なぜ今、「ブロッカー軍団IVマシーンブラスター」をデジタルアーカイブ化する必要があるのか? アニメを“文化遺産”として保管する寺田倉庫に聞いてみた!【アニメ業界ウォッチング第74回】

2021年02月19日 12:000

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1本のアニメをとりまく複雑な権利関係が、二次利用を難しくしている


緒方 新型コロナウイルスが流行してから、新規収録やロケが中止になったりして、新しく生み出される映像作品の絶対数が減りました。その代わり、テレビ番組では再放送やかつての映像をふりかえる形での再利用が増えてきています。そうした需要にこたえるには、優良なコンテンツが多数デジタル化されて、保存されていることが望ましいのです。「あの作品のあのシーンを使って、新しく番組をつくろうか」というアイデアが出たとしても、現状では「あの作品はフィルムでしか残っていません」「今からデジタル化したらお金も時間もかかります」「じゃあ、別の企画にしようか」という話になりかねません。ですから、今ほど過去作品のデジタルアーカイブ化が意義深くなっている時代はないだろうと思います。

── 何がデジタル化の障害になっていると思いますか?

緒方 「映像として残す」手法、フィルムという人工物に記録する手法は、近代になってから発明されたものです。古来から残されてきた紙などの媒体に比べると温度や湿度を管理せねばならず、手間とコストがかかります。磁気テープになるとさらに厄介で、物としては丈夫でも、そのまま放っておくとデータが消えてしまいます。テープが元気でも再生機の生産が終わって、見読性が失われてしまう。ですから、映像媒体は保存に不利だといえます。弊社では、テレビ局が捨てようとしていた旧式の各種ビデオ機材を譲っていただいて、メンテナンスして使っています。

── そうした技術的な問題のほか、作品の価値を伝えることも大事ですね。

緒方 アニメ作品は、分業で成り立っていますよね。番組の企画を立てる人、ストーリーを考えて脚本を書く人、絵を描く人、声を演じる人。成果物にテロップを入れたら編集する人も加わりますし、音楽を入れれば音楽著作も発生します。多分野の方が関わっている分、適用される法律も多いですし、法律をコントロールする関連団体も多くなります。最終成果物が各分野にまたがってできているため、作品を二次利用する場合、関係各所の許諾が必要です。それだけ複雑な権利関係をクリアするのは、大変な労力だと思います。「そういう理由からアニメ作品は再利用されにくいのか」と理解はできますが、お預かりしている立場からすると、あまりにもったいない。
そもそも、アニメ業界に入ってくる方は素晴らしい作品をつくりたい、思いを形にしたいクリエイティブな方たちです。作品づくりにかける情熱は凄いのですが、その後の管理・再利用に関して専門的な知識をもった方が多いかというと、そういうわけではありません。とは言え、作品をつくる労力とコストは大変なものだったので、何とか保存だけはしておきたい……。そうしたお客様が自社作品をデジタル化する予算を確保できず、我々はただお預かりしているだけで、本当にお役に立てているのだろうか? もちろん、可能なかぎり良質な環境で保管させていただいていますが、もう一歩、踏み込んだ支援はできないかと考えてCFに協力しているわけです。作品にセカンドチャンスを与えて、もういちど収益を上げられる場を提供したい。


── 本来なら、映像業界なりアニメ業界なりが再利用に積極的にならねばいけない課題だと思うのですが……。

勝又 プロダクションI.Gさんのように、アーカイブの重要性を認識して専門の部署をもっている会社もあります。

緒方 本音をいうとアニメ作品の製作費の中に、完成後に保管・維持するための費用も入れてほしいんです(笑)。それぞれの会社さんで、「この作品はウチの代表作だから」と保護している作品があるかと思います。しかし、大きな会社であっても経営が傾いたら維持費が削られて、その代表作すら残すのが難しくなってしまうでしょう。ですから、今回のCFのような資金調達の多様化、公的支援を受けられる体制、さらに言うと規制を緩和して二次利用しやすくすることが重要と考えています。デジタル化によって延命することでその作品の持っているポテンシャルを引き出し、ちゃんと稼がせてあげたい。1本が収益を上げれば、それに紐づくほかの作品群も救えます。1本だけではなく、その周辺の作品のファンも癒される状態が理想です。制作会社によって丁重に保存されている作品は、ほんのひと握りではないでしょうか。

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関連作品

ブロッカー軍団IVマシーンブラスター

ブロッカー軍団IVマシーンブラスター

放送日: 1976年7月5日~1977年3月28日   制作会社: 日本アニメーション
キャスト: 安原義人、玄田哲章、津嘉山正種、つかせのりこ、一龍斎春水、小宮和枝、加藤精三、弥永和子、野本礼三
(C) NIPPON ANIMATION CO.,LTD.

チャージマン研!

チャージマン研!

放送日: 1974年4月1日~1974年6月28日   制作会社: ナック
キャスト: 劇団近代座
(C) 鈴川鉄久/ICHI

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