どうやって「マジンガーZ」を球体に収めるのか? バンダイ“カプセルレストイ”の終わりなき挑戦!【ホビー業界インサイド第57回】

2020年03月28日 12:000

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本当にカプセルの球体になるのか、手探りで確かめていく!


── 「EXCEED MODEL」シリーズはザクヘッドだけでなく、ドムヘッドやガンダムヘッドも出ていますよね。メカの頭をパーツ分割して、ちゃんとカプセル型に組みかえる技術が凄いのですが、一体どうやって考えているんでしょうか?

誉田 最初は、「EXCEED MODEL」シリーズの一種にマジンガーZを加えるつもりで、企画を考えはじめました。しかし、そのサイズで頭だけ出したとしても、最初にザクヘッドを出したときのインパクトには及ばないと気がつきました。また、マジンガーZは胸のブレストファイヤーが印象的ですから、欲を出して大きな胸像にしてしまおうと方向転換しました。まずマジンガーZの胸像を立体で形にしてから、それをどう分解して組み替えたらカプセルの球体にすることができるか、模索しはじめました。
たとえば、なるべくカプセルの外側に大きなパーツを配置するようにしています。なぜなら、カプセルの内部は、意外と体積がないからです。外装パーツをカプセルの内部に入れようとしても、収まりきらないんです。カプセルの大きさは76mmなのですが、なるべく外側に大きなパーツを配置することで、サイズにぴったりの球体ができ上がりました。実を言うと、最初は3つのカプセルに分けるつもりはありませんでした。

── こんな大きな胸像を、ひとつのカプセルに入れようとしていたのですか?

誉田 そうです。途中で、いくつかのカプセルに分けようと考え直したんです。どうやって分けるか考えるときに気をつけたのは、ひとつのカプセルに頭だけ、もうひとつのカプセルには胸だけ……では、商品として成立しないということです。どのカプセルが出ても、単体で飾れなくてはいけません。そこから、外装と中身で分けてはどうか、内部メカだけでも飾れて、なおかつ球体としても成立するようにできないか……と、少しずつ仕様を詰めていったのです。


── すると、パーツをどう分けるか、本当にカプセルに入るかどうかは別にして、マジンガーZの胸像をまず立体で試作して、そこから分割方式を考えていったんですね?

誉田 そうです。ただ、最初の試作品は現状のものとは、かなり違った形でした。サイズも、最初の試作から何度か変わっています。単に、全高20 cmのマジンガーZの胸像を作るだけなら、3~4か月あれば十分です。ところが、胸像を分解して3つの球体になるように構成を考えるとなると、半年どころか、2~3年もかかってしまいます。無駄な作業に見えるかも知れませんが、そこがカプセルレストイとしての新しい挑戦なんです。

── 一体どうやって設計したのか、まるで想像がつきません。

誉田 ザクヘッドのときもそうだったのですが、コンピューター上のデータで試すだけでは限界があります。「この大きさ、この分割ならカプセルにできるかも……」という段階まで来たら立体に出力して、実際に自分の手で押し込んで、球体になるかどうかを確かめるんです。それでも球体にならなかったら、またパーツの分け方を考え直して、再び立体に出力して、手で組み合わせてみて……と、アナログ的な作業で進めていくしかないんです。

── でき上がった商品は、誰にでも組み立てやすいのですか?

誉田 はい、カプセルトイの場合、ユーザーはあまり説明書を見ずに、パーツを取り出したら、写真を見ながらいきなり組み立てていく傾向にあるようです。ですから、ある程度、感覚で組み立てられるかどうかも重要になります。ザクヘッドのときもそうでしたが、説明書がなくても組み立てられるレベルにパーツ分割するのが、また難しいんです。ハメてはいけない部分はハマまらないようにピンの形を工夫していますし、どなたでも間違えずに組み立てられるはずです。
先ほど話したように、この「INTEGRATE MODEL MAZINGER Z」のターゲットは、狭くて深いシニア層です。「マジンガーZ」は現役世代に向けたキャラクターではありませんから、それらと同じ戦略で進めていては、どこかで行き詰ってしまうでしょう。ですから、今回のカプセルレストイを入り口にして、電飾パーツを通販で販売することも考えています。カプセルレストイに追加パーツを買い足していたら、自分でも予想もしないほど広い場所に立っていた……というイメージですね。今までのカプセルトイ商品と同じ展開では成功しないでしょうから、新しい戦略を練っているところです。

── 常識にとらわれずに次の展開を考える、ということですね。

誉田 そうですね。「ガシャポンから出てくる物は小さい」という常識を、カプセルレストイの開発で打ち破ることができました。いまや、カプセルトイは小さなものをたくさん売って終わり……という時代ではないと思います。想像もできないほど大きなものが、小さなカプセルからでき上がるという驚きと感動。ただカッコいいだけではなく、いつまでも触り続けたくなるような楽しさを、何よりも大事にしています。


(取材・文/廣田恵介)

(C) 永井豪/ダイナミック企画・MZ製作委員会
(C) BANDAI

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上映開始日: 2018年1月13日   制作会社: 東映アニメーション
キャスト: 森久保祥太郎、茅野愛衣、上坂すみれ、花江夏樹、高木渉、山口勝平、菊池正美、森田順平、島田敏、塩屋浩三、石塚運昇
(C) Go Nagai/DynamicPlanning MZFilmPartners

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