギュアに興味はあったのですか?

あらごん いいえ、あまり……。コンビニで食玩を買ったり、たまにゲームのフィギュアを中野で買うぐらいです。子どものころから、キンケシだけは熱心に集めていました。

── Twitterで、フエラムネのおまけを撮った画像をアップされていましたが?

あらごん フエラムネは友だちの子どもが買っていて、余ったものをもらったんです。ちょっと調べてみたら奥の深い世界で、自分でも買うようになりました。

── カッコいい物よりは、ちょっとチープな立体物が好きですか?

あらごん 言葉はよくないかもしれませんが、“間が抜けたもの”が好きです。“隙のあるデザイン”と言いますか……。

── 最初は、奥さんがあらごんさんの描いた女の子キャラクターを立体にしはじめたそうですが?

あらごん ええ、妻が粘土をこねはじめたのが、そもそものキッカケです。だけど妻は気が短い性格なので、粘土が乾燥する時間がじれったいようでした。その後しばらくして、3Dプリンターが安くなったのでいろいろと調べてみました。その頃、初めてワンダーフェスティバル(以下、ワンフェス)にも行ってみました。結果、結果、「Qholia(クホリア)」という3Dプリンターが出力物の精度が高いことはもちろん、メーカーの社長さんがTwitterなどで、使用中に起こったトラブルやわからない箇所の対処法などを親切に教えてくださることがわかりました。
だけど、当時住んでいた家にはQholiaを置く場所がありませんでした。その後、2階に作業スペースがあって塗装もできる小さな部屋もある物件が見つかったので、思い切って家を買うことにしました。新しい家に移って仕事が一段落してから、フィギュアを作るために妻と一緒に半年ほど仕事をお休みました。ワンフェスで売るにしても、最初から塗装されたものを売りたいと思っていました。


── アメリカのフィギュアのように、ブリスターパックに入っていますね。

あらごん はい、最初から塗装済みでパッケージに入っているフィギュアにしたいと考えていました。中野ブロードウェイへ行って、アメリカの古いフィギュアなどを見て研究しました。妻も僕も、パッケージデザインを考えるのが好きなんです。ブリスターパックの透明な部分は、米Amazonで見つかったので個人輸入しました。

──フィギュア本体のほうは、粘土ではなくデジタル造形で作りはじめたわけですね?

あらごん そうです。しかし、いざ3Dソフトで造形して出力してみるとメガネや靴のひもはきれいに出力されないんです。特に、メガネはプリンターではできないので困りました……、ということをTwitterに書いたところ、白船工房さんから声をかけていただけました。白船工房さんは、ペーパークラフトでフィギュア用のメガネを販売している方で、僕たちのフィギュアにピッタリの品質だったので、使わせていただきました。
それ以外にも、たとえば最初は両足の間が空いていたのを埋めたり、改良を重ねました。両足に隙間があると、そこを塗装するのが難しいからです。妻は服マニアなので、Tシャツのシルエットにもうるさいんです。初期の試作ではTシャツのディテールがうまく出ませんでした。原型を改良しながら、型抜きだけは業者さんにお願いしたかったので「初心者ですけど大丈夫ですか?」と連絡をとり、パーツ分割などを相談しながら進めていきました。型抜きが終わってパーツを届けてもらったのが、2018年の末ぐらいです。そこから、妻と2人で1体ずつ塗装していきました。


── 筆で塗ったのですか?

あらごん そうです。塗装もほとんど経験がないので、家で飼っている猫に害のない塗料を探しました。すると、どうも「ファレホ」という塗料がいいらしいとわかりました。

── 水性塗料ですね?

あらごん そうです。2人で1か月ほどかけて、何とか塗り上げられたのが11体ぐらいでした。それを2019年2月のワンフェスで販売しました。「初めて出店しても、なかなか売れない」と聞いていたのですが、10~20分ぐらいで完売しました。そのときに買ってくれたお客さんの中に、中国人のアーティストの方がいらっしゃいました。その方が僕たちのフィギュアをFacebookにアップロードしたら評判がよかったそうで、「上海のイベントで売ってみないですか?」と、インスタグラムを通じて声をかけてくれました。

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