アートか、ホビーか? 変形する金属彫刻を作りつづける造形作家、坪島悠貴の幻想世界【ホビー業界インサイド第81回】

2022年05月22日 11:000

※本コンテンツはアキバ総研が制作した独自コンテンツです。また本コンテンツでは掲載するECサイト等から購入実績などに基づいて手数料をいただくことがあります。

変形といえば、SFメカニックの世界では外せない要素だ。生物がほかの形態へ変形するファンタジックな金属彫刻を作りつづけているのが、坪島悠貴さんだ。坪島さんは個人作家として変形する根付などを制作しているが、いっぽうでホビーメーカーからの依頼で製品原型を作ったりもする。最近作では、中国の新鋭トイメーカー「52TOYS」から発売予定の「MEGABOX MB-22 KIRIN-キリン-」がある。ボックス形態から、伝説の生物・麒麟へ変形する玩具だ。
作家性の強い金属彫刻とトイメーカーの原型は、坪島さんの中でどう両立しているのだろう? 坪島さんの作品を展示・販売するGallery花影抄で、お話をうかがった。

個人作家としてスタート、3Dプリントの会社を経てメーカーと繋がりも……


── 現在のような、変形ギミックを組みこんだ彫刻作品を作るようになったのは、いつ頃からですか?

坪島 武蔵野美術大学の金工専攻に入学して、学生のころは変形しない動物を金属で作っていました。動物といっても、自分なりにアレンジした金属生命体のような感じです。変形するように作りはじめたのは、大学を出てから2年ほどたった頃です。このGallery花影抄さんで、金属根付展というグループ展がありました。根付は身につけるものなので、細かいパーツは折れてしまいます。どう対策しようか考えた結果、壊れやすいパーツは内側へ収納することにして、構造を考えました。その作品の評判がよかったため、変形をテーマに作るようになりました。


── 「トランスフォーマー」が好き、といった単純な理由ではなかったんですね。

坪島 いいえ、「トランスフォーマー」も好きです。だからこそ、変形というアイデアが出てきたんだと思います。はじめは細かいパーツを収納するだけだったのですが、「もっとすごい作品を作りたい」と欲が出てきました。それで、単に収納したり開いたりするだけでなく、変形の前後で違う生き物になる作品が増えていました。

── 大学卒業後は、すぐ作家になれたのですか?

坪島 しばらくは、アルバイトしながら作品を製作していました。その過程で花影抄さんとも出会えたのですが、そうそう作品が売れるわけでもないし、不安にかられて就職しました。

── 就職したのは、ホビーメーカーなのですか?

坪島 ホビーではなく、3Dプリント全般を手がけていたアイジェットという会社です。自分の作品のために3Dプリントをあちこちの会社にお願いしていたのですが、その中で僕の作品に注目してくれていたのがアイジェットでした。たまたま求人広告を出していたので応募して、アイジェットには3年ほどいました。建築模型や人物をスキャンしてそのデータを修正したり、フィギュアの小物を3D-CADで制作するような仕事もありました。そのうち、アイジェットはDMMの子会社となり、社員は散り散りになってしまいました。DMMではそれまでの経験を生かせる仕事もあるにはあったのですが、ちょうど作品が売れはじめたので、そのころに会社を退職しました。


── ホビーメーカーとは、どうやって繋がりができたのですか?

坪島 アイジェットに勤めていたとき、フィギュアの原型に関わったことでグッドスマイルカンパニー(GSC)さんと付き合いができて、会社を辞めた後も担当の方が作品を見てくれたり大変よくしてくれて、今でもお仕事をいただいています。その方が、ワンダーフェスティバル上海で私の作品を展示してくれたことがありました。ワンフェス会場で52TOYSのスタッフの方が見てくださって、MEGABOXシリーズに参加することが決まったんです。GSCさんの製品でも、「ぴよくる」というシリーズ(2018年発売)に関わらせてもらいました。タマゴの殻の中から、「ねんどろいど」のようなミニフィギュアの出てくるカプセルトイなのですが、最初はおおまかな商品イメージしかありませんでした。そこで私のほうで変形ギミックを考えて、GSCさんの担当者さんとやりとりしながら、みんなで作り上げた製品でした。

画像一覧

ログイン/会員登録をしてこのニュースにコメントしよう!

※記事中に記載の税込価格については記事掲載時のものとなります。税率の変更にともない、変更される場合がありますのでご注意ください。

関連記事