アニメ業界ウォッチング第18回:「オープニング・アニメの鬼才」としての苦心とよろこびとは? 梅津泰臣監督インタビュー!

2016年02月13日 11:000

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曲を聴いているうちに、体が動き出した


──実際に踊ってくれるモデルがいるんですか?

梅津 「Dimension W」の場合は、こちらのイメージを伝えて、大学生に踊ってもらってるんです。彼のアイデアも入れながら踊ってもらったものをビデオに撮って、その映像を参考に作画しています。キョーマというオッサン主人公のダンスなので、大学生のキレッキレのダンスそのままでは若さが出てしまう。だから、作画の段階で「気だるく誰かにお願いされて踊らされている感」に微調整しています。

──そもそも、なぜキョーマを踊らせようと思ったのですか?

梅津 主題歌を何度もリピートして聴いていたら、間奏の部分で、体が踊りだしたんです(笑)。「ああ、俺が自然に踊りだすぐらいだから、そこにキョーマのキャラクター性を加味すれば成立するな」と、思ったんです。OP・EDは、特に楽曲に左右されるので、感覚的に作品とフィットする曲だとのれますね。


──逆に、イメージが浮かばないときは、どうするのですか?

梅津 片っぱしから、映像や雑誌を見ます。また、自分の半径数メートルのところにある資料だけではネタが尽きてしまうので、毎回、いろいろな場所からヒントを探します。OPアニメは作品エッセンスの凝縮なので、自分自身のインスピレーションと実験性を試したい。常に、新しいことをやりたいんです。だけど、放送局によって、「スタッフクレジットは4秒以上」「メインタイトルは6秒以上、映すこと」などの決まりごとがあるので、その制約も考慮しないといけません。「幸腹グラフィティ」のOPで、スタッフクレジットの文字をフライパンで料理してるでしょ? 本来はNGなんですけど、後半、ピタッと止まるからOKをもらえました。局ごとに、制約が違うんですよ。


肉体は衰えても、精神は研ぎ澄まされる


──なぜ、こんなに沢山、OPの仕事が入るんでしょうか?

梅津 自分にはわからないですよ。僕に依頼してくれたスタッフたちに、聞いてください(笑)。だけど、「幸腹グラフィティ」はアニメ化が決定したとき、原作者の川井マコトさんが“「それ町」のOPをやった方にお願いしたい”と希望してくれたそうです。プロデューサーや監督、制作からの依頼が多いですね。

初めから、「これ、梅津の演出したOPじゃない?」と視聴者に言い当てられるのは、くやしいです。「これも梅津の仕事だったのか!」と、後から驚いてもらえるとうれしいし、それが理想的ですね。

これだけ毎クール、OPアニメを担当していると、才能のある新しいスタッフとの出会いもあります。そういうすぐれた人材は、所属スタジオに迷惑をかけない範囲で、次の自分の監督作に参加してほしいなと思っています。OP・EDは短い尺だから僕のクオリティ・バランスが行きとどくけど、テレビシリーズは今後、そこが課題ですね。あるプロデューサーからは映画向きだと言われましたが、僕も、映画はぜひ取り組みたいと思っています。

──この業界は、50代になっても、60代になっても最前線で働き続けている方たちが多くて、素晴らしいですね。

梅津 肉体は年齢とともに衰えるけど、精神はむしろ研ぎ澄まされると、僕は思っています。演出にしても、人生経験を積んだほうが表現は豊かになる。もちろん人にもよりますが、アニメ業界は、もっとオジサン監督を大事にしたほうがいい(笑)。

僕が20代のころ、「野心をもった若い才能はつぶせ」というベテランがいっぱいいました。自分がベテランになっても、そういうイヤな大人にはなるまいと思いましたね。もし若手に脅威を感じたとしても、彼らをつぶすような人間にはなるまい。そうならないためにも、力量や感性をさらに高めよう……そう思いながら、ずっと仕事してきました。

かつて制作進行だった人がプロデューサーになって、「梅津さん、一緒に仕事をしましょう」と電話をくれることがあります。うれしいものですよ、「若いころから梅津さんのファンだったから、ぜひお願いしたい」と、純粋な気持ちで言ってもらえると。


(取材・文/廣田恵介)


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