やはり動きが鈍い中国の1月新作アニメ事情と、実は難しい? 中国での新作アニメ一括配信【中国オタクのアニメ事情】

2023年02月12日 12:000

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実は中国でも新作アニメの全話一括配信の効果はいまいち?


近年のネット配信プラットフォームの発展やビジネスモデルの変化などにより、日本のアニメのネット配信事情も何かと変化していますが、独占あるいは先行配信の新作アニメが全話一括で配信されるケースも目に付くようになってきているかと思います。
そういった全話一括で配信される日本の新作アニメは、中国国内の別のプラットフォームを通じて配信される際にも一括で配信されることが多く、中国のオタク界隈でもプラットフォーム側の方針も含めて何かと意識されるようになってきているようです。

実のところ、中国のアニメファンの間で日本と同じように週1のペースで最新話を追いかける習慣が広まったのは比較的最近の話です。中国のテレビで放映されるドラマなどは基本的に1日1話の形式ですし、過去に中国のテレビで放映された日本のアニメもおおむねそのペースで1日1話、作品によっては数話まとめて放映されていた模様です。

また非正規ルートのほうでも、海賊版ディスクが主流だった時代は「まとめて見る」のが主流だったようで、「アニメを毎週1話のペースで追いかける習慣」に関しては、通称「字幕組」とも言われる中国のファンサブグループの活動が活発になっていった00年代後半以降に徐々に広まっていった模様です。

そういった背景もあったことから、中国のオタク界隈では
「日本のアニメの毎週1話のペースは遅すぎる」
「なぜ日本のアニメはまとめて作ってまとめて配信しないのか?」
などといった声は常に出ていましたし、新作アニメの一括配信に関しても当初は
「中国のテレビの視聴習慣的に中国市場では一括配信のほうが向いているのでは?」
「厳しくなっていく国内の審査手続きを考えると全話一括納品で審査を受けられる作品のほうが審査も配信も安定するので何かと有利なはず」
などといった見方も多かったそうです。

しかし、一括配信される日本の新作アニメが出るようになってからしばらく経ちましたが、中国のオタク界隈では、一括配信の効果や影響力が事前に予想されていたよりも目立たないといった見方や、「日本の新作アニメと全話一括配信は相性が悪いのでは?」
といった疑問も出てきているそうです。

中国のオタクな方々から聞こえてくる話によると、一括配信の作品はある程度の再生数は稼ぐものの、作品関連の話題がすぐに消えてしまいがちなようで、配信開始前の宣伝による盛り上がりとのギャップを感じることも珍しくないとのことです。

このあたりの事情について、中国のオタクな方々からは
・一括配信はファンのコミュニティが盛り上がらないまま作品が消費されて終わってしまう。毎週1話の作品であればファンの間での話題がそのまま強力な宣伝になっていたが、一括配信の場合はファンによる話題の拡散が少ないので、ライトなアニメ視聴者が作品を見つける前に作品が埋もれてしまう。

・ファンが知識を深める、作品に関する討論を通じて理解する時間がない。毎週1話の作品なら各話の間に討論が行われてファンの知識が「鍛錬」されるので、面白い作品なら作品に関して深く語れる熱心なファンが自然と生み出されていたし、それが人気の大きさや長さにつながっていた。
しかし全話一括の場合は、最初に持っていた個人の知識や理解力のみで作品を最後まで視聴することになるので、作品を深く理解できない人も多くなる。

などといった指摘がありましたし、ほかにも新作アニメの一括配信については
「たくさんまとめて見られること自体はうれしいですが、みんなで作品に付いて語って楽しむことが難しいのは残念に思えます」
といった感想も出てきました。

ちなみに一括配信によって中国で大人気になっている作品が出ていないわけではありません。たとえば「サイバーパンク: エッジランナーズ」などは、昨年後半の一時期、中国のオタク界隈の話題を独占するような勢いの人気と高い評価の作品になりました。
また、この作品についてはストーリー展開、特に結末に関して
「一括配信で最後まで見ることができたから安定して高評価になった」
「過去に中国で批判が多発したストーリー展開を考えると、この作品も仮に毎週1話のペースで追いかけた場合、自分の期待と外れる展開だったと反発する人がかなり出ていたのでは?」
などといった意見も出ている模様です。

もっとも、中国のオタクな方の話によれば、「サイバーパンク: エッジランナーズ」に関しては中国国内向けの正規配信はなく、当時の中国のオタク界隈ではマニア層を中心に伝言ゲーム的に時間差のある形で作品とその評判が広まっていったそうです。
それに加えて原作ゲームの知名度が高く、中国にも世界観を把握しているユーザーがいて関連情報が整備されていたなどという事情もあるので、新作アニメの一括配信の成功例とするには例外的な部分が多過ぎるといった見方も強いのだとか。

現代の環境で配信されるアニメ作品の人気や話題性については作品自体のパワーだけでなく、視聴者側や配信するプラットフォーム側の事情の影響も大きくなっているかと思います。
中国における新作アニメの全話一括配信に関しても、現代の環境における複数の要素がからむことによる難しさがイロイロな面から浮かび上がってきているのかもしれませんね。

(文/百元籠羊)

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