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長いセリフで語るよりも「イェーイ!」のひと言で、音楽的なノリを演出する
── とは言っても、「銀河旋風ブライガー」にロボットはちゃんと出ますよね? 四辻 でも、ちょこっとですよ。ロボットの出ないエピソードもあります。
── メカよりは、ロックがイメージソースだったんですね。 四辻 あの頃の頭の悪い少年は、みんなロックンローラーになりたかったんですよ。僕もギターでも何でも弾いてみたけど、どうしてもうまくいかない。だったら、アニメーションでロックをやってやろうと思いました。サンライズの先輩に「ロボットアニメでロックをやりたい」と話したら、猛反対されました。「だったら、見てろよ」と若気の至りで山本正之さんを呼んできて、自分の好きな曲をテープに入れて「こういうシーンにはこういう曲が欲しい」と、ぜんぶ聞かせたんです。彼は、その通りに楽曲をつくってくれました。
── すると、山本正之さんを呼んできたのは四辻さんだったんですか? 四辻 そうですけど、山本優さんも「タイムボカン」(1975年)で山本正之さんと出会っていますからね。僕も岩田(弘)さんというプロデューサーに頼まれて、「ヤットデタマン」(1981年)の演出をやりました。だけど、山本正之さんのよさはもっと生かせるはずだと思っていました。山本正之さんはロックではあるけど、ちょっと演歌が入っている。僕たちの世代って、みんなそうなんですよ。
── すると「ブライガー」は、音に対してはかなりこだわったわけですね? 四辻 音響監督は本田保則さんでしたけど、選曲からアフレコから、ぜんぶ僕が口出ししていました。それと、ライターはシナリオに書かれている描写やセリフを切られると、やっぱり怒ります。山本優さんのシナリオには、長いセリフがいっぱい書いてありました。「わかった、じゃあ俺はこうしてああして、こうするから……」みたいな長いセリフを、僕は「イェーイ!」のひと言ですませてしまう。
── J9シリーズの主人公たちは、お互いに親指を立てて「イェーイ!」のひと言だけで通じ合ってしまうんですよね。 四辻 そう、あの「イェーイ!」は僕の発明なんです。セリフで説明するよりも「イェーイ!」の後でドン、と音楽が入ったほうがテンポは絶対によくなる。付き合いが長いせいなのか、山本優さんは僕がバシバシとセリフを切っても、まったく怒りませんでした。最初のころは「俺の書いたセリフがない……」「ここでセリフがあるはずなのに……」と、ボヤいてはいました。だけど、「ここで悲しいセリフを言わせるより、泣きのギターが入ったほうがわかりやすいし、感情が強く伝わるじゃん?」と説明すると、だんだんわかってくれるようになりました。
昔のレコード盤って、片面が24分ぐらいでしたよね。30分のアニメ番組は、正味24分ぐらいです。つまり、レコードのA面を聴いているような感じのアニメをつくりたかったんです。だから、カットは短いしストーリーはあちこち飛ぶ。最初にオープニングとエンディングを決めてから、話の中身は後から考える。そういう感じで、つくっていました。 それと、「ブライガー」のキャラクターたちって、みんな僕なんですよ。本当は、1人ひとりのキャラクターを個性的に描き分けないといけません。だけど、みんな僕の分身なので、誰がどのセリフを喋っても大丈夫になっている。だから、アフレコ現場で好きなように変えることができたんですけどね。
── 毎回、「お呼びとあらば即参上!」などの前口上が入るのもカッコよかったです。 四辻 「タンサー5」のとき、「地球には3794の謎があると言われている……」というナレーションを冒頭に入れたら、カッコよかったんです。「本当に3794も謎があるんですか?」と聞かれるんですけど、その場で僕が考えたんだから、わかるわけがない(笑)。「ブライガー」でも、どうしても冒頭に洒落た感じの口上を入れたいと言ったら、山本優さんがカッコよく書いてくれました。そういう隙間隙間で、僕たちの勝手を許してくれた人たちがいたんです。スポンサーさんも、そこまで目が届かなかったのかもしれません。
── J9シリーズが3作も続いたということは、「ブライガー」は成功したんですよね? 四辻 「ブライガー」のおかげで、「四辻の作品はロボットが出ないのにロボットの玩具が売れる」という結果を残せたので、許してもらえました。視聴率も、そこそこよかったそうです。ロボットに主眼は置いてない作品ですけど……ロボットが嫌いなのではなく、僕にカッコいいロボット物をつくるセンスがないだけなんです。自分流のロボット物をつくればいいや、という感じでした。