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作り手と受け手の「絶対このままでは終わらせない」という熱気
── 確か、ラピュタ阿佐ヶ谷さんのベテラン映写技師さんが「マイマイ新子と千年の魔法」を見て、上映の後押しをしてくれたと聞いています。 石井 映写技師の遠藤が見にいったときには、もうラピュタでの上映は決まっていたのです。仕事が終わって、「こういう話が来ているんだけど」と話した日、遠藤が「いま上映しているから、ちょっと見に行ってくる」と出かけて行ったんです。作品を見終わった遠藤から、「これは絶対に上映すべき」とメールが来ました。
── その後、石井さんご自身もご覧になったと思うのですが、どのような印象を持ちましたか? 石井 片渕須直監督の「アリーテ姫」は見ていたので、そこから内容を想像しました。上映が決まってから、まったく前情報がない状態で、映画館の全員で業務試写を行いました。印象としては「すごくいいんだけど、これを売るのは確かに難しいな」と思いました。ですから、映画を見て感動して「どうしても上映したい」というよりは、現実的な問題として空けられる枠があったこと、年末の忙しい時期にスタッフを確保できたこと、赤字にならない最低の動員数が見込めたこと、これなら上映しても大丈夫ではないか……と判断しました。
「マイマイ新子と千年の魔法」はファミリー向けに公開したと思うのですが、ラピュタでレイトショー上映するにあたって大人向けにターゲットを切り替えようとしているのは、宣伝の方たちの動きを見ていてもわかりました。そういうのもアリだと思いました。
── 新宿ピカデリーでは朝1回の上映に減らされたまま上映終了(2009年12月17日)、1日空けてから、ラピュタ阿佐ヶ谷で夜9時からの上映が始まりました。しかも、チケットの発売は毎朝10時15分から。それでも毎日満席だったのは、なぜだと思いますか? 石井 新宿ピカデリーさんの時間帯が、お勤めしている方にはハードルの高い時間帯だったことが大きいと思います。ただ、私は8日間のレイトショーで、150人来てくれればいいと思っていました。
── ラピュタさんは48席ですから、ほぼ3日分ですね。 石井 150人入ってくれれば、損は出ないんです。連日満席なんて、予想していませんでした。ただ、ラピュタのHPに上映情報を掲載してから、アクセス数が大変なことになっていたんです。何かの間違いではないかと思うぐらい。「これは何かが起きているのかもしれない」と、そのときに思いました。だけど、昼間の早い時間帯にチケットが売り切れてしまうのには驚きました。
── 満席は、よくあることなのですか? 石井 そうですね。48席しかない小さな映画館ですから、滅多に上映の機会のない映画の場合、満席になることはあります。だけど、特別のトークショーなどがない上映で、レイトショーのチケットが昼ごろに売り切れてしまうことはありませんでした。ちょっとビックリしましたね。
── お客さんの反応は、どうでした? 石井 お客様は結構、同じ方が何度かいらっしゃっているのを目にしました。「マイマイ新子~」の場合、監督だけではなく作り手の方たち、売る方たち、さらには映画を見た方たち、ファンの方たちの「絶対このままでは終わらせない」という熱気がすごくて、その熱気が劇場に渦巻いているのは、とても感じました。新作を上映したとしても、なかなかそういう場には直面しません。