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現代中国ガンダム事情
今年は規制や炎上などのニュースが続いていることもあり、中国のオタク界隈はどこも窮屈な空気が漂っているそうです。
しかし、そんな中でガンダム関係は上海に建造された実物大フリーダムガンダム立像や「機動戦士ガンダムSEED」の再始動、「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」の上海国際映画祭での上映やbilibiliでの配信などが中国のファンから歓迎され、現地のファンも久々に盛り上がるなど、比較的明るい空気になっている模様です。
そんなわけで、今回は現在の中国のガンダム事情に関して大まかなところを紹介させていただきます。
中国国内におけるガンダムの人気や扱われ方に関してはさまざまな独自の事情がありますが、恐らく最大の特徴は、「ガンダムSEEDが中国でもっとも人気が高いガンダム作品となっている」ということかと思われます。
中国では「ガンダムSEED」と、続編の「ガンダムSEED DESTINY」が、ちょうど中国でオタク層が形成されていく時期と重なっていたことから、上のほうの世代のオタクにとってはオタクとしての入門作品であり定番の人気作品となっていました。
「SEED」シリーズは、当時の中国でライトな層や女性からの支持も含むもっとも広い範囲で人気を獲得しているので、特定の世代にとってはイロイロな意味で思い出の作品となっていますし、現在も中国のオタク界隈では、キャラクターや設定の考察からネタ的な方面まで多種多様なガンダムSEED関係の話題が飛び交っています。
そういった背景があるので、「SEED」に関しては「中国におけるファーストガンダム」的な存在と言っても過言ではありませんし、中国国内に実物大ガンダムを建てるならば、やはりSEEDの主役機であるフリーダムガンダムというのが妥当な選択になります。
一応中国では「SEED」以前にも「機動戦士ガンダム 第08MS小隊」などのOVA系ガンダムが、その内容に加えて、海賊版で少ないディスク枚数で終わりまで見ることができたことなどから地道にファンを獲得していたそうですが、中国本土で本格的にガンダム人気が確立されたのはやはり「SEED」以降ということになる模様です。
また日本でガンダム人気の基礎になっている宇宙世紀系のガンダムに関しては、マニア寄りの人からの支持が高く、「機動戦士ガンダムUC[ユニコーン]」からファン層が大きく拡大していったそうで、「UC」以外の宇宙世紀系作品では「機動戦士Zガンダム」の評価も比較的高いとのことです。
ちなみに中国では初代のガンダムについては、「価値は知られているしキャラやMSの人気も悪くはないものの、作品の人気という面では今ひとつ」といった扱いになっているそうです。
これに関しては作品の古さに加えて、中国ではシャープで整った絵柄が好まれるといった事情も影響しているようです。
実際、私も知り合いの中国のオタクな人たちから
「初代ガンダムが名作だというのは知っているのですが、やはりキャラデザや演出が古くて……」
「知識のために我慢して見る人もいますが、やはりそこまでするような人は多くないです。ほかのもっと新しい作品を見たほうが楽しめるし、現在盛り上がっている話題に加われるわけですから」
「初代ガンダム関係はやはりゲーム経由で知ることが多いですね。そちらでは現代風の絵柄と演出になっているので抵抗がないです」
といった話を聞いたことがあります。
そのほかに中国で評価の高いガンダム作品には、「ガンダムビルドファイターズ」があるそうです。これは作中に散りばめられたガンダムネタと、ガンプラという設定ではあるものの、最新の作画で動く旧作のMSを楽しめる、蓄えたガンダムネタを語れる作品として歓迎されたそうです。
ただ、ガンダムビルドシリーズの続編は徐々に中国のガンダムファンの好みから外れていってしまったようで、現在はあまり話題としての盛り上がりはないといった話も聞こえてきます。
ちなみに、中国のガンダム事情に関する独特な要素としては、アニメ以外にもうひとつ、オタクの趣味としての「ガンプラ」の存在感の強さがあります。中国においてガンプラは、数あるオタク趣味の中のひとつではなく、「オタクの代表的な趣味」といったレベルの扱いになっているとのことです。
これに関しては中国では昔からミリタリー系や車両系をはじめとした模型がかなりしっかりとした趣味として確立されていたので、ガンプラに移行するのが容易であったことや、ガンプラがコレクションとしての価値も高く評価されているといったことなどが理由となっているそうです。
しかし、以上のように中国のオタク界隈で一大ジャンルを築いているガンダムではありますが、実は中国で歓迎されるような新作が出ないことや、若い世代のロボットアニメ離れなどから、近頃は閉塞感が漂い出していていたそうです。
特に中国におけるロボット系ジャンルの衰退は厳しいものがあるらしく、現在の中国の若い世代のオタクにとってロボットは「カッコ悪いジャンル」「おじさんが見る作品」といった扱いをされるようにもなってきているのだとか。
それだけに「閃光のハサウェイ」が現在の最先端のアニメとして登場したのは、中国のガンダムファンにとってうれしかったそうですし、さらに中国のオタクにとっての思い出の作品である「SEED」の再始動のニュースも加わって、近頃の中国ではガンダムファンのテンションがかなり高まっているとのことです。
(文/百元籠羊)