【中国オタクのアニメ事情】中国における7月新作アニメの人気。原作ファンの後押しや反発で人気が動く

2017年09月09日 12:000
(C) 衣笠彰梧・KADOKAWA刊/ようこそ実力至上主義の教室へ製作委員会

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中国オタク事情に関するあれこれを紹介している百元籠羊と申します。
今回は中国の動画サイトで配信されている日本の7月新作アニメの人気の動向や、その周辺事情などを紹介させていただきます。


注目とともに原作との違いによる混乱と不満が出た7月の話題作


中国では「ようこそ実力至上主義の教室へ」「Fate/Apocrypha」が7月新作における注目作となっているようで、この2作品は作品関連のやり取りも活発で再生数もハイペースで伸びている模様です。

まず「ようこそ実力至上主義の教室へ」ですが、配信開始以降急速に人気が高まり非常に熱心なファンを獲得しているようです。
この作品に関しては中国のオタク界隈でもかなり好みが分かれるらしく、ハマる人と反発する、あるいは付いていけないという人が極端に分かれているそうですが、好きな人にとってはたまらない作品となっているそうです。
また主人公の綾小路清隆に関しても、そのクセの強いキャラクターに惚れ込む人が出ているそうで、中国のオタク界隈における新たな「オタク好みの主人公」のイメージとなっているようなところもあるとのことです。

それからこの作品の舞台設定の中の
「学校の評価によって生徒に現金と同価値のポイントが支給される」
という部分が、中国のオタクな人たちにかなり刺さるものだったというのも面白いところでしょうか。

中国の学生が受ける、勉強に関する圧力は日本以上に厳しいものとなっていますが、その勉強は主に進学のためのものですから、すぐに自分の利益につながるものではありません。また最近の中国では就職難から勉強していい学校に入れば何とかなるという認識も薄れており、
「勉強だけではダメ、しかし勉強以外にできることもない」
という不安を抱える人も少なくないそうです。

そういった背景もあってか、学校での評価が即座に金銭的なものになるというのは中国の学生にとっては非常に心惹かれる、自分の妄想をテーマにしたような作品に感じられたりもするとのことです。そして設定に興味を感じて見始めて、主人公のキャラクターや頭脳戦ベースのストーリー展開にハマってしまう人もかなり出たという話です。

次に、前回の記事でも紹介させていただいた「Fate/Apocrypha」ですが、こちらは序盤の展開が駆け足だったことに加えて原作からの改変や独自要素の追加などもあったことから、予備知識なしの視聴者だけでなく、中国のFateファンの中にも付いていくのが厳しいという人がかなり出ていたそうです。

しかし、その後ストーリーが進んでキャラが出揃い、戦闘シーンが盛り上がるようになって来たあたりからはファンの反応も落ち着いてきているようです。
そして作品を見るうえで中心に据えるキャラが定まったり、「Fate/Apocrypha」及びそのアニメのFateシリーズにおける立ち位置や登場するキャラの扱いに関する認識が浸透するにともない、アニメの内容に関するやり取りも活発になってきているそうで、現在はアニメの内容に加えて随所に出てくる他のFateシリーズの作品とも関係する描写なども大きな話題になってきているとのことです。

この2作品の盛り上がりに関しては原作ファンによる後押しの影響も大きく、中国のオタク界隈で行われている作品関連のやり取りには
「原作知識を持った人が積極的に参加している」
「原作との違いやアニメ独自の要素が強く意識されている」
といった共通の特徴も見受けられます。

もっとも、原作から入ったファンはアニメと原作の違いに対して反発することも多く、アニメで行われる原作からの改変に関して厳しい反応が出たり、原作との違いに対する批判からの炎上が発生することも少なくありません。
実際、「Fate/Apocrypha」は、序盤における原作との違いに対する反発が目に付きましたし、「ようこそ実力至上主義の教室へ」も、中盤におけるアニメ独自の構成やそれにともなう改変、サービス回が挟まれることに対して強烈な反発が出ているなど、やや難しい空気も漂っているようです。

原作ファンの活動は作品の長期的な人気や話題性への影響も大きく、アニメ版完結後の再生数の伸びや続編アニメの人気にも影響を及ぼすことから、現在の中国でも無視できない要素になってきているそうですし、この2作品の人気に関してもイロイロと目の離せない状況が続いている模様です。


当たれば強いギャグ系作品。今期は「アホガール」が話題に


現在の中国ではいわゆるニコニコ動画的なコメント付き動画サイトでたくさんのコメントとともにアニメを視聴するというのが主流のスタイルとなっています。
そのような環境ではコメントで「ツッコミ」を入れながら見ることのできるギャグ系の作品は、笑いのツボが現地の感覚に合うかが難しいところではあるものの、当たった場合はオタク層だけでなく一般層も含めて幅広い範囲から、長期にわたる人気を獲得できるとされています。

このツッコミ系ギャグ枠に関しては「銀魂」が代表的な人気作品となっており、最近では「斉木楠雄のψ難」なども人気になっています。そして今期は「アホガール」がこのギャグ枠として当たり、中国の動画サイトでは乱れ飛ぶ弾幕コメントとともに楽しまれているとのことです。

また「アホガール」はその内容に加えて、1話が15分という短さも現地では好評の材料となっているようです。
近頃の中国の動画サイトでは数分~十数分程度の動画が強く、中国の国産アニメも1話十数分のフォーマットになっている作品が主流で、約30分になる日本のアニメをやや長すぎると感じる人も出ているそうです。

以前の記事にも書きましたが、「斉木楠雄のψ難」も短編アニメとして分割して配信されているのが好評の理由のひとつとなっていますし、ギャグ系などの、手軽に見られて盛り上がれるような作品に関しては、短めの作品のほうが中国の視聴スタイルに合っている可能性も考えられますね。


終了間際、そして次のシーズンになってから人気と話題が拡大している「月がきれい」


7月ではなく4月の新作になりますが、最近の中国のオタク界隈で面白い形で人気が高まっているのが「月がきれい」です。

4月のシーズンは中国の受験と学年末に重なることから、ストーリー展開によって精神的なダメージを受けそうな恋愛モノであり、さらに進路が恋愛に絡む「月がきれい」は敬遠されやすく、作品の評価はともかく盛り上がりという面ではパッとしない状態が続いたそうです。
しかし、作品終盤の時期になり、勉強関係にひと区切りがついて余裕のできた人が増えていくとともに作品の話題も広まり、後から一気に見る人も出てくるなどして、徐々に人気と評価が高まっていったとのことです。

「月がきれい」の人気の出方は近年の中国では珍しい、後発の追い上げという形ですが、それに加えて
「実は珍しいタイプの恋愛系の作品」
という評価からの人気獲得といった特徴もあるそうです。

最近の中国では、恋愛系のアニメに関して
「語れる名作は多いが重い作品、気が滅入るような作品も多い」
「ドロドロの展開、くっ付いたと思ったらひっくり返る胃が痛くなる展開の作品が少なくない」
といったイメージもあり、精神衛生上敬遠する人や、見ている時に一定の警戒をしながら見るようにするといった人も出ているそうです。

しかし「月がきれい」は恋愛の過程における一定の障害はあったものの、胃が痛くなるような展開が最後までなかったということで、
「近年の恋愛メインのアニメでは逆に珍しい、ストレートでやさしくて甘さのある恋愛系作品」
と評判になり、これまで恋愛アニメを敬遠していた人も見るようになったという話です。

夏休みと重なることもあってか、この時期の中国のオタク界隈では他の時期とは異なるペースで作品に接したり、話題にしたりといった動きが出ていました。
またそういった中で出てくる反応には、最近の中国のオタク界隈における好みやファンの活動の変化などに関する興味深い動きも見受けられました。


(文/百元籠羊)

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