アニメ業界ウォッチング第39回:徹底的に心情描写にこだわる、さとうけいいち流アニメ演出術

アキバ総研 | 2017年11月11日 12:00
アニメ業界ウォッチング第39回:徹底的に心情描写にこだわる、さとうけいいち流アニメ演出術

“アニメーションしている”絵コンテの書き方


── 映像演出について、詳しく聞かせてください。

さとう シナリオに書かれている「…」の部分、セリフのない表情を盗んで撮りたいという気持ちがあるんです。その「…」を止め絵で目パチだけにするのは楽なんですけど、僕はそれはやらない。目を細めて、ちょっとだけ目線をそらすとか、そういう芝居になっているはずです。「同じ3枚使うなら目パチではなく、体や首を傾けながら表情を変えるのに枚数を使うほうがリッチに見えるよ」と、いつも作画さんや演出さんにお願いしています。「そのほうが記号的にならないし、ちゃんと“アニメーションしてる”よね」って 。

── ここに「神撃のバハムートVIRGIN SOUL」の絵コンテがありますが、普通は原画に書くツメ指定が書きこまれていますね。

さとう (絵コンテをめくりながら)芝居を単調にしたくないから、「ここの表情は何コマ」と明確に伝えたいんです。口を開くにしても、ただパクパク動かすのではなく、口の筋肉がどの方向へ逃げるのか伝えたい。構図にしても、カメラがドリー移動しながらクレーンアップしていくのか、ドローンにカメラを積んだように引いていくだけなのか、僕は気にしながら絵コンテを書きます。頭の中で、構図を3D的に組み立てている感じです 。

── 絵コンテが細かいので、完成映像のニュアンスが伝わりますね。

さとう アフレコのときは(作画が間に合わずに)原画を撮影したもの、場合によっては絵コンテの絵を見せるしかないので、まず、声優さんにとってもわかりやすいコンテがいいわけです。それと「TIGER & BUNNY」(2011年)のときに思い知らされたことですが、今の若い原画マンの中には絵コンテを下敷きにレイアウトを描いたりもしているようなんです。最低限の心情芝居をラフ原画に近い形でコンテに書いておかないと、若い人には芝居が思いつかないらしい。そのためにも、コンテを細かく書きます。また、日本人にだけ伝わる芝居ではなく、グローバルな宗教観や習慣などを理解した芝居をつけたいので、それも絵コンテに書いておきます。
過去作を見てもらえればわかると思いますが、僕は流背(流れるように描かれた背景)やイメージ背景を避けるんです。だけど「バハソウル」で、ニーナがぽわーんとしたとき、ピンクのイメージ背景を使っていたでしょ?

── 竜に変身するとき、いつも出てきましたね。

さとう あのイメージカットは、「分かりやすくしてくれ」とのオーダーだったので、最初のころだけ入れておきました。デフォルメされた「アニメ的」な演出だけを要求されるのであれば、誰が監督をやっても関係ないわけです。お約束の多い中で、どうやって自分らしく終焉させられるかが「バハソウル」では重要でした。だから、最終回Bパートのダンスシーンで「バハソウル」という物語を終えた後、もう一度、ファバロやカイザルのいる「神撃のバハムート」の世界に戻してSFチックな要素を残したかったんです。最終回のCパートに尺をとったのは、自分なりに未来に繋げるためと、納得させるためでした。

── カメラワークについては、どうでしょう?

さとう フィックス(固定)のカットは「ここぞ」という時のためにとっておいて、お客さんの心を誘導するにはカメラから入る(ズームインする、トラックインする)ほうがいいと思ってます。消失点がいくつもある、騙し絵みたいな大判のレイアウトを描いておくと、カメラを振ったときに画角が変わりますよね。だけど、僕が作画監督をやっていた90年代前半、アニメの背景を写実的に描くブームが来たんです。一点透視の絵ばかりになってしまって。

── スチルカメラで撮ったような、写真のような背景が流行りましたね。

さとう カメラワークに興味のないアニメーターは、カメラがドリー移動したPANなのか、その場で首をふったPANなのか分かっていないんです。最近でも、動画マンはすぐ第二原画になってしまうから、カメラワークを学ぶ機会がないようです。 僕は、カメラワークもカット割りも、心情を伝えることを第一に考えます。困ったから寄りで撮りました、ではなくて、その人物の心情を少しでも盗むためにポンと寄りました、というカットが好きです。あえてバストショットで寄って、無言のまま何もしゃべらせないとか、ミドルショットで撮るにしてもあおりで撮るか俯瞰で撮るかによって、人物の心情は変わるはずなんですよ。「気持ちが大事だよな」と、いつも思います 。



(取材・文/廣田恵介)



インフォメーション


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(C) KADOKAWA CORPORATION 2016
(C) Karasfilms,Keiichi Sato,Kenji Saito

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