今世紀の中国のオタク界隈、業界に大きな影響を与えてしまった十大作品【中国オタクのアニメ事情】

2021年01月01日 12:000

※本コンテンツはアキバ総研が制作した独自コンテンツです。また本コンテンツでは掲載するECサイト等から購入実績などに基づいて手数料をいただくことがあります。

中国オタク事情に関するあれこれを紹介している百元籠羊と申します。
今回は2021年最初の記事ということで、これまでの中国のオタク関連の歴史を振り返ってみようかと思います。

中国には1980年代から日本のアニメが本格的に入っていきましたが、中国におけるオタク層の活動が本格的に始まったのは2000年代半ば頃からなので、「オタク」という方面に関する影響が大きく、さらにわかりやすいのは、主に今世紀に入ってからの作品になるかと思われます。
そんなわけで
「今世紀、中国のオタクな面々やオタク関連業界のクリエイターなどに大きな影響を与えてしまった十大作品」
といった形で、中国オタク史的な重要(だと思われる)作品を紹介させていただきます。

今回は人気の大きさよりも影響力の大きさを重視して選んでいるので、その作品が当時の中国で一番人気があったとは限りません。たとえば、人気の時期やファン層に重なるところもある「NARUTO -ナルト-」と「BLEACH」と「銀魂」であれば、当時の中国で圧倒的な人気だった「NARUTO -ナルト-」ではなく、中国国産アニメに対しても大きな影響を与えた「銀魂」を選ぶといった形になっています。

また主に「中国のオタク界隈」「二次元業界」方面へ注目して選んだため、中国の一般社会での影響も大きく、すでにさまざまなところで評価が語られているジブリアニメや「君の名は。」などの作品は外させていただきました。それから申し訳ないですが、作品を中心にまとめたため、「初音ミク」のような存在も外させていただきました。

前置きが長くなってしまいましたが、それでは以下に大まかな年代順に、「今世紀、中国のオタクに影響を与えてしまった作品」を紹介させていただきます。

げんしけん


「げんしけん」は、中国の若者に「オタクとはいかなるものか」「オタクとは何をすればいいのか、どのようにして楽しめばいいのか」といったオタク像を提示した作品で、中国における「オタク」のイメージが形成される過程において非常に大きな影響を与えた作品だそうです。

私自身の記憶でも当時のオタクな中国人の面々にとって「げんしけん」はオタク像を模索する際の指南書となっていましたし、この作品から受け取ったオタク像によってさまざまな「オタク」を目指す動きが生まれていました。

オタクの活動の基礎が存在しなかった00年代中盤~後半頃の中国では、すべてが手探り状態でさまざまな混乱や障害にぶつかりながらオタクというものが模索されていました。当時は「オタクの活動」の中で、比較的手頃に始められそうなコスプレをやってみる人もいれば、同人誌の制作にチャレンジして大学の印刷所までも活用して形にしようと頑張る人もいました。
また、ほかにも当時、オタクとしての活動のシンボルのように見られていた日本のコミケへの参加を目指して実際にサークル参加を実現したり、中国国内でのイベント開催を実現した大学のサークルなどもありました。

「げんしけん」で伝わったオタク像やオタク関連の活動が、現在の中国の二次元業界、オタク分野の盛り上がりに至るまでには、その後さらに幾つかのステップと迷走を経ることになりますが、中国におけるオタク文化の第一歩、「オタクとは何か」という中国人の疑問にひとつの回答を示した「げんしけん」は、中国におけるオタクの歴史を語るうえで避けては通れない作品になっているかと思われます。

ちなみに「げんしけん」のほかにも、当時中国の若者のオタク像に影響を与えた作品としては、同人創作活動のイメージを提示した「こみっくパーティー」や、オタクネタの扱い方やオタクとしてのアピールを描写した「らき☆すた」などがあるそうです。


フルメタル・パニック? ふもっふ


中国のオタクな面々にとってのオタクの入門のための作品、オタク系コンテンツ布教の作品として活躍したのが「フルメタル・パニック? ふもっふ」です。
この「ふもっふ」はシリアスな本編とは異なり、鍛え上げられたプロの兵士でありながら一般常識が抜けている主人公の相良宗介が、平和な学校生活で騒動を巻き起こすコメディ作品となっています。このテーマの組み合わせが当時の中国の若者にとっては非常にわかりやすいものとなっていたようで、作品のクオリティも相まって誰もが笑って楽しめる作品として受け入れられたそうです。

中国のオタク界隈では軍事関係のネタに関する食いつきが非常によいのですが、これは中国では国防教育が熱心に行われていて、小中高大と軍事訓練も必須となっていることや、日常的に接する軍事関係のニュースやコンテンツの量も多いことなどから、日本の感覚と比べて軍事ネタが非常に身近で共通の話題になりやすいといった事情が影響している模様です。

そんなわけで「フルメタル・パニック」は、中国の若者にとってオタクの知識や感覚がなくてもスムーズに入り込める作品となっていたそうで、特に「ふもっふ」は中国の感覚による笑いのツボも刺激する作品として「誰に勧めても外さないアニメ」「オタクじゃない人に見せるオタク向けアニメ」として重宝されていたという話です。

ちなみに現在の中国においても「フルメタル・パニック」の影響は時おり目に付きます。たとえば中国のネットを中心に「SFチックな技術」や「すごいプログラム」、「チートツール」など広い範囲に対して使われるあおり文句に「黒科技」という言葉がありますが、これは「フルメタル・パニック」の作中で使われている「ブラックテクノロジー」が元ネタだそうです。

この「フルメタル・パニック」から広まった「黒科技」という言葉が、中国のオタク界隈ではほかの作品の設定におけるSF的な設定、科学技術に対しても使われるようになり、さらにその使い勝手のよさからネットユーザーや中国国内の企業が使いまくったことなどから、中国における現代用語的な言葉として定着してしまったものなのだとか。


機動戦士ガンダムSEED機動戦士ガンダムSEED DESTINY


現在の中国本土におけるガンダム人気の基礎を作ったのが「機動戦士ガンダムSEED」「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」です。実は中国本土でガンダム人気が本格的に盛り上がったのは、香港や台湾などほかの中華圏と比べてかなり遅く、「SEED」以前はガンダムに関する一定の知名度はあったものの、作品に思い入れのあるファンはそれほど多くないといった状況が続いていました。

現在の中国ではマニアを中心にいわゆる宇宙世紀系のガンダムの人気も高く、「Z」や「UC」、「第08MS小隊」といった作品のファンが多いという話も聞きます。ですが、ガンダム人気の基礎となっているのはやはりSEED系で、主人公のキラ・ヤマトとフリーダムおよびストライクフリーダムは、「中国のオタクにとってのファーストガンダム」的な人気となっているのだとか。

また作品周辺では、中国で「伝統的」な趣味だった模型趣味が「SEED」から本格的に盛り上がり、中国本土におけるガンダム人気と結びついて、ガンプラ人気やオタク趣味としての地位を形成することにつながったそうですし、キャラクターの人気から女性のファン層や、女性向け二次創作の需要も開拓することになったそうです。

近年の中国では、オタクの世代交代や人気ジャンルの移り変わりからガンダム系コンテンツの勢いは昔ほどではなくなっているようですし、現在の中国のオタク界隈で元気な世代からは、「ガンダムは上の世代の作品」といった扱いをされることもあるそうです。
しかし定番のジャンルとしてのガンダム、定番の趣味としてのガンプラといった扱いは相変わらずで、ガンダム、ロボットアニメが何かと刺さる話題になっているのは間違いないようです。

ちなみに私はSEEDシリーズの放映当時は中国に留学中だったので、リアルタイムでの視聴はできなかったのですが、当時の中国に非正規ルートで入っていた作品を追いかけていた人はかなりいたようです。
留学先の大学で開催された日本人留学生と中国人学生の交流会では、この「ガンダムSEED」の話題で盛り上がったこともあるのですが、当然ネタバレの配慮などもなく、個人的に初めて中国人からネタバレをされたアニメ作品としても印象に残っている作品ですね。

画像一覧

関連作品

げんしけん

げんしけん

放送日: 2004年10月10日~2004年12月26日   制作会社: パルムスタジオ
キャスト: 大山鎬則、斎賀みつき、ゆきのさつき、檜山修之、関智一、乃村健次、川澄綾子、清水香里、うえだゆうじ
(C) 2004 木尾士目・講談社/現視研研究会

フルメタル・パニック? ふもっふ

フルメタル・パニック? ふもっふ

放送日: 2003年8月26日~2003年11月28日   制作会社: 京都アニメーション
キャスト: 関智一、ゆきのさつき、森川智之、田中理恵、金田朋子、福山潤、ゆかな、根谷美智子、平松晶子、木村郁絵、吉田小百合、能登麻美子、夏樹リオ、三木眞一郎、大塚明夫、西村知道、青野武、菊池志穂、浅野まゆみ、浜田真瑞
(C) 賀東招二・四季童子/陣代高校生徒会

機動戦士ガンダムSEED

機動戦士ガンダムSEED

放送日: 2002年10月5日~2003年9月27日   制作会社: サンライズ
キャスト: 保志総一朗、石田彰、田中理恵、進藤尚美、子安武人、三石琴乃、桑島法子、関智一、笹沼晃、摩味、有本欽隆、秋元羊介、置鮎龍太郎、関俊彦、白鳥哲、豊口めぐみ、檜山修之
(C) 創通・サンライズ・毎日放送

機動戦士ガンダムSEED DESTINY

機動戦士ガンダムSEED DESTINY

放送日: 2004年10月9日~2005年10月1日   制作会社: サンライズ
キャスト: 鈴村健一、石田彰、坂本真綾、折笠富美子、関俊彦、池田秀一、保志総一朗、田中理恵、進藤尚美、桑島法子、諏訪部順一、森田成一、子安武人
(C) 創通・サンライズ

涼宮ハルヒの憂鬱(第1期)

涼宮ハルヒの憂鬱(第1期)

放送日: 2006年4月2日~2006年7月2日   制作会社: 京都アニメーション
キャスト: 平野綾、杉田智和、後藤邑子、小野大輔、茅原実里、松岡由貴、桑谷夏子、白石稔、松元惠、あおきさやか
(C) 2006 谷川流・いとうのいぢ/SOS団

銀魂

銀魂

放送日: 2006年4月4日~2010年3月25日   制作会社: サンライズ
キャスト: 杉田智和、阪口大助、釘宮理恵、高橋美佳子、千葉進歩、中井和哉、鈴村健一、太田哲治、若本規夫、石田彰、ゆきのさつき、くじら、杉本ゆう、立木文彦、小林ゆう、三木眞一郎、藤原啓治、坂口候一
(C) 空知英秋/集英社・テレビ東京・電通・サンライズ

マクロスFRONTIER

マクロスFRONTIER

放送日: 2008年4月4日~2008年9月26日   制作会社: サテライト
キャスト: 中村悠一、遠藤綾、中島愛、小西克幸、神谷浩史、福山潤、豊口めぐみ、大川透、桑島法子、小林沙苗、三宅健太、西村知道、杉田智和、田中理恵、平野綾、福原香織、井上喜久子、大村歌奈、保志総一朗、宮澤正
(C) 2007 ビックウエスト/マクロスF製作委員会・MBS

とある科学の超電磁砲

とある科学の超電磁砲

放送日: 2009年10月2日~2010年3月19日   制作会社: J.C.STAFF
キャスト: 佐藤利奈、新井里美、豊崎愛生、伊藤かな恵、阿部敦
(C) 鎌池和馬/冬川基/アスキー・メディアワークス/PROJECT-RAILGUN

ソードアート・オンライン

ソードアート・オンライン

放送日: 2012年7月7日~2012年12月22日   制作会社: A-1 Pictures
キャスト: 松岡禎丞、戸松遥、伊藤かな恵、日高里菜、高垣彩陽、平田広明、安元洋貴、早見沙織、山寺宏一
(C) 川原礫/アスキー・メディアワークス/SAO Project

艦隊これくしょん -艦これ-

艦隊これくしょん -艦これ-

放送日: 2015年1月7日~2015年3月25日   制作会社: ディオメディア
キャスト: 上坂すみれ、日高里菜、タニベユミ、藤田咲、井口裕香、佐倉綾音、東山奈央、大坪由佳、洲崎綾、野水伊織、種田梨沙、ブリドカットセーラ恵美、堀江由衣、川澄綾子、能登麻美子、竹達彩奈、榊原良子
(C) 2014 「艦これ」連合艦隊司令部

Fate/Zero

Fate/Zero

放送日: 2011年10月1日~2011年12月24日   制作会社: ufotable
キャスト: 小山力也、川澄綾子、大原さやか、速水奨、関智一、中田譲治、阿部彬名、山崎たくみ、緑川光、浪川大輔、大塚明夫、石田彰、鶴岡聡、新垣樽助、置鮎龍太郎
(C) Nitroplus/TYPE-MOON・ufotable・FZPC

Fate/Grand Order -First Order-

Fate/Grand Order -First Order-

放送日: 2016年12月31日   制作会社: Lay-duce
キャスト: 島﨑信長、高橋李依、川澄綾子、米澤円、鈴村健一、杉田智和
(C) TYPE-MOON/FGO ANIME PROJECT

ログイン/会員登録をしてこのニュースにコメントしよう!

※記事中に記載の税込価格については記事掲載時のものとなります。税率の変更にともない、変更される場合がありますのでご注意ください。

関連記事