“巨乳”と“キャストオフ”を両立させる努力! ダイキ工業の美少女フィギュア開発、秘密の舞台裏!【ホビー業界インサイド第63回】

2020年09月12日 11:000

※本コンテンツはアキバ総研が制作した独自コンテンツです。また本コンテンツでは掲載するECサイト等から購入実績などに基づいて手数料をいただくことがあります。

ヌードやエロを作るのには、高い造形技術が求められる……


── ところで、ダイキ工業さんのフィギュアは、服や下着を脱がせられるものが多いですよね? どうしてですか?

小川 着せ替え要素があると面白いのではないかと思ったんです。“キャストオフ”という用語がない初期のころから、脱がせられるフィギュアを作ってきました。だけど服を別パーツで整形するため、金型が多くなって開発コストは高くなってしまいます。脱がせられるフィギュアの金型代で、脱がせられない水着フィギュアが2体つくれます。金型の数が、1.5倍ぐらい増えちゃいますから。それと、ヌードを作るのって難しいんです。

── ヌードなら、早く原型ができそうな気がしてしまいますが?

小川 ヌードは体の線に、嘘をつけないんです。スカートを履いた魔法少女や甲冑を着た騎士なら、体の線は出ませんよね。ちょっと派手なポーズでもごまかしがきく。だけど脱がせる以上は、腰骨の位置、おへその位置、性器の位置がちゃんとしていないと、不自然に見えてしまうんです。逆に、正確にしすぎても違和感が出ます。僕はメカなら得意なので、「5ミリ削ってくれ」と言われたら自分でできてしまう。だけど、「おっぱいを少し小さくしてくれ」「足を少しだけ細くしてくれ」と言われたとしても、どこをどう削ったらいいのかわからない。そういう意味で、ヌードは難しいです。それと、金型も大変です。

── そうなんですか? ヌードなら、金型はシンプルになるのでは?

小川 ヌードの場合、体に継ぎ目ができると興ざめしてしまうんです。だから、パーツを不自然に分割しなくてもいいポーズを考えないといけません。ヌードやエロはシンプルであればあるほど、難しいです。

── 原型師は、増えてきていますか?

小川 増えています。ゲーム業界で3Dキャラクターをつくっていた人が、けっこう上手なんです。ただし、出力した経験のない人が多い。フィギュア開発は原型に3か月、金型に6か月、その後の生産を含めると1年かかります。原型師との付き合いは長くなるので、誰に作ってもらうかは賭けですね。初めて組む相手とは考え方の違いもあるし、答えが出るのは1年後なので。

── お客さんは、濃い方が多いのですか?

小川 それが、意外と濃くないんです。お金持ちの方が多いです。フィギュアを買ってから原作のゲームを知ったりとか、イラストレーターの名前を知らずに買われる方が多いです。それと、巨乳キャラはよく売れますね……まあ、ウチの場合だけかもしれませんが。

── 小川さんご自身は、巨乳キャラや美少女キャラはお好きなんですか?

小川 もともと僕には、オタク趣味はありませんでした。だけど、この世界に入ってみたらけっこう楽しかった(笑)。今はコミケに行って、会場で会った人と食事して帰ったりするぐらい親しくしています。若いイラストレーターさんは20代前半なので、一緒に話すのも大変ですけどね。女性のイラストレーターさんも多いので、並んで秋葉原を歩いていると、これからメイドカフェに連れて行かれるオジサンに見えてしまう(笑)。美少女キャラでも、女性はあっさり描きますよね。


── 男性は、気負って描いてしまうのでしょうか?

小川 男性がおっぱいを描くと、やけに張りのある形になりますね。原型師も、ストレスが溜まってくるとロケット型のおっぱいになっていくんです。おっぱいの形を見ると、ストレスが溜まっているかどうかわかる(笑)。

── 予約受付中の「ランドリーガール 翠川あまね」のデコマス(彩色見本)を見ると、セーターの質感がすごいですよね。

小川 だけど、デコマスの品質を工場の量産品で再現しようとすると大変です。たとえば、エアブラシで3色のグラデーションが塗ってあるところを、2色でうまく見せるといった工夫が必要になります。量産品ではできないことが多いんです。

── 確実に工場でできると保証されている技術だけで、フィギュア製品をつくればいいのではありませんか?

小川 まずデコマスで最高の状態をつくっておいて、そこから何とか方法を考えて、デコマスそっくりの製品に近づけていくしかないんです。もちろん、知らない人が見ればデコマスと見分けがつかないぐらい質のいい製品をつくれます。そういう努力を重ねないと、製品をつくる技術が伸びていかないんです。



(取材・文/廣田恵介)

画像一覧

ログイン/会員登録をしてこのニュースにコメントしよう!

※記事中に記載の税込価格については記事掲載時のものとなります。税率の変更にともない、変更される場合がありますのでご注意ください。

関連記事