プラモデルは、どこまでお手軽なホビーにできるのか? くまモンから軍艦島まで幅広く手がけるフジミ模型さんに聞いてみた!【ホビー業界インサイド第37回】

2018年07月28日 12:00

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ひとつのキットで、ライト、ミドル、ハイエンド層までカバー


── 最近の変り種では、1/200スケールの「戦艦大和 九四式46センチ3連装主砲塔」がありますね。なんと、砲塔だけのプラモデルです。これもスナップフィットで、塗装せずとも楽しく組み立てられますね。

井上 このシリーズは「集める装備品」シリーズといって、まず大和の主砲を出しましたので、次は大和の艦橋を開発中です。大和、大和と続いてきましたけど、次は別の艦の艦橋をキット化するかもしれません。もしかすると、自衛隊の護衛艦の主砲を出すかもしれない。……というのは、各キット単位ではスケール表記がありますが、シリーズで特に「○分の1」と統一しているわけではないのです。「集める」シリーズなので、「集める」のに適した、食いつきやすいサイズとアイテムを目指しているんです。また、発売中の大和の砲塔を精密にディテールアップするためのエッチングパーツも企画しています。

── つまり、上級者向けにアップデートもできるし、キットのまま色を塗らずに組んでもいいわけですね?

井上 そうです。キットの設計や仕様のコンセプトを真ん中に設定して、後から上級者向けとライトユーザー向け、双方に対応できるよう気をつけています。上のほうを狙ってしまうと、ライト層が入りづらくなってしまうからです。別の例をあげますと、やはり塗装不要のスナップフィットで「1/24 車NEXT」シリーズとして、「スズキ ハスラー」を3色発売していますが、1色のキットをのぞいては、シールしか入っていません。

── デカールを貼るのが苦手な人のためですね。

井上 ええ、カラフルな成形色の上からシールだけ貼れば完成します。だけど、ピュアホワイトパール(白)だけはシールとデカールの両方が入っているんです。というのは、車を塗装したい人なら、必ず白い成形色を選びますよね? 好きな色で塗装した面に貼れるよう、デカールも付けたわけです。もちろんシールも付いているので、塗らずにシールで仕上げてもらってもいい。ひとつのキットでライト、ミドル、ハイエンドまで広げられるように考えています。

── 新しいラインとしては、1/72 ミリタリーシリーズ「陸上自衛隊 87式自走高射機関砲」が発表されましたね。1/35スケール並みに再現度がすごいという……。

井上 6年間、この車両を追い続けた成果が、随所に出ています。車体の底部に操縦手の脱出口もありますし、完成後に見えなくなるハッチの裏側まで彫刻してあります。組み立てた人だけが満足できる濃いディテールが、あちこちに彫りこまれています。


── かと思うと、カブトムシのようなシンプルなプラモデルも出すところが面白いです。

井上 創業70年も経っていますから、設計のコンセプトとか思想、商品に対する考え方も大きく変わっています。ユーザーをとりまく制作環境も変わっていますから、今のフジミ模型は「新しいことにどんどんチャレンジしていこう」という活気に満ちています。いちばん機動力が必要な時期に、フットワークの軽い人材が揃っていますから、今がチャンスだと思っています。



(取材・文/廣田恵介)

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