【中国オタクのアニメ事情】中国の1月新作アニメの動向 有料会員限定なら配信リスクの高い「幼女戦記」も配信できる?

2017年02月11日 13:000
(C) カルロ・ゼン・KADOKAWA刊/幼女戦記製作委員会

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中国オタク事情に関するあれこれを紹介している百元籠羊と申します。
今回は中国の動画サイトで配信されている日本の1月の新作アニメの動向などを紹介させていただきます。

中国のスケジュールは元旦よりも春節(旧正月)を中心にまわっているので、毎年1月2月は中国の学期末や春節休みと重なります。この時期は日本のアニメの主な視聴者となっている大学生が多忙だったり実家に帰ってしまったりすることもあり、オタク関係の話題やイベントの盛り上がりが他のシーズンと比べておとなしくなるという見方もあります。

実際、ここ2年ほどは1月の新作アニメに関する盛り上がりが今ひとつだったのは確かです。しかし今年の1月新作アニメに関しては、中国のオタク界隈における期待作が集まったことや、中国のネットにおけるコミュニケーションが行われる環境やツールの変化もあってか、これまでとは少々異なる盛り上がり方になっている模様です。


1月の初動における話題作は


1月新作アニメの中で、前評判がもっとも高かったのは「小林さんちのメイドラゴン」かと思われます。現在の中国のオタク界隈では、京アニブランドの存在感が日本以上に高くなっているようで、京アニの新作アニメは毎回かなりの注目を集めています。
それに加えて「小林さんちのメイドラゴン」は、過去に同じ原作者の作品である「旦那が何を言っているかわからない件」がかなりの人気となっていますし、さらには中国で最も強力なオタク系コミュニティを有する「bilibili」が独占配信を行うということで、中国のオタクな面々が多忙になる時期にもかかわらず、かなり注目されていたそうです。

しかし、この作品に関して配信開始直後の反応ではかなりの数の
「期待外れだった」
という声が出たそうで、これもまた興味深いところでしょうか。
実は中国のオタク界隈では京アニ作品に対して、高い評価とともに「ブランドの看板に恥じない大作」を期待する傾向が強く、「小林さんちのメイドラゴン」の「萌え」や「日常系」といった要素に関して肩透かしを食らったような気分になった人がかなり出たという話です。
もっとも、期待外れの声は出たものの第2話以降はクオリティの高さやキャラクターのよさ、不快感のないストーリーなどが話題になり、その後はきっちり普通以上の人気になっている模様です。

それから、続編枠では「この素晴らしい世界に祝福を!2」(このすば2)が人気となっているようです。
「このすば」は1年前に第1期が中国でも配信されましたが、同時期に中国のネット小説原作のアニメとして「霊剣山 星屑たちの宴」が鳴り物入りで始まったこともあり、当初は同じスタジオディーン制作である「このすば」はほとんど注目されませんでした。しかしその後徐々に人気を獲得し、第1期が終わる頃にはダークホース枠の作品といった評価になっていたこともあり、第2期に関してもかなりの注目が集まったようです。

この作品は中国のオタク界隈に対してさまざまな影響を与えたとされていますが、なかでもヒロインのひとりである駄女神アクアの影響は大きく、中国のオタク界隈に「頭の悪いヒロイン」というジャンルを認識させるようになったとのことで、アニメ第1期の終了後の作品人気や話題性の維持にもつながったそうです。

「このすば」は第1期の評価による後押しに加えて、第2期もメインストーリーが中国人の感覚にも刺さるコメディとなっているうえに、作中に転生系作品をはじめとするさまざまな「オタクならわかる」的なパロディや小ネタなどが散りばめられていることなどから、中国のオタク層にとってもイロイロな意味で間口の広い作品として人気になっているようです。

ちなみに、昨年、中国国産原作の日本アニメとして話題になった「霊剣山」のほうも、第2期の「霊剣山 叡智への資格」が1月の新作として配信されていますが、初動の反応を見る限り再生数的にはそこまで悪くはないものの話題性という面ではかなり苦戦しているようです。

中国ではここ1年ほどの間に、テンセントが中心になり、中国国内向けの対象年齢の高いアニメが急速に増え、クオリティの高い作品も出現するなど、若者の娯楽としての存在感を示すようになってきています。「霊剣山」の第2期も作品自体のクオリティは第1期より上がっていると評価されてはいるものの、主な競争相手となる中国国産アニメのレベルや数が1年前とは大きく異なることから、相対的に厳しい評価となってしまっているようです。

また1月はこれらの作品以外にも「ガヴリールドロップアウト」や「うらら迷路帖」、「幼女戦記」、「政宗くんのリベンジ」などが話題となっていますし、ラブコメ枠では「風夏」や「セイレン」が好調のようです。それ以外にも10月の新作アニメ枠であれば初動の上位に入る再生数だと思われるような作品が複数目に付くなど、1月の新作アニメに関して中国ではかなり盛り上がっている模様です。


独占配信作品の活用 有料会員向けサービスと規制リスク回避


中国で日本の新作アニメを配信している各動画サイトでは毎シーズンさまざまな動きが出ていますが、今期は中国のオタク界隈で前評判の高かった作品の独占配信と、その活用に関する動きが目に付きます。

「YoukuTudou」では、以前から独占配信となっている作品を有料会員限定に配信するサービスが行われていましたが、今期は「iqiyi」でも独占配信作品の最新話が有料会員限定の視聴となるサービスを打ち出しているとのことで、bilibili以外の日本のアニメ配信が活発なサイトでは、日本の新作アニメに関して何らかの有料会員限定のサービスを出している模様です。

今期は、YoukuTudouで「この素晴らしい世界に祝福を!2」と「幼女戦記」、bilibiliで「小林さんちのメイドラゴン」、iqiyiで「政宗くんのリベンジ」と、主要動画サイトそれぞれで看板となるレベルの人気作品が独占配信されていますから、今後の作品人気やその影響がイロイロな面で気になりますね。

また、それ以外にも最近の傾向を見ていくと、有料会員限定での独占配信作品に関して、「中国における規制のリスク」をある程度減らせると考えられている節が見受けられるのも興味深いところです。

たとえば、現在YoukuTudouで配信されている1月の新作アニメの中で、「幼女戦記」は話題作ではあるものの、内容や描写的に中国で配信するにはリスクの高い作品なのは明らかですし、中国のほうでも「配信は可能なのか?」といった疑問の声が出ていたそうですが、このコラムを書いている2月上旬の時点では普通に配信されている模様です。

このあたりに関して中国のオタクな方から聞いた話によれば、
「有料会員向け独占配信の場合は視聴する人間が限られるので、余計な目をひいたり、炎上する可能性が低い」
「動画サイト側も視聴者を把握できる」
などの事情があることから、
「中国ではリスクの高い、自主規制をした方がいい内容や描写のある作品であっても、有料会員限定ならばある程度踏み込んで配信できる」
とのことでした。

もちろん中国で配信する以上、ある程度は「空気」を読まなければならないでしょうし、有料会員限定ならば何でも配信できるというわけではないようですが。
たとえば作中の過激な描写、中国のアニメの基準では残虐過ぎる、ポルノ的過ぎるとされるような場面には無料有料問わず、ぼかしや場面カットなど一定の修正を入れた配信となるようですし、問題視されそうな中国語タイトルは避けるといった対応も行われているそうです。

上述の「幼女戦記」に関しても、原題の「幼女戦記」ではなく、「譚雅戦記」(「譚雅」は主人公ターニャ・デグレチャフの「ターニャ」の中国語表記)という中国語タイトルで配信されているようです。
もっとも、動画サイトで使われている作品画像には日本語タイトルの「幼女戦記」の文字がデカデカと載ったままなのですが……。


(文/百元籠羊)


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(C) うかみ/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/ガヴリールドロップアウト製作委員会

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