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中国のオタク界隈は大通報時代へ?
近頃の中国ではネット上のさまざまなコンテンツに対する規制や自主規制が強化されていますが、ここしばらくの間でまた大きな動きが出ている模様です。今回はこれまで中国でたびたび行われてきたような日本のコンテンツを主なターゲットにしたものではなく、国産・外国産問わずさまざまな作品が規制の対象になっているようで、現地でも難しい対応を迫られているとのことです。
中国のオタク界隈における今回の規制に関する動向を以前のものと比べてみると、違法あるいは有害なコンテンツに関する通報の窓口および対応のシステムが整備されているといった部分も目に付きます。 この通報のシステムについては政府関連機関だけでなく、コンテンツを提供する各プラットフォームにおいても強化されているようで、たとえば先日CCTV(中央電視台)で動画サイトの「bilibili」が名指しの批判をされた際にも、批判の内容に通報プラットフォームの不備や対応の問題が含まれていました。 またその後bilibiliは、審査チームの強化や新たな審査センターの導入などを発表していますし、プラットフォーム側も審査検閲体制の強化を急がなければならない情勢になっている模様です。 このような環境もあってか、現在の中国ではコンテンツに対する通報や抗議が、日本の一般的な感覚に比べて随分と「効果」や「即効性」のあるものになっているようですし、コンテンツが炎上した際には通報や抗議が規制の理由になるといったリスクが無視できないものとなっているそうです。 それに加えて難しいのが、中国ではコンテンツ業界やオタク界隈においても、上のほうから下のほうまで、さらには各作品のファンの間でも「通報を活用し過ぎている」 ような背景があることでしょうか。 中国では日本と比べて、間違いがないもの、正しいものを求める傾向が強いのですが、それは好みにこだわるオタク層の間でも変わらないようです。中国のオタク界隈を見ていくと、いわゆる「覇権」など作品の優劣や上下関係を決めたがる傾向が日本と比べて強いように感じられますし、そういった争いに関するゴタゴタの話も頻繁に聞こえてきます。
そしてその手の争いがネットの炎上につながるのは日本も中国も変わらないのですが、中国ではその争いにおける実力行使の手段として「政府への通報」が強く意識されているのが、日本とは異なる部分でしょうか。 近頃の中国のオタク界隈では作品の内容や運営に対する不満だけでなく、作品同士の争い(ファンの間でも、業者の間でも)においても「通報」が活用されてしまうので、その結果として人気作品の規制が発生してしまうのでは……といった認識が強まりつつあるといった話も聞こえてきます。
ファン同士のゴタゴタ、自分が認められない作品やストーリー展開などを排除しようとする動きについては、日本でもないわけではないかと思われますが、現在の中国では「簡単に通報できる環境と空気」 になっているうえに、今年に入ってから立て続けに新作アニメやゲームの配信中止が起こるなど、真偽不明ではあるものの「通報の効果」を感じられるような事件が続いていることから、疑心暗鬼になってしまう人も増加しているようです。
ある中国のオタクな方からは「今では他の作品の過激なファンや同業他社、競合コンテンツ側などからの通報を疑う、あるいは通報されるリスクを恐れる空気が蔓延しており、少し前のように何も心配せず気楽に作品の続きやサービスの継続を期待するのが難しくなってしまった」 という話も聞きます。
中国ではネットそのものに関しては情報産業や商業的な価値の扱いもそれなりにあるとされていますが、そこで活動するプラットフォームや、流通する娯楽コンテンツやサービスになると「政治的なコントロール」が重視される傾向も強いようです。 さらに中国では「たかが娯楽だから放っておく」のではなく「たかが娯楽だから問題が起こるのであれば規制してしまおう」 といったことになりがちで、通報されて目を付けられる、炎上して注目されるような場合はあっさりと規制の方向に動いてしまいます。
このところ毎シーズン配信中止作品が出ているアニメはそういった扱いの娯楽ですし、ほかにもたとえば日本でも突然の配信中止が大きく報道された「モンスターハンター:ワールド」などのゲームは、中国の規制の傾向に加えて、中国ではゲームが出版物の扱いになっていることによる関連部門の管轄を含めた制度上の難しさからも規制がかかりやすいと言えます。 中国では出版メディア、出版物に関しては伝統的に政治の領域となっていますし、現在も販売や運営の審査及び許可の取得の難しさ、規制のリスクの高さは無視できないものとなっている模様です。 例によって今後も規制が続くのか、通報が実際どのように影響していくのかといったあたりについては何とも言えませんが、アニメやマンガに加えて最近日本系のコンテンツも目立つようになってきている中国のゲーム界隈なども、当分は難しい空気が続くのではないかと思われます。 (文/百元籠羊)
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