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外国人の描く中華要素、中華系キャラに対する反発
一昨年のFGOの中国での大炎上、そして昨年終わりの新シナリオ実装時などに注目された中国ネタの炎上リスクですが、そのゴタゴタに関しては、近年の中国で強まっている
「現在の中国の感覚で正しい中華要素、中華系キャラクターが描かれるべきだ」
という要求、そして
「外国人の描く中国、中華要素に対する厳しい基準」
といった事情の影響が少なからず存在しました。これはFGOに限らず日本のコンテンツ全般に対しても影響する要素となっています。
現在の中国では、「強い中国」「世界に名立たる強国」というイメージの元で育った世代が増え、その動きも活発となっています。
しかし近年、そんな彼らのイメージする中国像が描かれた作品がなかなか出てこないということによる不満の空気が蓄積しているそうで、国内国外問わずさまざまなコンテンツに出てくる中華要素に対して不満や批判の声が出るのも珍しくなくなってきているのだとか。
ここしばらくの間の現地の反応を見ていくと、中国のオタク層も含む、今の中国の若者が認識している中国や中国の歴史文化のイメージから求められる「中国要素の描写」と、日本における中国のイメージのズレが拡大している傾向が見て取れます。
また日本のイメージで安易に中国系キャラを出す、中華系要素を使うというのは、炎上リスクが高まったり、そこまでいかなくてもあまり歓迎されないことが多くなってきています。
たとえば、日本の過去の作品でも活躍したいわゆる「中華四千年の歴史」的な要素、日本的なノリでの中国拳法や気功などを使うキャラクターについても厳しいようですし、キャラクターデザインに関しても、お団子頭、チャイナドレス、パンダといったテンプレパーツ的なものにはあまり好意的な反応は出ない模様です。
最近の作品で言えば、「からくりサーカス」に関して、中国のオタク界隈ではストーリー面での評価は高いものの、作中に出てくる「拳法」や「気」のような日本の作品では定番の中華要素の活用や活躍についてはあまり話題になっていません。
ほかにも、FGOにおける始皇帝のデザインは各バージョン賛否両論あれど盛り上がりましたが、同時期に実装された秦良玉(しんりょうぎょく)は、テンプレ中華デザインであると見なされ、あまりよい評価にはならなかったそうです。
しかも、このあたりの「正しい中国要素の描写への要求」は、近年の中国国外作品の中華要素の描写と今の中国の若者の認識しているイメージのズレも合わさって、
「外国人は中国文化、歴史をわかっていない」
という認識、ある種の色眼鏡的な空気にもつながってしまっているそうです。
この流れでの批判に関しては断片的な情報で判断したり、重箱の隅をつつくような形で何かしら不満のポイントを見つけ出せてしまうようなところもあるので、最初から批判的な態度で受け止められた場合、どのように描写しても厳しいことになってしまうといった話も聞こえてきます。
これに加えて、複数の解釈の許容ではなく、「唯一の正解」がよいとする中国の政治的な面も含めた歴史、文化の扱いから、中国のオタク層も中華要素についての変わった解釈や予想外過ぎる展開を提示されるのは苦手で、反発が強くなる傾向もあるそうです。
中国のオタクな人によると、事前にある程度予想できる(と思うことのできる)範囲での面白さと驚きが中国向けではベターという話もあります。そしてFGOの秦シナリオに関しては評価がよい方向で固まっている虚淵玄先生が書いたシナリオであるという情報が、作中の中国関連描写に対する安心感、そして肯定的な空気の形成につながったところもあるのだとか。
こういった背景から考えていくと、改めてFGOの秦シナリオ周辺のやり方が、こと対中国という面ではベストに近いやり方だったようにも感じられますね。