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「アニメ100周年」を契機に、業界を一丸に!
植田 僕は日本動画協会の理事をやっているのですが、協会に「来年はアニメ100周年ですから、何かやりませんか?」という人がいたんです。その人はあまり積極的ではなかったけど、僕はお祭り好きで、ガンダム20周年でもいろいろやりましたからね。ほら、「20周年だし、新しいガンダムつくっちゃおう」とか「100周年記念だから、何かやってみよう」とドサクサにまぎれて、新しいことにトライできたりするじゃないですか。それと、先ほども言いましたように、業界の未来に対して危機感があります。100周年は到達点ではなく、通過点。2017年の次の2117年を目ざしたい。だけど、動画協会にはお金もないし、スタッフも少ない、どういう形で100周年プロジェクトを進めるか、まず動画協会の中に20社が参加する検討準備会が組成され方向性が検討され僕が座長になりました。この10月からいよいよ具体化に向けて、体制を強化される予定です。
──海外のイベントで、シャアのコスプレをしてらっしゃいましたよね? あれは「アニメ100周年プロジェクト」を海外に認知させるためですか?
植田 海外だけでなく、国内でも、何年か前からシャアの格好はしていますよ。国内のイベントで、かつてガンプラを売ってくれたバンダイ出身の宮河恭夫社長(サンライズ)が横にいて、サンライズを辞めたはずの僕がシャアのコスプレを許可してもらい、さらに声優の古谷徹さんが並んだことがありました。組織の差を越境した3人が、アニメの未来を語る……という構図を見せたかったんです。つまり、「アニメ100周年プロジェクト」は、いろいろな業界内のしがらみを乗りこえて、業界全体で一丸になって頑張りましょうよ、という勢いづけです。「えっ、こんなことやってもいいんだ?」という象徴として、シャアのコスプレをしたんです。
──業界内の垣根を壊す意味があったんですね?
植田 ええ、アメリカのファンなんて垣根を壊すのが大好きで、「アニメ100周年プロジェクトで何がやりたい?」と聞かれたので、「ソードアート・オンラインのキリトがガンダムに乗って、ワンピースの敵と戦うアニメ!」と言ったら大受けでしたよ(笑)。さすがに、そこまで出来なくとも、いろいろなアニメのキャラクターが1枚の絵に入った、キャッチーなビジュアルも作れたらいいなと思っています。
──すると、業界の人たちの目を未来に向けさせるのが目的ですか?
植田 というより、業界の内外にアピールしていきます。業界の外で「アニメなんて、しばらく見てないや」「最近のアニメって、どんな感じなの?」という人たちが関心持って、注目してくれたら、業界内部も変わらざるを得ないじゃないですか。国内のクリエイターはちゃんと育っているのか、動画や仕上げはアジアに任せたままでいいのか……もう、色々な危機的な状況はあるわけです。ですから、そうした、一社では解決できない問題を、「アニメ100周年」をキッカケに、業界全体で取り組んでいかないといけないのです。
──お話をうかがっていると、一貫して「制作現場」を重要視されていますね。
植田 ぶっちゃけて言うと、現場やクリエイターを中心に考えていくしか、未来はないんですよ。「現場が疲弊したら、もう、これから先はない」という厳しい現実を、アニメに関わっている人たち、ファンの人たちは認識すべきですね。
──僕たちファンに、何かできることはないのでしょうか?
植田 別に日本動画協会が「アニメ100周年」の版権を持っているわけではないので、例えば個人で「アニメ100周年」を利用して、「私の決めたアニメベスト100発表!」でも、勝手に活動してくれてもいいんですよ。個人のアニメ作家さんの中でも、「アニメ100周年プロジェクト」と連動したいという人は、出てきています。相談してくれれば、きちんと人なり組織なりの紹介まではします。お断りしておきますと、動画協会にはお金がないので、資金は出せません(笑)。とにかく、それぞれの人たちが、何らかの100周年に参画するのが自分の理想です。 例えば、「朝まで生アニメ」って討論番組をやりたいんです。富野由悠季さん、宮崎駿さん、高畑勲さん、押井守さん、庵野秀明さん、鈴木敏夫さんたちを集めて、どんな話が聞けるのか。あるいは、誰が最初に退室するのか(笑)。絶対に面白そうでしょう? 誰か、「アニメ100周年」にこじつけて、やってくれないかな……と思ってます。
(取材日2016年8月30日)
(取材・文/廣田恵介)