8月後半にようやく始まった中国の7月新作アニメ事情と、さらに厳しくなっていく日本関連イベントの開催【中国オタクのアニメ事情】

2022年09月11日 11:000

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落としどころの見えない今の中国の反日気運とイベントなどへの影響


日本国内のニュースでもたびたび報道されている通り、最近の中国では反日気運がかなり強まっています。日本でも報道された、江蘇省で浴衣を着ていた女性が警察に連行されて取り調べを受け浴衣を没収される事件が発生するなど、現在の中国では日本関連のモノに対する反発が非常に強まっており、今年の夏休み期間のオタク関係のイベントにも大きな影響が出ている模様です。
関連する報道や中国のオタクの方々の話によると、こういった動きはナショナリズムの高まりを背景にした、日本も含む国外に対する反発、それに加えて国内の不満などによる全方位攻撃の一環のようなものといった見方もあるそうです。

中国のオタクの方々の話では、反日関連の空気や動きを特に顕著に感じるようになったのは7月の「夏日祭」(夏祭り)批判あたりからだそうです。
近年中国各地で開催されていた日本の「夏祭り」から来ている「夏日祭」の名前が付いたイベントには、いわゆる二次元文化などオタク関係のものも多く、この突然の夏祭り狩り(?)に関しては中国のオタク界隈もやや困惑気味で
「これまで特に問題なく開催できていたのに、なぜ今年になって突然こんなに批判されるのか」
などといった声も出ているそうです。

しかし今年中国各地で「夏日祭」(夏祭り)の名前の付いたイベントが軒並み中止に追い込まれていることに対しては
「今の空気ではどうしようもない」
といった諦めの声も出ているとのことです。

教えていただいた話によると、中国の夏祭り狩り(?)の発端になったとも言われている南京では、「夏日祭」だけでなくウルトラマン関連のイベントも中止になっているなど、日本関係が意識されるイベントやコンテンツの扱いはどんどん厳しくなっている模様です。
またその影響は中国全土に広がっていき、各地のイベント主催者もさまざまな対応を迫られることになったそうで、8月中旬に開催されたハルビンのあるイベントではついに参加規則に「外からの飲食物持ち込み禁止」や「危険物持ち込み禁止」といったものに加えて「日本文化禁止」(和服等日本文化を象徴するオリジナルキャラや服装や道具の持ち込み禁止)という文言が入ることになってしまったそうです。

このあたりの事情に詳しい中国のオタクな方からは
「主催者側の意図は、おそらく一般の参加者に対して『日本文化的で目立つ服、和服や浴衣やセーラー服などのコスチュームでイベントに来ないように』と伝えるものではないかと思われます。そしてできるだけ広い範囲に適用できるように『日本文化禁止』にしてしまったのではないかと……」

「南京の夏日祭関係をはじめ7月に入ってから日本関連というだけで何かと批判が出るようになり、中止に追い込まれたイベントも少なくないので、主催者側が過敏になるのも無理はありません。またハルビンでは少し前に、別のイベントで参加者のコスプレイヤー同士がイベント会場内でポルノ的なポーズ、からみの写真を撮っている動画が広まって大炎上した事件がありました。その背景を考えると言い方に大きな問題はありますが、主催者側が禁止項目を増やしていったのは理解できなくもないです」
などといった話もありました。

このところの中国におけるオタク分野に対する規制強化や批判と炎上によるダメージに関して古参の中国のオタクの方の話を聞いたり私自身の経験などを振り返ってみたりしながら考えていくと、少々極端な話になりますが、現在の状況は2012年の尖閣諸島関連、特に尖閣諸島国有化以降の時期に匹敵しかねないほどの厳しさになってきているようにも感じられます。

2012年当時の中国では各所で日本関連要素が規制あるいは自主規制によって消えていき、オタク分野に限らず日本関連のイベントが軒並み潰れました。また日本関連書籍の出版流通禁止によって、当時の中国市場では比較的有望な分野だった日本のライトノベルの簡体字版の翻訳出版がなくなるなど、オタク分野に対する大きなダメージになった事件も発生しています。

さすがに現時点では反日暴動や日系企業と商店に対する破壊や略奪まで発生した2012年と比べるとまだ大人しいものの、頻度と規模が近年急拡大している中国のネットにおける分野問わず、批判と通報それにともなう炎上などの背景と合わせて見ると、10年前とは違った息苦しさや落としどころのなさによる不安を感じるといった話も聞こえてきます。

中国国内では7月から9月にかけては対日感情が悪化する行事が続きますし、現在の中国を取り巻く環境や国内事情を考えると「中国国内に貯まっている不満の落としどころ」的なものも見えてきません。
オタク関連に限定して見ていくと、2012年の際には9月が騒動のピークで12月頃にはやや落ち着き日本関連のイベントも徐々に開催されるようになっていきましたが、10年前と現在では中国社会の環境も若者の考え方も、オタク分野に触れる人間の規模も別物になっています。

オタク分野に限らず中国では、予想通りにいかない、計画通りに進まないのは珍しい話ではありませんが、昨今の状況に対しては中国のオタクな方々も私自身もさすがに頭を抱えてしまいますね。

(文/百元籠羊)

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