※本コンテンツはアキバ総研が制作した独自コンテンツです。また本コンテンツでは掲載するECサイト等から購入実績などに基づいて手数料をいただくことがあります。
モーションキャプチャ段階で、俳優と一緒にキャラクターの芝居を練り込む
── 日本アニメ(ーター)見本市で、「evangelion:Another Impact(Confidential)」(2015年)を監督しましたね。どういう経緯で監督することになったのですか? 荒牧 最初は日本アニメ(ーター)見本市というタイトルすらなくて、「スタジオカラーとドワンゴが短編アニメをつくろうとしているんだけど、荒牧さんも何かやりませんか?」という話を、スティーブンスティーブン(現クラフター)の石井朋彦プロデューサーからいただきまして。直感的に、カラーで庵野秀明さんがプロデュースしてくれるのなら、「新世紀エヴァンゲリオン」関連でやれば面白い物が出来そうだと思ったんです。庵野さんと会う機会ができたので、「何も内容に口出しせず、こちらの好きなように『エヴァ』を使わせてもらえないか」とめちゃくちゃな要求を出したところ、「『エヴァ』本編に触れなければOK」と、あっさり許可をもえらました。
もうひとつ、「パシフィック・リム」を見て、日本の怪獣や、ロボットアニメをリスペクトしてくれるのは本当にありがたいけど、それを日本人のクリエイターが諸手をあげて喜んでいてはダメだろうと思ったんです。特に、樋口(真嗣)さん(笑)。「パシフィック・リム」のような映像こそ我々が作らなきゃならないだろうと日本のクリエイターに向けて、ふんどしのひもを締める意味で、大赤字を覚悟してつくったのが、「evangelion:Another Impact」なんです。樋口さんはそれに答えたつもりは毛頭ないと思いますが、「シン・ゴジラ」で、日本発の素晴らしい映像をつくってくれました。感涙モノでした。
── 一連の作品を拝見していて、やはり荒牧監督は立派なメカフェチで、それが創作の動機なのかなと思うのですが、いかかでしょう? 荒牧 もともとメカデザイナーとして出発しましたから、メカを描きたい!という衝動が根本にあるのは、今でも変わっていません。だけど最近、ハリウッド映画や、海外のトップクラスのゲームのメカ表現がすごいでしょう? CGやプレビズの発展もあって、どこまでも緻密に、あらゆる才能を集結してつくっています。「アイアンマン」などを見ていると、80年代に僕たちが手描きでやっていたような表現を、理想的な形で実写化している。「タイタンフォール」や「ホライズン・ゼロ」などのゲームのCGも、予算も時間も才能も十分にかけて、リアルタイム(レンダリング)ですごいクオリティを実現している。しかも海外のファンは、そういう映像をどん欲に欲しています。その状況下で、自分たちは何か新しい物を生み出していきたいし、見てくれる人を驚かせ、楽しませたい。それにトライするのは、なかなか大変です。焦っているわけではないけど、いま一度、僕たちも初心にかえって、さらに知恵を絞っていかないといけませんね。
── 劇場アニメや深夜アニメで、2Dルックの3DCGが増えていますが、どう思いますか? 荒牧 あれはあれでよくできているし、アニメを好きな人たちがやっているんだろうから、ひとつの形としてアリだと思います。僕ももちろんアニメは好きなんですが、やっぱり今までやってきたノウハウや面白かったことを生かして、それをアニメに落としこんでいけないかな、と考えています。
具体的に言うと、ひとつは、モーションキャプチャをフルに使ったアニメーションと、手づけのアニメーションの良いところをミックスしていきたいんです。いい俳優さんを選んで、彼らのアイデアも反映させながら、モーションキャプチャの段階で、演技や芝居を練りこんでいく。その演技を丸ごとモーションキャプチャで、デジタル・キャラクターに写しとり,ドラマをつくっていく。そのフローにおいても、アニメーターはもちろん重要です。モーションキャプチャでは足りない部分、アクションとか、表情とか細かい演技とか、そういった部分をアニメーターが足し引きしながら作っていく。その作業がすごく面白いんです。いまと同じことを次回の企画で、神山さんを誘うときにも話したんです。彼も、なにか新しい手ごたえを感じてくれるんじゃないかと思っています 。
(取材・文/廣田恵介)