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グローバル化によって、海外資本の作品はもっと増える?
── さらに、「キャプテンハーロック~」の翌年には「Appleseed Alpha」(2014年)が公開されています。監督作が3年も連続していますが……。 荒牧 「スターシップ・トゥルーパーズ~」の仕上げをやりつつ、せっかく設立したSOLAのチームを遊ばせていくわけにも行かないので、並行して「Appleseed Alpha」のプリプロダクション(前準備)に入っていました。この頃はさらにいろんな事が重なって、あまりに忙しくなってしまい、メンタル的にいっぱいいっぱいでしたね。さすがに折れかけた状態だったと思います。
── この頃の作品は、英語がベースのようですね。 荒牧 そうです。こちらで日本語の叩き台のプロットを作り、英訳したものを海外(主にアメリカ人)の脚本家に読んでもらい、それをベースに直接打ち合わせします。手ごたえが良ければ、そこから企画が進み出します。最初の数回はロサンゼルスなどに行って直接、打ち合わせをしますが、その後の調整はスカイプなどを使っています。多いときは、週に何度もスカイプミーティングを行うときもあります。
とはいえ、僕はビジネスレベルの英語は全然です。先ほど話した共同経営者のジョセフ・チョウは英語・日本語・韓国語が完璧なので、彼に手伝ってもらいます。彼はもともと、本国のワーナーブラザースで働いていたので、向こうの映画業界に詳しい。また、ビジネスセンスもあるけど、良い感じにオタクでもあり、メンタル的には日本人的な部分もあるので、本当に頼りになるんです。ほら、いかにもアメリカンなジョークって日本人にはわかりづらいですよね? モーションキャプチャで演技を収録するとき、外国人の俳優を日本に呼んで、日本のスタジオで演技してもらいます。すると、外国人のスタッフがみんな笑っている。だったら、きっとうまくいっているんだろうな……って、そういう現場なんですよ(笑)
── 海外資本の作品をメインにしているアニメ監督は、珍しい存在では? 荒牧 僕は「機甲創世記モスピーダ」(1983年)の後ぐらいに、ABCネットワークのアニメ企画のために渡米して、数ヶ月間、デザイン作業をしていました。そのころ多かった、いわゆる「合作」というヤツです。アメリカ資本で、シナリオなどのプリプロはアメリカで作業して、実際の作画は日本で行う……という形式です。現在、ポリゴンピクチャーズさんなどがつくっている海外向けのTVシリーズも、CG作品ですが、同じ構造だと思います。そうやって、海外作品のために日本のアニメーターや演出家が駆り出されることは、かつてはそう珍しいことではありませんでした。
そういうきっかけもあって、僕の場合、海外全体を視野にいれると、日本国内だけではペイしないような企画であっても、世界中に流通を広げられます。見てくれるユーザーが増やせるし、資金も集まるので、やりたい作品をつくれるわけです。グローバル化のおかげですね。これからはNetflixやAmazonによって、そういう機会がもっと増えていくんじゃないかと思います。