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「パリピ孔明」の配信はやはり無理だったようだ……と嘆く中国のオタク
中国で配信される新作アニメに関しては、各シーズンの中国における期待作や話題作の中で、中国本土で「配信されなかった作品」「配信が遅れた作品」「目立つ修正が入った作品」などを見ていくと、そのときそのときの中国の規制事情や、問題視される内容などが浮かび上がってくるといった話があります。
そういった視点で4月の新作アニメを見ていくと、「SPY×FAMILY」、「かぐや様は告らせたい-ウルトラロマンティック-」、
「パリピ孔明」などが該当しそうですが、なかでも「パリピ孔明」は中国のオタク界隈では配信の有無に関する事情も含めて何かと話題になっている模様です。
三国志発祥の国である中国では昔から三国志が大人気でしたが、近年は若者向けコンテンツのネタとしてもイロイロな方向で活用されるようになり、ひと昔前とは違った作品のとらえ方、楽しみ方をされています。
また現在の中国では、若い世代を中心に曹操と魏の軍師たちの評価が急上昇しているという話や、ずっと続いていた劉備たちの正義側扱いに対する反動から蜀の評価がかなり落ちているという話もありますが、諸葛亮や趙雲など個別の武将に関しては、現在の中国でも老若男女幅広い層から大人気となっているそうです。
そんなわけで
「五丈原で死んだはずの諸葛孔明が現代日本の渋谷に現れ、そこで出会った歌手志望のヒロインのプロデューサー、軍師となって活躍する」
という「パリピ孔明」の設定は、中国のオタク層にとっても非常に気になるものだったそうですし、アニメ化が発表されて以降かなりの注目が集まっていました。
私のほうにも原作を追いかけていた中国のオタクの方から
「諸葛亮が現代日本社会にすぐに対応する、有能な軍師として活躍するのは私のイメージ通りだったので問題なく楽しめます」
といった話がありましたし、向こうの感覚で見ても作中の諸葛孔明描写はかなり納得のいく、歓迎できるものだったようです。
しかし、それとともに中国における配信に関しては
「これが数年前であれば問題なかったかもしれませんが、近頃の中国歴史文化方面の扱いや昨年から厳格化している日本のアニメ配信の審査を考えるとやはり無理だったようだ……という感想になります。とても残念ですが」
といった話もありました。
中国では、昨年からの娯楽コンテンツ全般に対する規制管理強化以外にも、近年は国産コンテンツ保護の意図も含む外国産コンテンツ規制の流れがあるといった話が聞こえてきますし、中国の文化や歴史人物に関する「正しい」解釈や価値観から外れるものに対する規制や批判も強まっています。
そういった背景もあるので、いくら諸葛孔明の有能さと大活躍が中国におけるイメージ通りであっても「現代日本に転生」して「中国で不良文化扱いされがちなクラブ界隈に混じる」というのはどこから批判が来るかわからないと感じられる設定になるようです。
中国のオタク界隈でも
「中国で配信するための審査検閲を通過できるのか?」
という点に関して疑問視する声があったそうですし、配信の音沙汰がない現在の状況に関しても
「やはりダメだったか」
という反応は少なくないとのことです。
現在の中国のネットではとても気軽に「通報」ができる環境になっているので、上からだけでなく下からのダメージも大きくなりやすく、炎上した場合の被害は日本と比べても段違いに大きなものとなりがちです。
動画サイトに限らず中国の娯楽コンテンツ界隈は、昨年から何かと痛い目にあい続けていることもあってか、どこも中国国内向けでは以前と比べて守りの姿勢、リスク回避を重視する方針になっているといった話も聞こえてきます。
この辺りの事情に関して、中国のオタクな方々からは
「近年の中国では歴史人物に関して独特な解釈をする作品は何かと危なくなっています。特に諸葛亮はある種の偶像的な存在とも言えるので難し過ぎます」
「言っては何ですが外国人が制作する中国の歴史文化がテーマになる作品に対しては、最初から厳しい視点で見てくる人が少なくありません。そして三国武将の中で諸葛亮は特に人気が高く中国人なら誰もが知っている人物なので、解釈違いがほぼ確実に発生します。配信しないあるいは様子を見るという判断になるのも仕方がないと思えます」
といった話も教えていただきました。
現在の中国では、歴史文化ネタを扱うのが何かと難しくなっているということについては私もある程度わかっているつもりでしたが、「諸葛孔明の人気が高過ぎるので諸葛孔明をネタにした作品が危ない」という見方が出てくることや、作品が配信される可能性に影響するような事態になっているのを見るとなんとも言えない気分になってしまいますね。
(文/百元籠羊)