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「原作モノ」と「オリジナル」
── 監督デビュー作は、TVスペシャル「ルパン三世 天使の策略 ~夢のカケラは殺しの香り~」(2005年)ですね。 宮 その3年後に、生誕40周年記念のOVA「ルパン三世 GREEN vs RED」(2008年)をやらせていただきました。だけど、最初のTVスペシャルの「ルパン」は思っていた現場とはかなり違っていました。歳を重ね、今はそういう作り方もあるのだとよく理解できるのですが、良くも悪くも自分は若かったなぁと思います。というのは、当時自分はとにかく個性的で独創的なものを作らなきゃと、やっきになっていたんです。そのため「ルパン」というタイトルを扱っていながら、ルパンという架空の人物に縛られているようで、非常に苦しかったんです。ルパンという作品に携わらせていただくことにはとても光栄に思いましたし、興奮していました。ですが、それに加え、自分が担当させていただいた時にはすでにルパンという作品には、さまざまなクリエイターの手垢がこってりとついてしまっていて、(自分の中ではルパンは大塚さんと宮崎さんたちが作ったものだけで十分だと感じていました)自分がやる意味をなかなか見つけられずにいました。そんなこんなで当時の迷いや未来への不安と希望を、当時の自分なりにぶつけさせて頂いたのが「GREEN vs RED」でした。
── 監督とキャラクターデザインを宮さんが担当された「BUZZER BEATER」、これは2005年にWOWOWで放送されて、2007年に日本テレビで放送されましたね。 宮 原作者の井上雄彦さんが監修してくれて、僕の描いたキャラ表の上からボールペンで修正してくださったんです。僕は美大にも専門学校にも行っていませんので、僕に直接、絵を教えてくれた人は井上さんだけです。だけど僕は絵描きとして仕事してきたわけではないですし、絵に人生を費やしてきた先輩たちがいるのに、偉そうに原画マンだ、キャラクターデザイナーだなんて名乗りたくないんです。「鬼平」(2017年)でもキャラクターデザインとクレジットされていますが、癖のある絵は描けても、それをアニメーション用に落とし込む作業については、プロフェッショナルではありません。
── これまで10本ほど監督されてきたわけですが、特に印象に残っている作品はありますか? 宮 どれも精一杯やらせていただいたつもりですが、やはり「ルパン三世 GREEN vs RED」でしょうか。賛否両論ある作品ですが、生きた人間が作っている以上、完全にフィクションはありえないのかも、と感じたりもしました。作品を制作している時代の空気や製作者側の気持ちや生理的な物も、すべて作品に表れている気がします。
もうひとつ、いしづかあつこさんと一緒に監督として名前を連ねた「SUPERNATURAL: THE ANIMATION」(2011年)ですかね。キャラクター原案もやらせてもらいました。「SUPERNATURAL」では、実写ドラマの雰囲気をアニメに落とし込むコツを学べました。プロデューサーは丸山正雄さんですから、「SUPERNATURAL」での仕事が「鬼平」に繋がっていると思うんです。「鬼平」は池波正太郎さんの小説のアニメ化ですが、多くの人にとっては実写ドラマのイメージが強いですよね。「それなら、宮が向いてる」と判断してくれたのかな、と思います。