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「何だこりゃ?」というショックも含めた個性の強さ
朝比奈 「ボトムズ」のプラモデルコンテストを開催するにあたって、弊社のブログ用に「太陽の牙ダグラム」第1話風のジオラマを作りました。特にアニメを見ていなくても、1/35のミリタリープラモのひとつとして、いろいろな料理の仕方があると示したかったんです。この作例でも、1/35のミリタリープラモからパーツを流用してあります。
── このジオラマを「ダグラム」のパロディだと見抜ける人は団塊ジュニア世代前後であり、その世代の人口の多さゆえに、いまだに「ボトムズ」も支持されているのではないか、と思います。 朝比奈 そうですね、もう40年近く前の作品ですから。「機動戦士ガンダム」は最初の作品の魅力を保ちながらも、時代に合わせた新陳代謝が行われて、次から次へと新しい作品がつくられています。ところが、「ボトムズ」は変わらないデザインのものが、ずっと好かれている点がマーケットとして特殊なのでしょう。40~50代で、80年代初期に旧タカラさんのプラモデルを買っていた人たちが、現在は弊社のキットを買ってくれている。コンテストを開催してみると、なかには若い世代もいます。だけど、アメコミの「スーパーマン」や「バットマン」には70年以上の歴史があって、とっくに3世代キャラクターになって いますよね。「ボトムズ」の頃に言われていた“リアルロボット”路線が途絶えてしまって、世代をまたぐキャラクターになり得ていないのが、やや残念ではあります。
── そういえば、「ボトムズ」シリーズの新作アニメも途絶えていますよね。 朝比奈 40年間追ってきたファンが「これを見たかったんだ」と喜べる「ボトムズ」作品がどういうものなのか、作り手も見えづらくなっているのかも知れません。いっぽう、プラモデルという媒体で自分なりの「ボトムズ」を作っても、誰にも文句を言われませんよね。「陸上自衛隊に配備されたスコープドッグ」を作ったとしても、「いや、それは設定と違う」「コンセプトとして間違っている」と叩く人なんて、誰もいません。懐が深いんですね。それと同時に、40年近く前に描かれた設定画を「今ならこう描くべきだ」とアップデートすることを望んでいるファンもいない。ガチガチに決めこむのではなく、自分なりのアイデアを示しても否定されない点では、「ガンダム」より自由度が高いかもしれません。
── 最初にスコープドッグをアニメ誌で見たとき、どう思いましたか? 朝比奈 「この丸い頭のロボットは準備稿で、決定稿は別にあるんだろう?」と思っていたら、そのままテレビに出てきましたね(笑)。今にして思うと「何だこりゃ?」というショックこそが、後に残る強烈な個性として、重要なポイントだったのでしょう。
今回、1/35サイズでATをキット化してみて、気がついたことがあります。“強さ”で言えば、「ラビドリードッグ」や「ストライクドッグ」のような機体がありますよね。スコープドッグはもっとも大量に生産されている設定ですし、「ガンダム」のGM(ジム)に通じるような、撃たれたらすぐに動きを止めそうな“弱さ”が、いまだに人気を失わない理由である気がします。搭乗者によっては強くなるし、やられメカのような扱いではないにしても、か弱さ、脆弱さがあってもいいんだろうな……と、初めて気がつきました。そして、キリコという独特なキャラクターが乗ることでスコープドッグというメカニックの秘められた魅力が引き出される。その点は旧タカラさんのプラモデルが売れていた時代から、ずっと変わらない気がします。
(取材・文/廣田恵介)
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