なぜ今回FGOは炎上しなかったのか? 2018年、中国に衝撃を与えた日本のアニメは?【中国オタク事情新年編】

2019年01月01日 18:000
なぜ今回FGOは炎上しなかったのか? 2018年、中国に衝撃を与えた日本のアニメは?【中国オタク事情新年編】

中国オタク事情に関するあれこれを紹介している百元籠羊と申します。
今回は2019年最初の記事ということなので、昨年2018年の終わりにまた中国で大きな反応のあった「Fate/Grand Order(FGO)」についてや、それに関連した近頃の中国のオタク界隈において何かと問題になりやすい「中華的要素」「中国歴史文化ネタ」について、それから昨年中国で特に人気が高かった作品とその影響を振り返ってみようかと思います。

なぜ今回「Fate/Grand Order」は炎上しなかったのか、空気を塗り替えた「シナリオ担当:虚淵玄」の直前情報


中国でも大人気となっているFGOは、昨年11月下旬に日本版の最新ストーリーとして、秦をベースにしたシナリオと始皇帝をはじめとする新キャラが実装されました。
この件に関しては予告情報が出た時点で、ファンの間だけでなく中国のオタク界隈でも
「炎上する可能性が高く、そして炎上したら被害や影響がかなり大きくなるのでは」
などといった方向も含めてイロイロな意味で注目を集めていました。

この背景としては一昨年に雑誌掲載された荊軻(けいか)を主人公にしたFGO外伝短編小説に出てくる始皇帝の描写が理由となって中国のオタク的歴史上屈指のレベルで大炎上となり、中国から日本のクリエイター関係者のアカウントへの突撃まで発生するといった事件がありました。

この件は中国で日本のコンテンツを展開した際に起こる炎上が、日本におけるコンテンツやファンコミュニティにも被害を及ぼすこと、近年の中国における炎上は翻訳経由の伝言ゲームや一部の切り取りで伝わる情報も原因になること、そして炎上が拡大すると対話ではなく勝ち負けの話になってしまいがちで中国側に対して「わかってもらえる」「ファンなら読み込んで理解してもらえる」と期待するのは不可能だといったことなどを改めて見せつけることになりました。
またこの件だけでなく、その後発生したいくつかの中国における日本系コンテンツの炎上事件とそれにともなう中国側の発言は、日本における「中国のオタクに対する感情」を冷え込ませることとなってしまいました。

現在のネット環境などから、FGOの新シナリオに関する情報も即座に翻訳経由や一部の切り取りといった形で伝わるのは明らかでしたし、過去の炎上から続くネガティブな空気や、近年の中国における「国外作品における中華要素」に対する否定的な傾向、中国現地の運営によるゴタゴタ、ソーシャルゲームによって拡大したライトなファン層および、それを対象としたネットメディアなど、もし炎上した場合は一挙に燃え広がるであろうことが容易に想像できる状況だったことから、現地のFateファンにとっても不安の種となっていたそうです。

ですが、そういった状況を、実装直前の生放送で発表された
「シナリオ担当:虚淵玄」
という情報がひっくり返すこととなりました。
そしてストーリーの内容も順調に受け入れられ、さらに新キャラの始皇帝が中国で大歓迎されるという、事前の不安を覆す結果となりました。

実は中国における本格的なFate人気は「Fate/Zero」から始まり、現在の中国のFateファンの最大勢力も「Fate/Zero」から入ったあるいは「Fate/Zero」を中心に作品を追っかけている層だと言われていますし、「Fate/Zero」の作者である虚淵玄先生は、中国におけるFate人気の原点とも言える存在となっています。

それに加えて、中国での虚淵玄先生の評価はFate界隈にとどまらず、一般の方からも評価されていることから、Fate以外の評価基準や空気を持ってくることができるうえに、「Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀」などの実績があるので、「外国人は中国をわかっていない」的な色眼鏡もかなり薄くなります。

以前、中国のオタクな人たちと秦シナリオのリスクについて話した際には
「仮に奈須きのこ先生みずからが担当しても、現在の中国のFGOに対するネガティブな見方が強まっている空気では、最初から否定的な目で見られる、間違い探しをされるので炎上するリスクは存在します」
といった見方も出てきましたが、直前に放り込まれた虚淵玄先生の起用という予想外のニュースによる衝撃は、そういった空気や判断基準を吹き飛ばし、その勢いのまま中国オタク界隈に新シナリオや新キャラに関する情報が流れ込んでいくこととなりました。

こうしてもっとも注目が集まる初動のタイミングに、中国で肯定的に受け止められるニュースがぶつかって期待と安心の空気が形成されたことから、本編の内容やキャラクターに関してもレッテル貼りや否定的な色眼鏡で見られることなく受け止められ、内容的にも、中国のオタク的にうれしい要素が多く、結果として大歓迎されることになりました。
この歓迎ぶりについてはこれまでの反動か、伝言ゲームや過度の拡大解釈で始皇帝の強キャラぶりなどについて話が盛られ過ぎることを心配する声も上がるレベルだったとのことです。

ちなみに、この盛り上がりにある程度区切りがついて詳しい情報が行き渡るようになると、軽妙なテンポで進むシナリオではあるものの、現代中国に関する皮肉の効いたところもちらほらと目に付くことから
「面白いけどこれは中国向けとしてはマズイのでは」
「中国版で実装する際にちょっと不安」
といった反応が出て来たりもしている模様です。
もっとも、以前ならともかく現在の肯定的な空気の中では炎上といった方向にはなっていないそうです。

現在の中国では日本のコンテンツに限らず、伝言ゲームや情報の切り貼りで叩くようなゴタゴタが発生しがちですし、火のないところであっても煙は立ちます。
また日本のコンテンツに関しては、日本語のため、正確な情報にアクセスできる人が限られるといったケースも多く、炎上の最中にきちんと内容が吟味されブレーキがかかるということがあまり期待できないといった事情もあります。

そのため、炎上する前に問題を回避する、炎上につながらない肯定的な空気を形成するといった手段が重要になってきます。
このFGOの件については実際の意図がどうだったのかはさておき、中国での炎上対策という点に限ってみた場合、
「虚淵玄先生をシナリオに起用した」
というのはとても上手なやり方だったように思えます。これを単純にほかのコンテンツに当てはめられるわけではありませんが、中国における炎上リスクを回避し、人気や注目を上手に活用した例となったのは間違いないかと思われます。

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