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今にも動き出しそうなタイミングを、アニメーション映像から立体化する
かのー まず最初に、1/100スケールでバラクーダ号を作りました。木の竜骨とフレームで船体を作る方法はネットで見て知っていたので、「木板で作れるならプラ板でも作れるんじゃないかな?」程度の知識で、着手しました。でき上がってみるとなかなか評判がよくて、「水ものオフ会」という水に浮かべて遊ぶ模型ばかりのイベントで賞をもらったりしました。
── アオシマさんの発売した1/200バラクーダ号(https://akiba-souken.com/article/41795/)のプラモデルも、かのーさんの模型を参考にしたと聞きましたが? かのー アオシマさんがバラクーダ号をプラモデル化するときに、「あなたが自作した模型の寸法を取らせてほしい」と相談がありました。製品は帆のパーツを接着する面積があまりに小さくて、そこのみ不満があるのですが、よくできたプラモデルでした。
艦首の形は、アニメの作画どおりに立体化すると、ふくらんだ形状になります。アニメどおりにするのか、それとも現実の船に近づけるのかで葛藤しました。ゆるい凹状の形にアレンジしないと、舳先がピシッとカッコよくならないので、船首の形状は僕なりに解釈して作りました。アオシマさんのプラモデルでも、僕のアレンジしたとおりの形で製品化されています。
── その後、1/24という大型サイズで再びバラクーダ号を作ることになった理由を教えてください。 かのー もともと、いつか帆船模型でやるような船体輪切り模型をバラクーダ号でやって、未来少年コナンの名シーンをジオラマにしたいという思いはありました。でも、自分はフィギュアを作ったことがないので踏み出せなかった。そこへ、フィギュアづくりの得意なノウミソアキラ君が、「宮崎メカ模型クラブ」に入ってくれたことが大きいです。
ノウミソ 僕は2015年に入会したのですが、かのーさんは「コナンの尻を光らせたい」と言っていましたね。
── 第4話のバラクーダ号船内のシーンで、コナンの尻が叩かれて、赤く腫れて光っているところですよね? かのー そうです。電飾模型は光点のたくさんある「スター・ウォーズ」の宇宙船など、ムードがあってカッコいいものが普通です。けれど、自分が本当に一番光らせたかったものはコナンの尻だったんです。くだらないところに電飾するのも面白いし、何より強烈なインパクトの思い出のシーンでしたから。また、ほかの方がやってない電飾の使い方をするほうが、やる気が出ます。
ノウミソ 「私はコナンの尻を光らせたい」と言った翌年の会合でも、また「コナンの尻を光らせたい」と言っているので、よほど光らせたいんだなあ……と、かのーさんの熱意は十分に伝わってきました。
かのー 最初に作ってもらったフィギュアのコナンとジムシーはパーツ分割も合理的で、ホントによくできていた。
── すると、コナンの尻が赤く腫れているシーンを作りたくて、バラクーダ号の内部を作ったんでしょうか? かのー そうです、最初は船の中央部分だけ作って終わりで、全体を作るつもりはありませんでした。フィギュアの表情を見せるには1/24スケールぐらいの大きさが欲しいということで、あの大きさになっちゃいました。
── フィギュアは、どんな素材を使っているのですか? ノウミソ 最終的にはレジンに置き換えますが、ワックスで造形しています。僕の前職は歯科技工士で、その仕事のときに見つけた素材です。
かのー 翌年、今度はドンゴロスを罠にはめたコナンとジムシーが洗濯させられるシーンが欲しくなって、ノウミソ君に作ってもらいました。
ノウミソ あと、コナンとジムシーが立ちションしているシーン。
かのー うん、船体中央を使って再現できるシーンは、それぐらいしかなかった。あと、「宮崎メカ模型クラブ」の飲み会で、「かのーさんは緊縛ラナを作るべきだ」と言われてしまって……。
── ああ、第8話「逃亡」で、バラクーダ号の舳先に縛りつけられるラナですね? かのー ノウミソ君が作ってくれたんですけど、縄のモールドがなくて、服の縛ってあるところが凹んでいるだけでした。「かのーさんのお好きな縛り方でどうぞ」「こだわりがあるんでしょう?」などと、人のことをまるでSMの大家のように言うんですよ。
ノウミソ アニメのフィギュアだから、本当は縄も造形で作りたかったんです。だけど、舳先のポールにどう結びつけるのか、船本体とフィギュアの関係がわからなかったので、最終的にはかのーさんにお任せしました。
── すると、フィギュアで再現したいシーンがどんどん増えて、バラクーダ号全体を作ることになったわけですね? かのー そうです。船体中央部を作るときに、あとから気が変わって船の前後を作りたくなっても形が合うよう、船体中央の船底にゆるくカーブを付けておいたのがよかったです。そうじゃなかったら、船体前後を作る気にならなかったかもしれません。1/24スケールで中央部分を作ってみてわかったのは、でき上がった後からでも、船の内部に手を突っ込めることです。それなら、後からいろいろと細かいところを作り足すことができます。
船内のテーブルの高さは70センチ、椅子の高さは42センチ、扉は……と厳密に決めて1/24に縮小し、各船室を作っていきました。だけど、ノウミソ君の作ってくれるフィギュアは、デフォルメされたアニメキャラなので、実際の人間の体よりボリュームがあります。フィギュアに比べると椅子が小さかったかなと思うことはありますが、それはしょうがないですね。あと、ノウミソ君の演出の意図もあり、甲板でのダイス船長とモンスリーの結婚式のシーンなんて、ダイス船長を頼りがいのある男に見せるため、すごく大きく造形してあるんです。
ノウミソ それは、最初にコナンとジムシーを作った後から、どんどん追加したせいでしょうね。自分でスケッチしてから作れば大きさを統一できるのかもしれないけど、アニメの絵を見ながらいきなり造形しているから、サイズがまちまちになってしまうんです。
かのー 強調したいところを、大きく作っちゃうんだよね。どうしてスケッチをとらないの?
ノウミソ だって、どうがんばってもアニメの作画にはかなわないからです。アニメ本編がいちばんいい絵なんだから、それを見ながら作るのがベストじゃないかと思うんです。美少女ヒロインみたいな左右対称できっちりしたキャラクターは苦手で、動きのあるポーズや、左右不対称の間の抜けた表情が好きです。
かのー バランスが崩れて、これから動き出す寸前……というタイミングを、よくつかまえたフィギュアを造形するよね。ドンゴロスがマストから落ちそうになっているフィギュアなんて、絶品ですから。