各方面で大反響だった「寿司プラモ」のその後とこれからの展開を、秋東精工さんに聞いて、ついでに金型で成型させてもらった!【ホビー業界インサイド第71回】

2021年06月26日 10:000

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次の製品を模索中──面白いプラモデルを作り出すには、SNSでの声が欠かせない?


── いま、ネタのランナーを抜いてもらいましたが、こんなに早く成型できるものなんですか?

藤原 はい、射出に3秒、冷却に3秒、計6秒でランナー1枚を抜くことができます。ちょっと、やってみませんか?

── はい……やっぱり早いですね、扉を閉めて開くだけで、簡単に成型できました。

藤原 私が最初に抜いたものは、型の中に熱が残っていたので、少し樹脂が焼けてしまいました。2枚目のほうは、きれいに抜けましたね。この成型機は半自動で、射出や冷却の数値は、金型ごとに打ち込んでいます。このネタの場合は、1時間に100枚ほど抜くことができます。

── きれいなサーモン色ですが、樹脂はどこか業者に発注するのですか?

藤原 樹脂は、自分で調合しています。半透明の樹脂に、グラム単位で混ぜる顔料を計って、いつも同じ色になるように調整しています。成型色だけで、塗装しなくても見栄えがするよう、質感には非常にこだわりました。シャリ用の顔料を混ぜた樹脂を使えば白いネタを成型できますから、「イカVer.」として製造してもいいかな……と考えています。


── それにしても、なぜ餃子や寿司のプラモデル化に、ここまでこだわるのですか?

藤原 飲食店用の食品サンプルは、非常に人気がありますよね。食品サンプルを自宅で再現できる体験キットまで販売されています。しかし、プラモデルの世界ではロボットなどのキャラクター物が多くて、食品のプラモデルは滅多にありません。その状況に、ずっと違和感があったんです。企画として「寿司プラモ」はずっと考えていたのですが、Twitterで「こんな寿司のプラモデルがあればいいのに」というイラストをお見かけして、描かれたンバヂさんに連絡をとってお断りしたうえで、企画を実現させることにしました。 それと、食品のプラモデルなら外国人にも受けるだろうから、当初はオリンピックの年に発売することで、インバウンド効果を期待していたんです。その目論見は外れてしまいましたが、幸い「海外でも発売しないか」というお声がけをいただいたので、ひょっとすると海外にも流通するかも知れません。

── 今後のラインアップは?

藤原 やはり、食品にはこだわっていきたいです。とりあえず、イクラの軍艦巻きを予定しています。イクラの部分は、もちろん実物のお寿司を取材して、ちゃんと数を調べて再現します(笑)。海苔の部分はどういう仕様にするか、社内で検討しているところです。

── 「寿司プラモ」のヒットで、秋東精工さんに変化はありましたか?

藤原 ええ、自社製品がヒットして認知度が上がりましたので、「自分も企画をやりたい」という社員が出てきました。カプセルトイでもプラモデルでも、リアルに再現した昆虫や動物が売れていますので、身近なものを玩具化・模型化することが、ホビーのひとつの流れになっていると感じています。昆虫や動物、食品は、キャラクター物と違って版権を取らなくてもいいので、弊社のような小さなメーカーにとっては助かります。先ほど「寿司プラモがあったらいいのに」というツイートの話をしましたが、Twitter上で「次は何をプラモデル化してほしいか」のアンケートをとっても面白いかもしれません。
私個人はメーカーに憧れがあるので、オリジナル製品を作ってメーカーらしいことをして、わくわくしたい気持ちが強いです。Twitterは、お客様のいろいろな声であふれているので、次のネタを探すために見ているだけで楽しくなりますね。「寿司プラモ」をシズル感たっぷりに、ていねいに塗装してくださっている方もいます。弊社の製品がここまでバズったのも皆さんの声があったからこそですし、とてもありがたく感じています。



(取材・文/廣田恵介)

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