この20年で大きく変わった中国の三国志事情、 昔は嫌われていた曹操が今では大人気で感情移入の対象に【中国オタクのアニメ事情】

2023年01月01日 12:000
この20年で大きく変わった中国の三国志事情、 昔は嫌われていた曹操が今では大人気で感情移入の対象に【中国オタクのアニメ事情】

中国オタク事情に関するあれこれを紹介している百元籠羊と申します。
今回は2022年最初の記事になるということなので、この20年程の間に大きく変化している中国における三国志事情、各勢力や武将の評価や人気などについてまとめてみようと思います。

昔は中国で三国志を語るのが難しかった


日本では、中国と言えば三国志の国というイメージのある方も少なくないかと思いますが、実は中国社会における一般的な三国志の知識や評価というのは安定したものではなく、特にこの20年ほどの間で非常に大きな変化が起きています。

私は1990年代前半から2000年代半ばにかけて中学~大学と現地の学校に通っていましたが、当時の中国では「日本の三国志好きのレベルで三国志の話題が通じる人」に出会うのはかなり難しいものがありました。
もちろん当時の中国でも「三国演義」は「中国が世界に誇る作品」とされていましたし、テレビで三国志の大河ドラマが放映されたり、ドラマを撮影した場所が観光地になったりしていましたが、三国志のストーリー全体を通してきちんと理解、把握している人はそれほど多くなかったようです。

これに関しては当時の中国では
「日本の吉川英治や横山光輝のような、手軽に触れることのできる三国志関連コンテンツがなく、三国志全体を通して把握するには原著を読まなければならなかった」
というのが理由として大きかったのではないかと思われます。

中国でも伝統的に「三国演義」の人気は高く、敷居の高い伝統芸能から民間レベルまで「三国演義」を題材にしたものは少なくありません。しかしこういった作品はどれも個別のエピソードを元にしたものです。
また原著にあたるとしても、「白話小説(はくわしょうせつ)」と言われる口語体の小説とは言え「三国演義」は古典作品なので、一般の人間からしてみればかなりハードルの高い作品となってしまいます。

それに加えて、ひと昔前の中国では子どもや青少年向けの三国志コンテンツが少なかったという事情もあります。昔の中国にあった、子どもや青少年向けの三国志関連コンテンツは連環画(絵本の一種で中国の漫画のプロトタイプとも言われています)くらいで、あとは学校の語文(国語)の教科書(私も中国の学校の古文の授業で諸葛亮の出師表を勉強したことがあります)などになるか……といった状態だったそうです。
実のところ、中国で「三国演義」の長編大河ドラマが作られたのは1994年、テレビアニメで長編作品が放映されたのは2009年です。近年はさまざまな中国国産の三国志を題材にしたドラマやゲーム、マンガなどが目に付きますが、ひと昔前の中国では三国志関連のコンテンツに触れる機会が日本と比べてかなり少ない……という状況だったようです。

そんなわけで、2000年代初頭あたりまでの中国では、日本人が一般的にイメージするような三国志事情に精通した「さすがは三国志の本場と思える中国人」をみつけるのはかなり難しく、当時の中国に留学していた日本人留学生の中には
「三国志について話しませんか!? と中国人の学生に熱心に話しかけてはみたものの、残念ながら満足できる相手は見つからなかった……」
などという体験をした人もいました。
その日本人留学生の方から聞いた話によると、人気が高い(と思われる)蜀関連の武将、たとえば徐庶や王平などについても通じなかったそうです。王平についてはともかく、劉備に軍師の必要性を教え、諸葛亮と出会うきっかけを作った徐庶に関して通じなかったという話については、話を聞いた私も少し驚きました。

こういった中国における三国志の評価、扱い方を大きく変えるきっかけとなったのが2000年代後半頃に巻き起こった易中天と「品三国」のブームだそうです。易中天は中国中央電視台の番組「百家講談」における歴史の講義で、そのユーモラスな分析や現代的なたとえで「お堅い」歴史モノを噛み砕いて話したことが大人気となり、著書の「品三国」(三国志品評)も当時の大ベストセラーになりました。

またこのブームが中国に与えた衝撃の中には
「マジメな作品である三国志、古典や歴史をネタにしても構わない」
というものもあったそうです。
それ以前の中国にも、三国志や西遊記といった中国の古典歴史モノを題材にした作品がなかったわけではありませんが、中国社会には昔から古典や歴史などの名作に関しては
「改変せずにオリジナルのままでなければならない」
という考えが存在しました。

この「改変せずにオリジナルのままでなければならない」という考え方については現在の中国でもさまざまな場面で出てくるものですが、この易中天と「品三国」ブームの頃は、テレビなどの公共のメディアでそういったことをやるのはある種のタブーといった空気がいまだに濃かった時期なので、当時はブームに対してかなり強烈な批判も出ていたそうです。
しかし厳しい批判が巻き起こりながらも、「学術の娯楽化」とも言われたこの新たなジャンルの勢いは止まらず、中国の名作古典の現代的な価値観による翻案と娯楽化も広がっていきました。
そして現在の中国の娯楽界隈では、翻案的な方向での三国志の映像コンテンツは珍しいものではなくなっていますし、近年非常に活発なソーシャルゲームにおいてもキャラクターコンテンツとしての三国志武将が何かと活用されるようになっています。

また、これに加えて、中国における三国志関連の知識の増加とイメージの変化については、中国のネットでいわゆるwiki的なサイトが整備され、そこの三国志カテゴリーの情報が増えたことなどにより、この20年ほどの間に「中国語環境でアクセスできるわかりやすい三国志関連の情報」(少々おかしな話に聞こえるかもしれませんが)が爆発的に増加したことによる影響も大きい模様です。
近年の中国では、三国志関連情報が増加し続けるネット環境の中で討論し、wiki的なサイトを調べては知識やコピペ情報を投げ合う……などといった流れが繰り返されて、三国志関係のイメージと知識も急速に強化されていったという事情もあるのだとか。

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