プラモデルは、どこまでお手軽なホビーにできるのか? くまモンから軍艦島まで幅広く手がけるフジミ模型さんに聞いてみた!【ホビー業界インサイド第37回】

2018年07月28日 12:00

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塗装いらず接着いらずの「艦NEXT」シリーズの恩恵


── 色分け済み・スナップフィット仕様のお手軽な艦船模型として、「艦NEXT」というシリーズが出ていますね。初期の頃に比べると、かなり品質が向上していますね。

井上 確かに、初期の「大和」を出してから何作かは、パーツの嵌め合わせや組み立て説明図ともに試行錯誤が続いていました。シリーズNo.6の「比叡」やNo.7の「金剛」あたりから、問題点が改善されてきているはずです。シールを貼りやすくしているだけでなく、活躍した時期によって異なるマーキングを再現できるよう、多様性を持たせています。組み立て説明図には、実際の武装の名前を細かく入れて、モチベーションがアップするよう努めています。だけど、艦NEXTは一般の方にも買っていただきたいシリーズなので、あまりにも実存した艦艇の解説がくどくなりすぎないよう、気をつけています。

── 塗装も接着も不要な艦NEXTシリーズですが、ひょっとして「艦これ」の影響から生まれたシリーズなのでしょうか?

井上 いえ、艦NEXTを企画した頃は「艦これ」は流行っていなくて、誰にでも組み立てやすい艦船プラモデルをシリーズ化したい、という単純な動機から始まりました。もともと弊社は、「特シリーズ」という精密な艦船プラモを展開していました。よくも悪くも重たい模型で、最後まで組み立てられずに脱落する方も多いんです。特シリーズのみだと、リピーターはわずかで、艦船プラモそのものが先細りになってしまう。現在は、ユーザーの方が1個のプラモデルの組み立てにかけられる時間は短いでしょうし、塗装できる環境の問題もあります。

── 戦車プラモだと、連結式のキャタピラだけ延々と組み立てて1日が終わってしまった、という場合もありますね。

井上 そう、モチベーションを保つためには着手しやすくて、すぐに形になるプラモデルが必要なわけです。パパッと組み上げて、気に入らないところがあれば、後から手を加えればいい。特に艦船プラモは、工数が多いですよね。短い時間で完成できるお手軽な艦船プラモが必要じゃないかと思っていた矢先に「艦これ」がブレイクして、艦NEXTが注目されるようになり、リピーターが増えています。「ひとつ完成したので、次は何を作ろうか」と画像をアップしている方がいらして、とてもうれしいです。


── 素組みでも必ず完成できて満足感があるって、とても重要なことですね。

井上 かつての艦船プラモは「買った、積んだ、次どうしよう?」「次もまた積むのか?」という循環に陥ってしまいがちでした。だけど、艦NEXTシリーズを組み立てた方は「次はスミ入れしてみよう」「ちょっとだけ塗装してみよう」と、余裕を持って楽しんでくださっている。現在のプラモデルユーザーの制作事情に、うまく寄り添うことができたんでしょうね。

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