【中国オタクのアニメ事情】中国の10月新作アニメの動向と、日本アニメビジネスの新たな動き

2015年11月23日 11:000

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中国オタク事情に関するあれこれを紹介している百元籠羊と申します。

今回は前回のコラムに続いて、中国で正規配信されている10月の新作アニメ作品に関する動向や、中国の動画サイトと日本のアニメに関して出てきた新しい動きなどを紹介させていただきます。


10月の新作は続編中心の人気に


10月の新作アニメに関して、中国のオタク界隈でも徐々に人気の傾向が見えてきましたが、飛び抜けて注目の集まっている作品というのはまだ出ていないようです。

 

中国の動画サイトで配信される日本の新作アニメに関しては、飛び抜けた話題作が出ないシーズンは前作の人気が高かった続編系の作品や、中国オタク的にも分かりやすい定番要素のある作品、中でもラノベ原作系のアニメ、そして安定したオタク系コミュニティのある女性向けが強いといった傾向が見受けられますが、今期もそれに近い状態になっている模様です。

 

とりあえず、この原稿を書いている11月初めの時点で比較的人気の高い続編系の作品は、

「終わりのセラフ」

「DIABOLIK LOVERS MORE,BLOOD

「K RETURN OF KINGS

といったあたりのようです。

また、ラノベ原作系のアニメに関しては

「落第騎士の英雄譚」

「俺がお嬢様学校に『庶民サンプル』としてゲッツされた件」

「学戦都市アスタリスク」

などが話題の面でも再生数の面でも好調のようです。

それ以外にはガンダムシリーズの新作、

「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」

も比較的好調のようですが、これに関しては中国のオタク層、オタク業界から少々意外に思われているところもあるそうです。

中国本土においてもガンダムの人気と知名度は高く、「ガンダムSEED」は現在も中国のオタク界隈では定番作品的な扱いになっていますし、ガンダム関連の知識やネタがオタクの基礎知識的なものになっています。

しかし最近の若い世代の間ではロボットアニメ、そしてガンダムの人気があまり振るわず、特に新作のガンダムに関してはニュースとしての話題性や、中国のオタク界隈に入る大量の関連情報のわりには再生数が伸びない、作品の内容に関して話題にならないような状況が続いていました。

「ガンダムビルドファイターズ」のような「ガンダムネタ」系の作品であれば、まだそれなり以上の人気、話題となっていましたが、最近では、

「中国のオタクの間ではロボットアニメのファンがマニアな層に偏っており、日本と比べて若い世代やライトな層の食いつきが悪い」

という見方も出ていたことから、

「いくらガンダムブランドがあっても、若い世代やライトな層が多い動画サイトの配信では難しいのでは?」

といった話もあったそうです。

それだけに現在の中国のオタク界隈における「鉄血のオルフェンズ」の人気はいい意味で予想を裏切ったと受け止められているそうです。


3月末の規制以降の、新作アニメに関する現地の対応は?


以前の記事でも紹介させていただきましたが、3月末に中国では動画サイトに対して日本のアニメの規制が行われました。その際にブラックリストに挙げられ配信停止となった作品も出ましたし、規制の基準がハッキリしないことから現地でもいまだに手探り状態が続いている模様です。

 

10月の新作アニメの中にはブラックリスト入りした作品である「進撃の巨人」のスピンオフ作品「進撃!巨人中学校」や、「新妹魔王の契約者」の続編「新妹魔王の契約者 BURST」がありましたが、そのうち「進撃!巨人中学校」のほうは「最強中学」という中国語タイトルになって現地の動画サイトで配信されているようです。(ちなみに「入学!巨人中学」のように各話のサブタイトルに関しては「巨人」などの言葉がそのまま使われています)

中国では海外の作品で「上に目をつけられたら危ないと思われる作品」に無難な中国語のタイトルにしてやり過ごすというのが自粛の一環(?)として行われることもあるそうですが、動画サイトの日本のアニメの規制に対してもそれは変わらないのかもしれません。

例えばここしばらくの間では「血界戦線」を「幻界戦線」に、「監獄学園」を「紳士学園」にして配信するなど、ブラックリスト入りこそしていないものの、漢字表記の日本語タイトルが中国社会の空気や取締りの基準的に難しそうな作品に関しては、無難な中国語タイトルに変更して配信されるケースが出ています。

 

これまでの現地の動画サイトの対応からは、一度規制の対象となってしまった作品に関しても、スピンオフ作品などについてはタイトルの変更などである程度ごまかして配信できる……などと認識されているようにも見えますね。


中国の動画サイトにおける日本関係のアニメビジネスの変化


ここ最近の中国のオタク界隈においては10月の新作アニメの配信以外に、中国のオタク層や青年層をターゲットにした、Web配信による中国の国産アニメ制作の動きがいよいよ活発になってきているのも目に付きます。

 

中国のオタク層や青年層をターゲットにした中国国産アニメの中には日本の人気声優を起用してのプロモーションや日本語版の制作が行われた「雛蜂」のように、日本人スタッフを起用しての展開が行われているアニメも出ており、中国の動画サイトのアニメ配信における日本関連の新たな動きも出てきているようです。

 

中国の動画サイトも広告収入に頼ったビジネスモデルには限界があるとされていましたし、作品のライセンスを購入して配信する流れだけでなく、自前で動かしやすいオタク層や青年層向けのIPを確保し新たな展開につなげようとする動きが活発になってきているようです。

 

実際、私も中国のオタク業界の方から

「再生数を稼ぐだけでは儲けに繋がらない上に、再生数を稼ぎ過ぎると取締りのリスクも上がる」

「アニメを配信するだけでなく収益につなげられるソーシャルゲームの展開も行いたい」

といった話をよく聞きます。

 

そしてそういった背景のもと、制作の分野における日本のアニメ業界への接触もこの1年ほどでかなり増えている模様です。これに関しては中国のオタク界隈でも有名なスタッフやスタジオを起用することによる話題作りといった面もあるそうですが、それに加えて中国側に

「中国のオタク層や青年層の視聴者が満足するだけのクオリティのアニメ作品」

を制作する上でのノウハウやマンパワーが足りないといった事情もあるという話です。オタク向けの2D寄りのアニメを作る場合、現在の中国国内のスタジオだけでは需要に対応しきれないのだとか。

 

もっとも、これ自体は新たなビジネスにつながる話かと思われますが、日本側が中国のアニメ制作にも関わっていく場合は長期的な取引になることが考えられますし、いわゆる中国ビジネスのリスクというものがより明確に出てくる可能性も考えられます。

 

これまでの中国の動画サイトにおける日本のアニメビジネス、主に現地の動画サイトに対して直接、あるいは仲介業者を通じてライセンスの販売や作品データの受け渡しを行っていく形とは違ったものになるでしょうし、仮にトラブルが発生した場合、日本側が中国まで行って法的手段などにより対抗するのはコストなどの問題からあまり現実的ではありません。関係者の方にはそういった中国ビジネス関係のリスクに関しても意識していただきたいところですね。

 

 

(文/百元籠羊)

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