釣りファンも模型ファンも注目、「ルアープラモ」をつくった老舗の金型メーカー、株式会社マツキさんに人気の秘密を聞いてみた!【ホビー業界インサイド第80回】
ただのディスプレイモデルなのに、魚釣りもできるって本当?
── 話を聞けば聞くほど、ルアーのプラキットなのかルアーそのものなのかわからなくなってきます。実際にルアーとして使っている人もいるみたいですね?
鈴木 釣り好きの社員が自分好みに塗って、自分好みのリップをつけて、自分の好みの泳がせ方をする……という発想が根底にあります。おっしゃる通り、YouTubeやTwitterで、キットを組み立てて釣りに使ってくださる方を見かけます。接着して、しっかり防水すればルアーとして使えないこともありません。だけど、実際に釣りに使うのは、ユーザーさんそれぞれの判断でお願いします。このキットは2個セットで販売していますが、それは何かトライしてみて失敗したときの備えという意味あいも含んでいます。
── これまでの模型のように、塗装を楽しんでいる人もいるようですね。
鈴木 本物のルアーは強度の高いABS製ですが、このキットは塗装しやすいようにPS樹脂で成型してあります。実際に釣りに使いたい方は、その素材の違いも考慮していただきたいです。「普通に模型として楽しみたい」という方のために、接着剤を使わなくても組み立てられる構造になっています。製品としては飽くまで、飾って楽しむ“プラスチック製組み立てキット”ですから、ご自分の好みに塗装していただきたいです。弊社にあるサンプルは、もちろん従業員が塗りました。女性社員も、自分のセンスで塗ってくれました。
── そういえば、クリアーで成型されているのもキットの特徴ですね。
鈴木 はい、金型を鏡面のように磨きこまないと、ここまでの透明感は出ません。クラウドファンディングのリターンとして、クリアーレッド・クリアーブルー・クリアーブラックも成型しました。当面は一般販売はクリアーのみで、ほかの色はイベント限定で販売するつもりですが、今後はバリエーション展開したいと考えています。ユーザーさんや社員からも「こんな成型色のバージョンも欲しい」と要望は出ているのですが、成型も社内で行っているので、なかなか時間がとれないんです。
── 一般販売してみて、リアクションはどうですか?
鈴木 これまでの仕事は製造のみだったので、ユーザーさんの反響はダイレクトには聞こえてきませんでした。いざこのキットを発売してみると、予想よりずっと多くのリアクションをいただけました。模型好きの方、釣り好きの方、両方から「塗った」「釣った」との声をいただいています。
── しかし、社内のディスプレイケースには大手メーカーの歴史的なキットがずらりと並んでいますね。「これもマツキさんが金型をつくっていたの?」と驚きます。
鈴木 われわれが前面に出ることはありませんが、プラキット業界では下請けメーカーがとてもがんばっています。「ウチだって物づくりができるんだ」と誇りたい気持ちが、このルアープラモには込められています。
(取材・文/廣田恵介)
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